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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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第16話 魔影 その③

君は本当の『君』を知らない


時に君が人を喰らう『牙』を持っているのなら


君は君を『絶望』と呼ぶ

3


「再生能力か、厄介だな・・・」


切り刻んたはずの吸血樹の体だったが、肢が生え、首が生え、一瞬にして元の姿に戻っていた。


龍のような頭が、まるで四人を嘲笑うかのように「キリキリキリ」と歯ぎしりをする。


「ちっ」


響也は舌打ちをして、再びThe Scytheを握った。


「何度でも切り刻んでやるよ!!」


響也が再び斬り掛かるのに続いて、架陰も地面を踏みつけた。


吸血樹の体を覆う触手が、バキバキと軋みながら広がる。


「自ら鎧を!?」


ビュンビュンッ!!と、無数の触手が鞭のようにしなって攻撃を仕掛けてくる。


まるで、あちらこちらに張り巡らされた有刺鉄線。


「ちっ!!」


響也は舌打ちを打つと、身を屈め、身を捩り、時には身体を仰け反らせて、その一つ一つの攻撃を躱した。


「風神之大翼!!」


「W-Bullet!! 乱撃!!!」


カレンとクロナが後方から支援をするが、何せ数が多すぎる。打ち砕いた傍から、次々と吸血樹は触手を再生して攻撃してくるのだ。


(この鞭のような触手攻撃・・・、架陰には躱せないか・・・)


響也はちらりと自分の後ろをついてくる架陰を見た。そして、驚愕する。


「完璧」とは言えないが、架陰は確かに攻撃の全てを躱していたのだ。


「あいつ・・・」


にわかには信じ難い光景だった。


(よし、見えるぞ・・・)


架陰は朱に染まった眼球で、襲ってくる触手攻撃を一つ一つ見極め、躱していった。全てが、スローモーションのように流れていく。


躱すことも容易い。


架陰の頭の中に、あの男の声が響いた。


(いいね、よく研ぎ澄まされているよ・・・)


「そりゃどうも・・・」


響也と架陰が、吸血樹の無数の触手攻撃を抜ける。


吸血樹の本体・・・、懐に潜り込んだ。


「決めるぞ!!」


「はい!!」


響也と架陰は、吸血樹の紡錘形の腹に、斬撃を同時に叩き込む。


殺った!


と思ったのは束の間。太い触手が腹と刃の間に割って入ってくる。


「!?」


「ちっ!!」


刀とThe Scytheの刃が、太い触手にめり込んだ。


全力で叩き込んだおかげで、深々と刺さってしまい、抜くのに苦労する。


刃を触手に食われた二人の背後から、数本の極細触手が、二人を貫かんと迫った。


直ぐにカレンが翼々風魔扇を仰いだ。


「風神之剣・乱舞!!」


触手が二人に届く前に、カレンが放った無数の鎌鼬が、全てを細切れにする。


「よくやった! カレン!!」


先にThe Scytheの刃を抜いた響也は、危険が付きまとう吸血樹の懐から出ようとせず、姿勢を低くした。


「このまま決めてやる!!」


キリキリと脚に力を込める。真上には、吸血樹の龍の頭骨のような顔。


「死の技・・・」


ダンッ!! と、コンクリートの表面に蜘蛛の巣状の亀裂が入る程、全力で蹴り出す。


真上に打ち上がった響也の握るThe Scytheの湾曲した刃に、吸血樹の首が引っかかった。


「頸刈り!!!」


サンッ!!と、吸血樹の頸がされた。


吹き飛んだ頭が、空中に弧を描く。


どんな生物でも、首を落とされたら死ぬ。それは、自然の摂理であり、絶対に揺らいではいけない事象。


だが・・・。


「くそっ!! またか!!!」


切断された傍から、吸血樹の頭が再生した。


「そんな・・・」


やっとの思いで刀を抜いた架陰も、絶望的な気分になる。


そこにまた、あの男の声が響いた。


(駄目だよ。頭を落とすだけじゃ、こいつは死なない・・・)


「!!」


(分かるんだ・・・。僕には・・・、あいつには僕の一部が流れているからね・・・)


架陰に迫る触手攻撃。


半分はクロナが狙撃し、半分は架陰自らが刀を振って切り落とした。


(その目・・・、よく見えるだろ?)


「見えますよ・・・」


周りが遅すぎるくらいによく見える。だが、それで周りより早く動けるというわけではないが。


(吸血樹の命の源は、あの紡錘形の腹の中だ)


「あそこに・・・?」


(あそこに、心臓がある。響也という女が斬った頭は、ただの飾り・・・、擬頭だ)


「あそこか・・・!」


架陰は刀を上段に構える。


そのまま斬り掛かろうとしたが、太い触手が鞭のようにしなり、吹き飛ばされる。


「くっ!!」


油断した。よく見ていなかった。


吸血樹の懐から距離を取った架陰は、地面に着地するも、勢いを殺しきれず、数メートル足を擦った。


男が囁く。


(さあ、僕の能力を使ってごらん・・・)


「分かりましたよ・・・」


再び刀を上段に構え、架陰は精神を集中させた。








先程に見た、あの男の夢を思い出す。


暗闇の中、架陰は男に叫んでいた。


「どれだけ勇気を振り絞っても、一歩だけだ!! 一歩しか前に進めない!! それじゃあダメだ!! 吸血樹を倒すためには、十歩・・・、いや、百歩、もっともっと進まないといけないんだ!! それが、僕には無理なんだ!!!」


早く現実世界に戻らなければと焦る架陰とは対照的に、男は穏やかな口調で言った。


(僕は言ったはずだよ・・・。「君が大好きだ」と)


ふわりと架陰の背後に回り込み、架陰の手に自分の手を重ねた。


(これが答えだ。僕は、君が何処までも進んで行ける力を、君に授ける・・・)


架陰の手に、暖かい何かが流れ込んできた。


「・・・!」


(よく聞いてくれ、今から、この力の使い方を説明するよ)














現実世界に戻った今、架陰の耳に、穏やかな男の声が響いた。


(よし、まずは深呼吸しろ)


架陰は力を抜くと、深呼吸を数回繰り返した。


(そして、刀で出血しろ)


架陰は刀の刃を使って、左手の甲に傷をつけた。


「え、架陰くん!?」


突然自傷を始める架陰に、カレンが慌てた声を出す。だが、集中している架陰には届かない。


10センチほどの傷から、赤い血液が染み出した。


(そして、身体から流れ出る血液に、意識を集中させろ。君の血は、唯一の武器となる!)


この手を流れる血に祈る。


語りかける。


動け。戦え。畝り。広がり。一迅となって、僕の力となれ。







「能力・・・、【魔影】・・・、発動!!!」








その瞬間、架陰の心臓が大きく脈を打った。


血液がふわりと浮かび上がり、鮮やかな赤色が、一瞬にして漆黒に染まる。


数滴の漆黒が、ザワザワと細胞分裂をするように広がり、架陰の周囲を取り囲んだ。


その謎の物質を、何に例えるか。強いて言うなら、「暗雲」・・・、または「黒い霧」。


「さあ、決着といきましょう!!」








17話に続く

クロナ「あ、外で育てていた向日葵が萎れてる」


アクア「任せて! はあ!!」


クロナ「すごーい。一瞬で水が湧き上がった!!」


アクア「私の能力は【水】を発生させることができるのよね」


クロナ「じゃあ、部室棟の壁の掃除してくれません? あそこ、ホースが届かないんですよ!」


アクア「いいわよー。ほらー!!」


クロナ「すごーい! 綺麗になった!!」


アクア「なんでも頼んでね!」


響也「じゃあ聞きましょう。エナジー・・・」


アクア「それは無理ね」


クロナ「次回、第17話!『黒い斬撃』!」

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