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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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茨の道 その②

有刺鉄線を抜けた先


唐松峠の帆を引いて


命あるもの通しゃせん


雨水迎えて君を討つ

2


突然、背後に現れた鬼丸。


振り返った響也は、その色濃い気配に、全身を硬直させた。


「お、鬼丸.......!」


「久しぶりだな。確か、鈴白響也とか言ったな?」


「っ!!」


動かないと。


響也はふくらはぎに鞭を打つと、鬼丸から距離を取ろうとした。


だが、鬼丸が叫ぶ。


「動くな!!」


その言葉に圧倒され、響也は動くことが出来なかった。


「て、てめぇ.......!!」


「動いたら、死ぬぞ?」


その時、響也の頬に何かが当たった。


チクッとした感触。


(これは.......!?)


先程、響也のふくらはぎと背中を裂いたものと同じ感覚。


ゆっくりと黒目を動かして見た。


そこには、半透明の【蔦】があった。


幅は三センチほど。表面に、鋭利な棘が無数に生えている。


「これは!!」


「お前も気がついたか」


冷静になって辺りを見渡せば、地下通路には、この薔薇の蔦が無数に張り巡らされていた。


さながら、スパイ映画でよく見る、センサーのトラップのように。


鬼丸は静かに言った。


「この蔦は、触れたものを切り裂く能力がある。無闇に動けば、身体を細切れにされるぞ?」


「へえ、親切じゃないか。これ、あんたの能力か?」


「違う」


鬼丸ははっきりと否定した。


「これは、貴様の仲間の能力だ」


「え.......」


それを聞いた瞬間、響也の視界が暗転した。


それから、数回闇の中で白い火花が弾け、再び元の薄暗い地下通路の光景に戻る。


「お前、いま、なんて?」


「貴様の仲間の能力だと言っている」


鬼丸は腰に差した刀に手をかけた。


ヒュンヒュンッ!!


と、刃が空を裂く音が響く。


響也の目すら捉えることが出来ない神速の斬撃。


頬がチリッと、痛み、血が流れた。


(こいつ、何を斬った.......!?)


次の瞬間、響也や鬼丸を取り囲んでいた蔦が細切れになり、パラパラと地面に落ちた。


そして、空気に溶け込むようにして消滅する。


「見てみろ。この【蔦】.......、いや、【茨】は、、斬撃を加えれば切断することができる」


「それを私に教えて、どうしろって?」


「単純な話」


鬼丸は着物を翻して、響也に背を向けた。












「化け物が目覚めるぞ?」












その瞬間、足元から突き上げるような衝撃が

響也を襲った。


「っ!?」


ガクッ!!


と、身体が揺れ、バランスを崩して、片膝をつく。


「な、なんだ!?」


「あとは任せた」


鬼丸は響也にそう言い残すと、一瞬で跳躍して、地下通路から飛び出していった。


「あいつ!!」


鬼丸が何をしようとしたのか、響也は今理解した。


「私を囮につかいやがった!!」


地下通路のタイルに、ピキピキと亀裂が入る。


自分の存在を根幹から揺るがすような、とてつもないものが這い出て来ようとしていることに気づいた響也は、鬼丸の後に続いて逃亡しようとした。


しかし、地面を蹴った瞬間、何かが足に絡みつく。


「くっ!!」


やはり、半透明の茨が巻きついていた。


グッと引っ張られ、硬いタイルの上に叩きつけられた。


「があっ!!」


鬼丸の言っていたことを思い出し、直ぐにDeath Scytheで茨を切断する。


「くそ、なんだよ.......、何が起こっているんだよ.......!!」


揺れは収まらない。


一層強くなり、地下通路全体を狂乱に突き落とす。


まともに立っていられず、響也はその場に尻もちをついた。


ついに、地下通路の中央から土煙が上がって、何かが飛び出した。


「UMAか!?」


身構える響也。


しかし、飛んできたのは、血まみれの夜行だった。


ベチャッ!!


と、夜行の上半身が響也の足元に落ちる。


「こいつは、夜行.......!!」


肉片。と言っても差し支えが無いくらいに損傷している。腰から下はぐちゃぐちゃに潰れ、両腕は肩から綺麗に切断されていた。


その状況下でも、夜行はぐりんと目をひん剥いて叫んだ。


「だあ!! ちくしょう!! あのバカ鬼丸!!」


響也はすかさずDeath Scytheを一閃して、夜行の首を切り落とした。


ゴトッ!!


と、夜行の生首が転がる。


「てめ、何しやがる」


「お前、夜行だな? 何が起こっているんだ?」


「ああん!? UMAハンターに教えるわけねぇだろうが!!」


「いいから教えろ!!」


思い切り、夜行の生首を蹴り飛ばす響也。


夜行はサッカーボールのように飛んで行った。


そして、通路中央にぽっかりと空いた穴に近づいた瞬間、空間から無数の【茨】が飛び出し、彼の頭を容赦なく串刺しにした。


ミンチのように飛び散る夜行。


「っ!!」


だが、この程度では夜行は死なない。


傍らに落ちていた夜行の死体の肉が蠢き、背中辺りから新しい顔が生えた。


「分かっただろ? あいつは、てめぇの仲間だ」


「仲間、だと?」


「今に分かる」


土煙がもくもくと立ち込める穴の中から、誰かが這い上がってくる。


「っ!! カレン.......!!」
















それは、薄汚れたカレンの姿だった。












その③に続く


補足


悪魔の堕慧児たちは、地下に空間を作って、計画を進めていたようです。ですが、思いがけない自体が起こったので、鬼丸が上手く立ち回りを始めました。

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