【第116話】 繋いだ手 その①
ふわふわの布団の中で微睡む日々を
貴方と共に抱き合う日々を
1
「例え、それが真意であろうが、正論であろうが、【人を傷つける】人間の気持ちなんて、知りたくもないわ!!」
一代目鉄火斎の隙を突いて、懐に潜り込むアクア。
気づいた彼に、反撃をさせる暇もなく、低い姿勢から、水を纏わせた拳を突き上げた。
クリティカルヒット。
顎を穿たれた一代目鉄火斎は、猫が踏み潰された時のような呻き声を上げて上空にかち上げららた。
(この女!!)
足元には、一代目鉄火斎が作り出した溶岩の地面が広がっていた。
ということは。
(自分の足を犠牲に!!)
「熱いわね・・・!!」
アクアは溶岩の地面に、自ら踏み込んでいたのだ。
一瞬の踏み込み。されど、強き踏み込み。
溶けだしたアスファルトは、容赦なく彼女の足首を覆い、革靴と肉を焼いた。
その激痛に耐えながら、アクアは空中の一代目鉄火斎に追撃した。
「【水砲】!!!」
水を手の中に発生させて、砲撃する。
(しまった!!)
空中では防ぐ術が無い。
直撃した。
ボンッ!!!!
と、空中で水の華が咲いた。
一代目鉄火斎は、全身ずぶ濡れになり吹き飛ぶ。
「あああああっ!!」
アクアは喉が切れんばかりに叫ぶと、溶岩の中から足を抜いた。
既に革靴は焼け落ちて、彼女の白い御御足は、赤く焼けただれていた。
「世界を救った女の覚悟を!! 舐めるんじゃないわよ!!」
指を鳴らす。
すると、空気中に充満していた水蒸気が彼女の周りに集まり、姿を形成した。
「【水龍】!!!」
アクアの周囲に、水で構築された龍が現れる。
彼女の合図で、水龍はひと鳴きすると、その大顎をがばりと開けて、一代目鉄火斎に襲いかかった。
「喰らいなさい!!」
「甘いんじゃないの!?」
水龍の大顎が、一代目鉄火斎の頭蓋を砕こうとした直前、彼は地面に手をついて体勢を整える。
それから、手に溶岩を纏わせた。
「っ!!」
「断罪の炎!!!」
溶岩を纏い灼熱となった拳を、水龍に放つ。
あまりにもの熱量に、アクアの水龍の体が、一瞬で消し飛んだ。
「っ!! 私の水龍が!!」
「子を捨てた僕の覚悟・・・、舐めてもらっては困るよ!!」
一代目鉄火斎は、ニヤリと笑うと、「お返しだよ」と言って、指を鳴らした。
地面の溶岩が念力で浮かび上がり、形を構成していく。
そして、先程のアクアの技を模した、【溶岩龍】を作り出した。
煌々とする龍は、まるで生きているかのように野太く鳴いた。
「ほらあっ!!」
アクアに襲いかかる。
「くっ!!」
アクアは動揺を必死で抑え込むと、手の中に水を集中させた。
焦るな。
簡単なことだ。
先程、一代目鉄火斎がやったように、自分もこの攻撃を水で相殺すればいい。
出力を最大限にまで引き上げて、叩き込みやすい角度に、全力で打ち込むのみ。
「やる!!」
「能力、解除」
一代目鉄火斎が指を鳴らすと、アクアの周りを覆っていた溶岩。さらには、迫り来る溶岩龍までもが、一瞬で硬化した。
「えっ!?」
足を焼いていた苦痛が消え失せた。
一代目鉄火斎の能力は【灼熱】。
「僕の能力を履き違えてはいけないよ。【灼熱】の能力は、【熱を操る】ということ。溶岩が動くのは、あくまで、溶岩に宿った【熱】を操作しているだけさ」
つまり、熱を解除して、溶岩を一瞬で硬化させたということ。
硬化した龍は、アクアの目の前で崩れ落ちる。
溶岩の中に足が沈んだ状態で硬化したために、彼女の足は地面から抜けなくなった。
「しまった!!」
「終わりだね」
身動きが取れなくなったアクアに迫る一代目鉄火斎。
今度は、陽動でも牽制でもない、本物の殺意を宿した刃を振るった。
(殺られる!!)
「させるかあっ!!」
路地裏から、突如叫び声が響いた。
次の瞬間、空気を裂いて、一本の刀が飛んでくる。
「っ!?」
一代目鉄火斎は、それを刀で弾いた。
ギンッ!!!
飛んできた刀は、天高く舞い上がる。
「この刀は・・・」
赤い刃。
炎を模した、流線型の鍔。
「蒼弥の刀か!!」
「師匠!!!」
路地裏から、蒼弥が鬼気迫る表情で飛び出してきた。
蒼弥は、震える脚に鞭を打って駆け抜ける。
腕に炎を纏わせて、一代目鉄火斎へと放った。
「ちっ!!」
一代目鉄火斎は、アクアから身を引いて、一度後退する。
「蒼弥!! 嬉しいよ!! 君が僕に殺されに来てくれて!!」
「何馬鹿なこと言ってんだ!!」
蒼弥は回転しながら落下してきた刀を掴むと、流れるような動作で、再び投擲した。
「っ!!」
今度は回避できない。
鋒は容赦なく、一代目鉄火斎の右脚の太ももに突き刺さった。
ぐらりと、バランスを崩し、その場に跪く一代目鉄火斎。
蒼弥は畳み掛けるように言った。
「帰るぞ!! 師匠!! オレたちの家に!!」
その②に続く
その②に続く




