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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
384/530

灼熱地獄 その③

湧き上がる熱砂を背に


滝壺の祭壇に贄を捧げ


八岐大蛇を待つは我か

3


不意を突いて襲いかかった溶岩鞭が、蒼弥の腕に巻きついた。


「っ!!」


振り払う暇もなく、灼熱の鞭が、彼の着物の袖を焼き消して、肉に到達する。


たちまち、針で刺されるかのような痛みが走った。


「あああああああああああぁぁぁあああああああああああぁぁぁあああああああああああぁぁぁあああああああああああぁぁぁあああああああああああぁぁぁあああああああああああぁぁぁあああああああああああぁぁぁあああああああああああぁぁぁあああああああああああぁぁぁあああああああああああぁぁぁッッ!!!」


天を仰いで発狂。


視界で火花が散り、脳髄が締め付けられるような感覚が駆け抜けた。


「あっ!! ああ!! あああ!!!」


ジュウジュウと、蒼弥の肉が焼けていく。


「二代目鉄火斎!!」


アクアがすかさず、彼に向かって水砲を放った。


冷却され、彼の腕に巻きついたまま固まる鞭。


「はあっ!!」


アクアは蹴りを放ち、岩となった鞭を砕いた。


「しっかりしなさい!!」


白目を向いて気絶寸前の蒼弥を抱えると、その場から退避。


「逃がさないよ!!」


一代目鉄火斎は、獲物を仕留めるまで止まらない。


逃げるアクアの背中に向かって、溶岩の斬撃を放った。


「くっ!!」


殺気を感じ取り、咄嗟に前のめりになる。


斬撃が彼女の頭上を通り過ぎていった。


(落ち着け・・・)


アクアは走りながら呼吸を整えた。


ちらりと、抱えている蒼弥の腕を見る。


(かなりまずい状況ね・・・)


何とか、腕が焼け落ちることは回避したものの、彼の腕は見るも無惨な形になっていた。


腕には硬化した岩がこびりつき、その周りが焼かれて真っ赤に腫れ上がっている。血の循環が断絶されて、そこから右手に掛けて、真っ黒に染まっていた。


「二代目鉄火斎!! しっかりして!!」


「お、おう・・・」


何とか返事をする蒼弥。


「腕、動かせる!?」


「無理だ・・・」


一代目鉄火斎の放った熱により、腕の神経すらも焼かれたようだ。焼けた部分からは煙が立ち上り、香ばしい香りが漂っていた。


「くそ・・・」


「大丈夫。回復薬は持ってきているから、腕も治せるわ・・・」


だが、肝心なのは・・・。


「まずは、あの男を撒く必要があるわ!!」


ちらりと首だけで振り返る。


一代目鉄火斎は、下駄を履いた足で地面を蹴り、猛スピードでアクアを追尾していた。


対して、アクアは蒼弥を抱えているために、本調子で走ることができない。


一代目鉄火斎は、走りながら進行方向を変えた。


カツンカツンと、下駄を踏み鳴らし、道路の端のビルの壁を走り始める。


「っ!?」


人間の動きではなかった。


「もう少しさぁ、遊ぼうよ」


一気にビルの屋上までかけ登った一代目鉄火斎は、さらにスピードを駆け抜けて、眼下のアクアを追い越した。


「こんなのは、どうだい?」


アクアが駆けてくるタイミングを見計らい、ビルの屋上で、能力を発動させた。










「【滅びの雨】」











たちまち、彼を中心として、ビルのアスファルトが溶け始める。


何千度にも熱されたそれは、溶岩と化して、煌煌と輝いた。


「ほら、プレゼントだよ」


能力で溶岩を操る一代目鉄火斎。


野球ボール程の大きさにして、辺りに何十、何百個と浮かばせた。


「ほらほらほらぁ!!」


それを、ビルの上から地上に向かって落とした。


「っ!!」


アクアが見上げると、頭上から無数の溶岩の塊が落下してきた。


「まずい!!」


アクアは咄嗟に駆けて、路地裏に飛び込んだ。


大通りでは、ドボドボと、灼熱の雨が降り注ぎ、辺りのものを一瞬で溶かしていく。


地面が熱され、辺りにむくむような空気が充満した。


「なんなの!? あの能力は!?」


射程距離が広すぎる。


そして、一度でも触れてしまえば、この蒼弥のように一瞬で戦闘不能に追いやられてしまうのだ。


「ここは・・・、一度撤退ね・・・」


アクアは懸命な選択を下した。


「だけど・・・、想定外を通り越して、驚愕だわ・・・」


路地裏を駆け抜け、少しでも一代目鉄火斎から逃げる。


右に、左に。


死角を存分に使って、距離をとった。


「あれだけの実力があれば・・・、UMAハンターとして活躍出来ただろうし・・・、悪魔との戦いも有利に進められたかもしれないのに・・・」


アクアは走りやすいように、蒼弥を背負った。彼は苦痛のあまり、身体中に脂汗をかいて、氷像のように冷えていた。


「二代目鉄火斎。あの男は何者なの!?」


「オレの師匠だよ・・・」


「それは知ってる」


アクアは角を右に曲がり、飲食店の倉庫の中に潜り込んだ。


「あれだけの化け物が、どうして、悪魔の堕慧児に加担しているの?」


「知らねぇよ・・・」


蒼弥は荒い息を立てながら、そう、絞り出した。


「十年前にオレを置いて・・・、消えちまったんだから・・・」


「・・・・・・」


十年前。


ちょうど、アクア達がアメリカで、最凶のUMA【悪魔】と戦った頃のことだった。


「なにか・・・、関係があるのかしら?」













番外編【二代目鉄火斎外伝】に続く

番外編【二代目鉄火斎外伝】に続く

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