表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
UMAハンターKAIN  作者: バーニー
404/530

【第120話】 肉片となるまで その①

猿を射止めて


三千里


八尺四寸


哪吒の果て

1


「即刻に取り返すわ!!」


言った傍から、クロナは、真子を人質にとっている夜行に向かって走り始めた。


「馬鹿が!!」


夜行は無鉄砲に突っ込んでくるクロナに辟易した。


動いたら殺す。


動いたのだから、殺せばいい。


夜行は爪を真子の首筋にくい込ませる。


チクッとした痛みに、真子は身体を震わせた。


「クロナ姐さん!!」


「真子ちゃん! 動いちゃダメよ!!」


そう言うと、着物の懐に手を入れるクロナ。


「っ!!」


何かを取り出すつもりだ。


夜行は一瞬でそう判断すると、地面を蹴って、真子共に後退した。


クロナは何かを握っていた手を止めて舌打ちをする。


(勘づかれた!!)


(あのアマ、何するつもりだ.......!?)


夜行とて馬鹿ではない。


「動くな」と言って人質をとっているのに、向かってくるということは、それなりに、「真子を取り返す自信」がある。ということだ。


「なんにせよ、お前の好きにはさせねぇよ!!」


夜行は息を大きく吸い込んだ。


大量の空気が肺に流れ込み、彼の胸元が大きく膨らむ。


「あれは!!」


あの予備動作。


市原架陰の報告にあったものだ。


「みんな!! 耳を塞いで!!」


「もうおせぇ!!」


夜行は声帯を震わせて叫んだ。











「止まれぇっっっっ!!!!」










キイッ!!!!


と、クロナの頭の中に金切り声が響く。


途端に、身体中が硬直した。


(動けない!!)


それは、鉄平や八坂も同じだった。


これが、夜行の能力【呪】。


声を使って、相手に直接語りかけることで、相手を意のままに動かす、いわば催眠術のような力。


市原架陰も、前回この能力に苦戦して、心臓を握りつぶされたのだ。


「イヒヒヒヒヒ!!!」


夜行は真子の首に爪を立てたまま、動けないでいるクロナに歩み寄る。


「お前が先に死ぬか?」


留守の左腕を振り上げる。


クロナは心の中で、ひたすらに「落ち着け」と連呼した。


夜行の【呪】の言葉を聞けば、確かにその通りになってしまう。


だが、この能力は無敵では無い。


もしも能力に掛かってしまったら、自らの言葉で自身に言い聞かせるのだ。












(動け.......、動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け)











所詮、この能力は催眠術のようなもの。


ならば、こうやって自己暗示を掛けてしまえばいい。


(この能力の対処法は、【鼓膜を潰す】か、【自己暗示】をするかの二つ!!)


次の瞬間、クロナの身体がバチッと、動いた。


咄嗟にその場から飛び退いて、夜行の手刀をギリギリのところで回避する。


「八坂くん!! 鉄平くん!! 能力に掛かったら、直ぐに心の中で『動け』って連呼しなさい!!」


二人に対処法を教えたクロナは、懐から手を抜いた。


その手に握られていたものは、白いプラスチックの玉。


「っ!!」


「真子ちゃん!! 目を閉じて!!」


クロナは、夜行に向かってそれを投げつけた。


「閃光弾か!!」


夜行は左手で飛んできた玉を払い除ける。


感触が、軽い。


「こいつは、ただの!!」


「ピンポン玉よ!!」


隙を見せた夜行に、クロナが近寄る。


腰の刀を素早く抜いて、その黒い切っ先を、夜行の脳天に突き刺した。


頭蓋を砕き、刀が夜行の頭に侵入する。


「がっ!?」


夜行の身体から力が抜けた。


真子がするりと、夜行の拘束から逃れる。


「やっぱり!! 再生能力が高くても、脳天は弱点みたいね!!」


「てめぇ!!」


夜行はクロナに鉄拳を食らわせようとしたが、ます、腕が上がらなかった。


(まずい!! 脳幹を貫かれた.......!! 動きが鈍る!!)


「しばらくそこで酔っ払ってな!!」


クロナは刀を抜いた。


夜行の額の傷から、血が大量に吹き出す。


「おりゃあっ!!」


上体を捻って、もう一撃。


夜行の右肩から左脇腹に掛けて赤い線が走り、彼の身体は両断されてしまった。


真っ二つになった身体が、ドサッと倒れ込む。


「真子ちゃん!! 今のうちに!!」


「はいッス!!」


真子とクロナはお互いに手を取り合って走り始めた。


鉄平、八坂も既に夜行の能力を解除して、動けるようになっていた。


再び、逃走を開始する四人。


四人が走り去ったあと、夜行は静かに再生した。


両断された肉同士が固着し合い、脳天に空いた穴が塞がる。


「イヒヒヒヒヒ、イヒヒヒヒヒ.......」


傷が完全に治癒する。


夜行はゆっくりと上体を起こした。


「あいつが、笹倉らが言っていた【雨宮クロナ】か.......。市原架陰を捕まえてぶっ殺そうと思っていたが.......、先にあいつを殺してやるのもいいな.......」














その②に続く












補足


夜行の能力【呪】は、簡単に言えば催眠術です。なので、高い精神力があれば解除出来ますし、そもそも彼の声を聞かなければ問題ありません。市原架陰は、鼓膜を潰すことでこれを攻略しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ