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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
408/530

霧払い その②

逆さまの


鷹の目に聞く


破れ神


金色削いで


闇に溶け込む



2


(どこだ.......!? どこにいるんだ.......!?)


城之内花蓮を抱えた市原架陰は、四方八方に目を向けながら、街の中を疾走していた。


人気の無い路地に、市原架陰が地面を蹴る音と息遣いだけが響く。


「カレンさん.......、どこにいるんだ.......!?」


「あの、架陰様.......」


鬼のような形相の架陰を心配して、城之内花蓮が声をかけた。


「あの、先程から、誰を探しているのですか?」


「あ、ああ、はい、実は、仲間と合流したくて.......」


架陰の頭の中で、何かが枷になった。


言うべきなのか?


前回のハンターフェスで、市原架陰は、薔薇班の【城之内花蓮】に出会い、求婚された。


求婚されたことは置いておいて、彼女の名前が、【桜班・副班長・城之内カレン】と同じだったということだ。


しかも、両者「城之内家の次期当主」と言うではないか。











(カレンさんと、花蓮さん、どう関係があるんだ.......!?)










それに、それを追求しようとした時の、西原の顔。まるで、「言わないでください」と言っているようだった。


(ここは、とりあえず黙っておくか.......)


架陰はそう判断すると、首を軽く横に振った。


「敵の能力で、分断されてしまったんです。とにかく、桜班の仲間と合流します.......。そして、悪魔の堕慧児を討ちましょう!!」


「はい!! そうですね!!」


何も知らないであろう城之内花蓮は、頬を赤らめて、力強く頷いた。


「私!! 幸せです!! 架陰様と一緒に任務にあたれるなんて!!」


「はい。頑張りましょう!」


花蓮との話はそこまでにして、架陰はカレン居場所を探すのに徹した。


(どこだ、どこにいるんだ!?)


すると、市原架陰の耳元で、しわがれた声が囁いた。










(オイ、架陰.......)











この、地獄の底から響くような声。


(悪魔.......!?)


(ワシノ話ヲ聞ケ)


(どうしたんだよ.......!? いきなり.......)


悪魔がこうやって、精神世界から話しかけて来るのは珍しかった。


(ジョセフさんは? ジョセフさんはいないの?)


(もちろんいるさ)


ちゃんとジョセフの声がして、架陰はほっとした。


(それで、悪魔。僕に何の用だ? 今、忙しいんだよ)


(ソノコトニツイテダ.......)


(カレンさんについて?)


(アア、段々ワカッテキタ、奴ラノ目的ガナ.......)


(やあ、架陰。そのことについては、僕が代わりに説明するよ)


またしても、悪魔の声に被せるようにして、ジョセフが語りかけた。


悪魔のムッとした「コノ餓鬼.......」と言う声が聞こえる。どうやら、自分で話したかったようだ。


(それで、ジョセフさん、悪魔の堕慧児の目的って、なんですか?)


(前にも言ったように、悪魔の堕慧児の目的は、【悪魔の強奪】。つまり、君の身体から、この悪魔を奪って取り込むことだよ)


(はい。その話は、前にも聞きました.......)


架陰が心の中で頷くと、悪魔が舌打ちした。


(ワシトシテハ、奴ラニ渡ッタ方ガ好都合ダガ.......)


(悪魔。君は黙っててくれ。それに、君の声だと、架陰が聞にくいだろ?)


(殺スゾ?)


悪魔が殺気立つのは放っておいて、ジョセフは話を続けた。


(実は、城之内カレンが彼らに連れ去られた日.......、悪魔が、【別の悪魔】の気配を感じ取ったらしいんだ)


「えっ!?」


思わず声にもれる架陰。


花蓮が「どうしました?」と聞くので、適当に誤魔化した。


「いえ、なんでも」


それから、精神の中の会話を続ける。


(悪魔の気配ですか?)


(うん)


(それって、四天王のスフィンクスグリドールみたいな?)


(そうだね。だけど、気配が彼よりも濃かった。と、悪魔は言っているんだ)


(そうなの? 悪魔?)


(アァ、ソウダ)


悪魔の確認をとってから、ジョセフは続けた。


(つまり、スフィンクスグリドールの下級悪魔よりも強い.......、中級悪魔の気配がしたってことなんだよ)


(それが、カレンさんと、悪魔の堕慧児に関係があるんですか?)


(大ありだ。悪魔の堕慧児に悪魔が宿ることは無い。つまり、消去法で言えば、あの場にいた者の中で悪魔を宿すことができるのは、【城之内カレン】ということ)


「カレンさんがっ!?」


またしても声に出た。


またしても、城之内カレンと同じ名前の花蓮が反応する。


「私がどうかしましたか? 架陰さま?」


「いや、なんでもないです」


架陰のとじに、ジョセフは微笑みながら話を続けた。











(いいかい? 架陰。つまり、悪魔の堕慧児の目的は、城之内カレンから悪魔を奪い、彼らが【王】と称えている男の力を強化することだ。そして、僕の加護を打ち破り、強引に架陰の悪魔を奪おうとしているんだよ)


ジョセフの言葉に続けて、悪魔が言った。


(ツマリ、貴様ノヤルベキコトハ、城之内カレンノ悪魔ガ、奴ラノ手ニ渡ル前ニ、奴ラカラ城之内カレンヲ取リ返スコトダナ)











その③に続く









補足


市原架陰の精神には、悪魔とジョセフの二人が住み着いています。

十年前、悪魔は、FBI捜査官だったジョセフに取り憑き、彼を暴走させて反乱を起こしました。ですが、それをアクアや味斗、本作には未登場の光、風鬼が阻止しました。

ジョセフ、悪魔は共に死亡。ですが、悪魔は往生際が悪く、世界中に【DVLウイルス】を蔓延させます。これが、悪魔の堕慧児を生み出すきっかけとなりました。

さらに、悪魔は、当時七歳だった架陰に取り憑きます。今度は架陰の身体を操って暴走させようとしたのですね。ですが、悪魔の魂にくっついて、ジョセフの魂までやってきてしまいました。ジョセフの加護が強いため、悪魔は力を制限されています。同時に、外部からの精神への接触も緩和することができています。

悪魔の堕慧児たちは、このジョセフの加護をどうにかして打ち破ろうとしているのですね。

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