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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
397/530

羽ばたく悪魔 その③

髄液啜りて


紅月の肴


腎臓二つ


盟約の血筋

3


桜班・班長・鈴白響也は内心焦っていた。


(計画は順調・・・のはず・・・)


順調のはずだ。


全て手順をしっかりと踏んで行っている。


○○街に悪魔の堕慧児の出現をいち早く察知して、現場に急行。


雨宮クロナと鈴白響也。


そして、市原架陰の二手に別れて、それぞれ、椿班と薔薇班の援護を行った。


見事、優勢に立っていた悪魔の堕慧児たちの意表を突くことに成功したのだ。










だが。










「こいつ・・・」


響也はDeath Scytheを華麗に振りながら、歯ぎしりをした。


頬から冷や汗が伝う。


自分でも、逸るこの鼓動を抑えることが出来ない。


「くっ!!」


「おい、どうした?」


交戦中の笹倉が、鈴白響也の異変に気づく。


ニヤッと笑うと、全体重をかけて響也との間合いを詰めてきた。


「お前、刃が鈍ってるぜ?」


「うるさいな・・・」


響也はDeath Scytheを片手で器用に回転させると、下から切り上げた。


「おっと!!」


上体を仰け反らせて躱す笹倉。


「危ねぇ危ねぇ!!」


【ガーゴイル】の姿に変身している笹倉は、上体を仰け反らせた勢いで一回転すると、お返しとばかりに、刃を切り上げた。


「【雷撃刃】!!」


「っ!!!」


至近距離からの、雷撃の斬撃。


響也はDeath Scytheの巨大な三日月の刃を盾にした。


だが、防ぎきれない。


「があっ!!」


後方に吹き飛ばされた。


先程の笹倉同様、屋上の金網に背中を激突させる。


「く・・・」


雷撃が肺の辺りに響いて、上手く呼吸が出来ない。


(援護・・・、しろ!!)


このビルから二百メートル程離れたビルから狙撃している、椿班の二人にそう念じた。


苦戦する響也の意図を汲み取ってか、二百メートル離れた場所で、八坂がライフルの引き金を引く。










バシュンッ!!










と、サイレンサー付きのライフルから、鉄の弾丸が発射され、笹倉に迫る。


「ちっ!! またかよ!!」


笹倉は舌打ちと共に振り返ると、迫る弾丸に向かって刀を一閃した。


ぬるりと、弾丸は両断され、笹倉の左右を通り過ぎていく。


「鬱陶しいんだよ!!」


命中こそしなかったが、響也が呼吸を整えて立ち上がるまでの十分な隙は作れた。


「くっ・・・」


立ち上がった響也は、Death Scytheを構えて、再び笹倉に向かっていく。


「一の技!! 【命刈り】!!」


渾身の斬撃を叩き込んだ。









ギンッ!!!!











遠心力を使って強化した響也の斬撃だったが、弾をたたき落とす程の反射神経を待ち合わせている笹倉の前に防がれてしまう。


「おっと!!」


後方に下がると共に勢いを殺す。


「やっぱりお前、動揺してるだろ」


「さぁな・・・」


響也は、動揺を必死に押し殺すと、ぬるりぬるりと、笹倉に斬り込む。


黒い長髪をたなびかせ、見ているだけで身も竦むような大鎌を持つその姿は、まさに【死神】。


「死踏・・・」


コンクリートに亀裂が入る程の脚力で踏み込むと、一気に跳躍する。


「三の技・・・!」


空中で思い切り身を捩り、高速回転した。


「雷刈り!!!!」


遠心力+重力。


更には、高速回転による連撃。


雷のような攻撃が、笹倉目掛けて上空から降り注いだ。












ギンッ!!!!












だが、これも笹倉は刀を使って華麗にいなした。


やはり。


ニヤリと笑う。


「お前、目、ついてるのか?」


「くっ!!」


勢い余って、受身を取り損ねる響也。


右肩の辺りを、コンクリートの上に強打した。


すかさず笹倉が斬り込み、響也の腹に【名刀・雷光丸】の雷撃を叩き込んだ。











バチンッ!!!!











腹に殴られたような衝撃が走る。


胃がうねり、胃酸が逆流した。


「かはっ!!」


吹き飛ぶ。


思わずDeath Scytheを手放した響也は、ざらつくコンクリートの上を激しく転がった。何度も身体が跳ね、ゴキリと、左腕に激痛が走る。


放り出されたDeath Scytheは、笹倉のすぐ横の地面に突き刺さった。


「なんだ? 手応えねぇな・・・」


笹倉は勝ちを確信してニヤリと笑った。


背後から、真子が放った炎の矢が飛んでくるが、見向きもせずに叩き落とす。


「桜班・班長・鈴白響也・・・。お前、こんなに弱かったっけ?」


「うるさい・・・」


響也は口からだらりと唾液を垂らしながら起き上がる。


コンクリートに手をついた拍子に、左腕に激痛が走った。


「・・・・・・」


骨が折れたようだ。


「ああくそ・・・、ムカつく・・・」


回復薬を使いたいが、これからの戦いのために温存したいところ。


実際、鈴白響也は動揺していた。


いや、焦っていた。と言う方が適切だろう。


今回の作戦は、悪魔の堕慧児の殲滅を目的とすると同時に、彼らに誘拐された【副班長・城之内カレン】の奪還も含まれている。


響也にとって、悪魔の堕慧児の殲滅など二の次。それは、別々の場所で戦っている市原架陰や雨宮クロナも同じだった。


(カレンのことばっかり頭に浮かんで・・・、攻めきれない・・・)


響也は今すぐにでも城之内カレンの救出に行きたかった。


だが、彼女の居場所を知るのは、この悪魔の堕慧児のみ。













「てめぇの首落として・・・、さっさとカレンの居場所を教えてもらうよ・・・」












第118話に続く


補足


鈴白響也の武器は【Death Scythe】です。巨大な死神の鎌の形をしています。これは、【白蛇編】にて、入手した【機械生命体】の素材を使っているので、自由自在に形状を変えることが出来ます。

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