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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
402/530

夜行再び その②

秋晴れの


梅雨に見し聞く


鱗雲


晴天泳ぎて


何にかわせむ

2


ビシッと、地面に亀裂が入った。


「っ!?」


足元から突き上げて来るような感覚に寒気を覚えたクロナは、咄嗟にその場から飛び退く。


次の瞬間、地面が割れ、土やアスファルト、蜻蛉の肉塊を巻き上げながら何者かが飛び出した。


「っ!?」


男。


身体中ツギハギだらけで、褐色の肌。ボサボサ髪の毛は目を隠すように長く伸び、纏っていた麻布が土に汚れていた。


「ひゃはっ!!」


ギョロッと、混濁した瞳がクロナ達を見る。


「こいつは!!」


クロナの背筋に冷たいものが走った。


身構えるよりも先に、飛び出してきた男の腕が伸び、クロナを突き飛ばした。


「きゃあっ!!」


「クロナ姐さん!!」


鉄平、真子、八坂が、クロナの飛ばされた方を振り向く。


クロナはビルの壁に叩きつけられたものの、上手く受身をとって衝撃を緩和していた。


「大丈夫か!! 姐さん!!」


「うん、大丈夫.......」


ヨタヨタと立ち上がるクロナ。


額を切ったようで、頬から血が上っているつうっと垂れた。


クロナを突き飛ばしたツギハギ男は、肩を痙攣するかのように震わせ、「イヒヒヒヒヒヒヒヒ」と笑った。


その、血を滑るような声は、一同を恐怖させる。


真子が恐る恐る口を開いた。


「あの、こいつって、架陰くんの報告にあった.......」


「そのようだな.......」


鉄平もしっとりとした汗をかきながら頷く。










「【夜行】だ.......」











夜行。


それは、前回の【市原架陰奪還作戦】の時に、悪魔の堕慧児側についていた人間のことだ。


と言っても、もう既に死んでおり、身体が動くのは、彼の特性【不死(高再生能力)】によるもの。


身体中をツギハギされ、人体実験に使われ、人間の心すら失った化け物だった。


「架陰は『肉片になるくらいの一撃を叩き込んだ』って言ってたけど.......、倒せていなかったみたいね.......」


夜行は相変わらず「イヒヒヒヒヒ」と笑いながら、辺りを見渡した。


そして、不服そうに言った。


「おいおい、市原架陰はどこにいるんだよ」


「.......」


言語能力がある。やはり、市原架陰の報告にあった【夜行】と見て間違いない。


「答えろよ。今のUMAハンターは、会話もろくにできねぇのか?」


夜行は元は【UMAハンター】だ。


それが、十年前に謀反を起こし、当時現役だったアクアや、味斗らによって討伐された。


その死体にはまだ【不死】の能力が残っていたために、SANAの研究機関に保管され、【回復薬】の開発に利用されていたが、つい最近、施設から略奪。


そして、悪魔の堕慧児らの手に渡った。



(厄介なやつに絡まれたわね.......)


夜行の戦闘能力の高さは、架陰からの報告でクロナも理解していた。


UMAハンターであったときの名残か、身体能力は軍を抜き、特性【不死】による高い再生能力。さらには、本来の能力【呪】まで装備している。


まさに、化け物と言っていい存在だ。


架陰も、一度やつに心臓を握りつぶされ、腸を掻き出されていた。


「ここは、引くのが安定ね」


クロナは刀を抜くと、柄を強く握りしめた。


トグンッ!!


と、刃が脈を打つ。


「明鳥黒破斬!!!」


刀を振り下ろすと、刃から無数の羽がが射出された。


夜行はその攻撃を避けることが出来ない。


大量の羽が夜行を穿つ。


パンッ!!!


と、夜行は大量の肉片となって消し飛んだ。


「やった!!」


真子が嬉しそうに跳ねた。


「さすがクロナ姐さんッス!!」


そんな声も聞かぬうちに、クロナ、鉄平、八坂は踵を返して、脱兎のごとく走り出した。


「えっ!?」


真子は慌てて三人の後を追う。


「どうしたッスか? 敵ならもう!!」


「あれだけで死ねるなら可愛いほうよ!!」


クロナは身体中に冷や汗をかきながら、後ろを振り返る。


やはり。


と言うべきか。


肉片となって消し飛んだ夜行だったが、直ぐにそれらが集まり、再生を開始していた。


(化け物でしょ.......!!)


ものの数秒で、夜行の身体は元に戻っていた。唯一戻せなかったのは、衣服だけ。


素っ裸になった夜行は、地面を蹴って一気に走り始める。


「追ってきた!!」


「どうするんだよ!!」


「あいつは化け物よ!? 倒せるかもしれないけど、こっち側の戦闘員も、二、三人は死ぬ覚悟ないとダメだわ!!」


「だったら! 足止めするッス!!」


しんがりを努めていた真子がそういうと、振り返ると同時に、弓矢を構えた。











「【爆炎火矢】!!」











炎を纏った矢を射出する真子。


炎の鏃は空気を裂きながら夜行に迫り、彼の腹を貫通した。


「やった!! 命中!!」


だが、夜行は止まらない。


腹に穴を開けたまま、迫ってくる。


「止まらないッス!!」


「真子!!」


八坂もまた振り返ると、赤スーツの内側に仕込んでいた何かを空中に放り投げた。


夜行目掛けて、空中を漂うそれ。


八坂は腰のホルダーからリボルバー式拳銃を抜くと、それを撃ち抜いた。


八坂が撃ち抜いたもの。


それは、アルコール度数の高い酒だった。


琥珀色の液体が夜行の裸体に降りかかる。


真子はもう一度矢を引き絞り、射出した。











「燃えろ!!!」











その③に続く










補足


前回の【市原架陰奪還作戦】にて、夜行と交戦したのは市原架陰のみです。よって、クロナ達には夜行の特性や戦法しか伝わっていません。

夜行は強いものの、他の悪魔の堕慧児やUMAハンターよりも少し上くらいです。ですが、化け物。と言わしめる程の実力は、能力【呪】と、特性【不死】によるものでしょう。

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