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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
417/530

愛しき我が子へ その②

愛しき母へ


死んでください

2


(なるほどな.......)


鬼丸は一人で頷いた。


頭の中に声が響いてくる。


凛とした、よく通る女の声。さしずめ、城之内カレンにとり憑いている悪魔のもの。


「私の娘に、危害を加えないで」



その声が聞こえた瞬間、壁に磔にされている城之内カレンの身体に異変が起こった。


目をカッと見開く。


白目の部分が赤く染まり、目じりから血の涙が流れ落ちた。


パキパキと、骨が軋むような音が響いた。


(何をしている.......?)


「「出ておいで.......」」


城之内カレンと、悪魔の声が重なって聞こえた。


その瞬間、城之内カレンの周りに茨が出現して、彼女の手首の拘束を切断した。


自由の身になる城之内カレン。


地面にふわりと降り立つと、歯を見せてにいっと笑った。


「【闇に鎖されし鬼の逆襲】.......」


指を鳴らすと、虚空から茨が出現した。今までのものよりも形をはっきりと保ち、漆黒の色をしている。


(形がはっきりとして、色が濃くなった.......!?)


鬼丸は警戒して足を半歩下げた。


(恐らく、威力が上がっているはずだ)


城之内カレンは目を真っ赤に充血させたまま鬼丸を見据えると、拘束具で青くなった右腕で手刀を作り出した。


手刀を、数十メートル離れた鬼丸に向かって振る。


彼女の手と連動して、宙に出現した黒茨が蛇のようにうねって、鬼丸に襲いかかった。


「ふっ!」


鬼丸は斬撃を放って迎え撃つ。


しかし、刀から放たれた飛ぶ刃は、黒茨によって吹き飛ばされてしまった。


「やはり、威力が上がっているのか!!」


鬼丸はその場から飛び退く。


彼が立っていた場所に、黒茨が叩きつけられて、床を粉砕した。


「あは、あばばばば.......」


城之内カレンは口を半開きにし、口の端からだらしなくヨダレを垂らしながら笑った。


「あは.......!!」


城之内カレンの頬が赤く染まる。


鬼丸は、戦場の空気が、さらに一転したことに気づいた。


だが、時すでに遅し。


次の瞬間、鬼丸の足元から茨が飛び出して、彼を天井へと押し上げた。


鬼丸は足元に向かって斬撃を放つと、茨を根元から真っ二つに斬り裂いた。


(やはり、この女.......、強いが、大したことは無い!!)



「本当にそうでしょうか?」


鬼丸の心を読んだ、城之内カレンの悪魔が嘲るように言った。


「愚かな子供たち。あなたは、十年前の黙示録の獣の力の欠片を頂いただけだと言うのに!!」


(っ!!)


鬼丸は目を見開き、頭の中に響いてきた悪魔の声に意識を向けた。


(こいつ、知っているのか?)


「知っているもなにも、私も、悪魔の一人ですからね」


ギラりと光る、城之内カレンの瞳。


鬼丸の意識が逸れた瞬間、城之内カレン、いや、彼女にとり憑いている悪魔は能力を発動させた。


「っ!?」


四方八方から、黒茨が飛び出して、鬼丸に迫る。


(小賢しい!!!)


鬼丸は身を反転させて、広域に斬撃を放ち、それらを吹き飛ばした。


(なんだ.......、この女は.......!?)


床を踏みしめる鬼丸。


分からない。


分からないのだ。


城之内カレンに取り憑いている悪魔は、【中級】。つまり、大して強くはない。ということだ。


実際、強くはない。


不意に茨を出されたら厄介だが、研鑽を詰んだ鬼丸なら、今まで通り斬り落とせる。


だが、鬼丸は指先に痺れるような違和感を抱いていた。


この悪魔、いや、女。


(底が見えない!!)


「ふふ、いいでしょ?」


またもや鬼丸の心を読む悪魔。


指先から、極細に絞った茨を発射させ、新体操のリボンのように操った。


(普通の攻撃.......?)


迫る茨。


とりあえず、刀で斬り落とす。


(殺気が無い.......、陽動が?)


「本当にそう思いますか?」


城之内カレンの身体を操った悪魔は、指を鳴らした。


その瞬間、切り落とした茨が蠢き、鬼丸の身体に巻きつく。


「っ!!」


身動きを封じられる鬼丸。


「こんなもの.......」


腕に力を込めて、無理やり茨を引きちぎった。


「おそるるに足らん.......」


静かに城之内カレンとの間合いを詰めて、刀を振った。


だが、城之内カレンは後方にふわりと飛んで、それを躱す。


目は相変わらず真っ赤に染まり、口はニタニタと笑っている。


「そろそろですねぇ!!」


突如、頭に響いていた悪魔の声が上擦った。


その悪意のある声に、鬼丸は言い知れぬ不安を抱いた。


(こいつ、やはり、何かを企んでいるな.......)


次の瞬間、鬼丸の右後ろの死角から茨が飛んできた。


当然、気配を読んで躱す。


(何をする気.......)


「ただの時間稼ぎです」


城之内カレンはニヤッと笑った。


それからまた、鬼丸の頭に悪魔の声が響く。











「確かにあなたは強い。私は弱い。ですが、頭なら私の方が上だったようですね」



















その③に続く




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