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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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第17話 黒い斬撃 その①

全ては黒に帰す

1


「能力・・・【魔影】発動!!」


架陰がそう叫んだ瞬間、架陰の血が変化し、漆黒のオーラとなって彼の周りを取り囲んだ。


その光景を見ていたクロナとカレンが息を呑む。


「っ!!」「あれはぁ・・・」


能力者。


それは、UMAと同様に特殊能力を持った人間のことだ。その素質がある者は、1000人に1人。さらに、それを体現化できるのが、1000人に1人。


しかし、クロナ、カレン。響也もアクアから言われたことを覚えていた。


「DVLウイルスの影響で、能力者は、もう生まれていないんじゃ・・・?」


10年前のあの事件から、能力者は、生まれていないんのだ。


架陰の耳に、あの男が語りかける。


(架陰。集中しろ。能力は全てイメージだ)


架陰は落ち着いたまま、架陰を取り囲むようにして浮いている血液、いや、もはや血ではない何かに変化した黒いオーラに意識を集中させた。


(この、【魔影】という物質は、君のイメージで自由自在に動かすことが出来る)


架陰はさらに集中する。


すると、男が魔影と呼ぶ物質が蠢きながら、架陰の胸の前に集結した。


(イメージが強ければ強いほど、魔影は硬質化して、君の刃となり、盾となる)


架陰は、塊状の雲となった魔影に、自らの刀を突き立てた。


(まだ君のイメージが弱いからね。ここは一つ初心者のやり方で行こう)


ズブズブと魔影が蠢き、架陰の刀の刃を侵食していく。


(刃という土台となるイメージさえあれば、きっと簡単に魔影は硬質化するよ)


架陰は勢いよく刀を引き抜いた。


それと同時に、刃の周りに魔影が纏わりつき、元の刀身の1.5倍程の刃に変形した。


(名前を付けよう。この力の名前を)


「【魔影】・【弍式】・【魔影刀】!!」


その刃は刀と言うよりももはや大剣で、空気中の埃に触れると、バチッ、ビリッ! と黒い閃光を走らせた。


クロナは生唾を飲み込んだ。


「なによ、あの能力・・・?」


何故、架陰が能力を扱えるのか。まさか、10年以上前に発言していたわけではあるまい。10年前なら、彼は七歳だ。


そんなに幼い時に、能力に覚醒した人間など、聞いたことが無い。


(漆黒の刀身・・・、まるで悪魔みたい・・・)


ゾッと、背筋に冷たいものが走った。










架陰が能力を発動させている間一人で戦っていた響也は、一通り吸血樹の触手を捌いた。


一度後退し、架陰の横に着地する。


「お、いいもの持っているじゃないか」


架陰の魔影刀を見てニヤリと笑う。だが、その口からは疲弊しきった息が漏れていた。


「なんだか知らんが、架陰。お前、その刀で吸血樹を斬れるか?」


「いけますよ」


架陰は間髪入れず答えた。


響也が頷く。


「よし、頼んだ。The Scytheの握りすぎで、手の皮が剥けてな。血でヌメるから、力が入らん」


誰かさんがトロトロしているせいでな。と、響也は付け加えた。


架陰は「はは・・・」と苦笑を浮かべた。


「すみません。トロトロしてて・・・」


だが、直ぐに目をぎらりと光らせて、黒い刃を目の前の吸血樹に向けた。


「じゃ、いきましょうか」


挑戦的な声だった。


響也は「そうか・・・」と呟くと、架陰より一歩前に出た。「私は補助に回る。頼んだぞ!」


「はい!」


架陰は集中する。


少しでも集中を切らせてしまうと、この魔影で作り上げた漆黒の刀身が、揺らいでしまう。


揺らがぬよう、ひたすらに気を送って、硬質化させるのだ。


響也が吸血樹に斬り掛かる。


吸血樹の体中から、細い触手が無数に生えた。全ての先端が変形し、響也のThe Scytheのような鎌状の刃と化す。


響也はひらりひらりと、流れるような脚の捌きで、迫ってくる触手を躱していく。もう、一つ一つ切り落としていく余裕は無かった。


その代わりに、クロナの弾丸と、カレンの風が、響也の躱した触手を落としていく。


やっと、吸血樹の懐に潜り込んだ。


(こいつは再生能力が高い!!)


The Scytheを強く握りしめた。ぐちゅりと、捲れた皮から血が滲む。それでも、手が滑らぬよう、さらに力を込めて握った。


(生半可な力じゃだめだ!!)


響也の脚の中で筋繊維が収縮する。ありったけのエネルギーを、脹脛の筋肉に集結させた。


「死踏・・・、六の技・・・」


吸血樹を倒すためには、こうするしかないのだ。


「【死神刈り】!!!」


ドンッ!!! と響也の身体が、ロケットのように打ち上がる。


死神刈り。響也が編み出した最強の技だ。持てる全ての力で地面を蹴りだし、黒き弾丸と化して敵の命を刈り取る、一撃必殺の技。


響也の凶刃が、吸血樹の腹を大きく抉った。


吸血樹は悲鳴すらあげなかったが、明らかに大きく悶えた。


「ちっ!!」


やはり、六の技を持ってしても、刃が、吸血樹の命に届かない。


ならば、最後はあの男しかいないだろう。


「任せた!!」


空中に打ち上がった響也が叫ぶ。


「架陰!!!」


「わかりました!!!」


吸血樹は直ぐに再生してしまう。その前に、この一瞬の隙を、突くしかない。


「行くぞ! 魔影刀!!!」


架陰が黒い刀を握りしめ、吸血樹の正面へと突っ込んでいった。









その②へ続く


その②に続く

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