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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
381/530

グッドラック その③

二度と消えることはない


烙印を押そう



3


脳裏に過ぎるのは、十年前のこと。


彼を置いて、何処かへと行ってしまった、師匠の姿。


「師匠っ!!!!!」


二代目鉄火斎・・・、いや、本名【蒼弥】は、突如彼の目の前に立ち塞がった男の名を呼んだ。


十年前と全く変わっていない。


髪の毛を肩まで伸ばし、薄い生地の着物を緩やかに着こなす。ニコニコと、何を考えているのか分からない笑みを浮かべ、腰には、殺意に満ちた刀を携えている。


二代目鉄火斎・・・蒼弥に刀鍛冶の基礎を教えこんだ男。【一代目鉄火斎】が、目の前にいた。


「師匠!! あんた!! ここで何やってんだよ!!!」


蒼弥は、人間に仇をなす悪魔の堕慧児側につく一代目鉄火斎にそう言った。


「オレを放っておいて!! こんなところで、何やってんだよォ!!」


声が震えた。


感情を抑えることができず、目じりからボロボロと涙がこぼれた。


一代目鉄火斎は、着物の袖をヒラヒラと振った。


「久しぶりだね。蒼弥」


「久しぶりなんてもんじゃねぇだろ!!」


「ああ。10年ぶりか」


ぽんっ、と手を叩く。


「ごめんね。時間の流れがよく分からなくなっていたよ・・・」


「そんなことより!! 師匠!!説明しろよ!!」


蒼弥は、一代目鉄火斎に詰め寄った。


「どうしてあんたが、悪魔の堕慧児の味方をしているんだよ!!」


「味方?」


あまりピンと来ていない様子。


「どういうことだい?」


「味方してるだろうが!! アイツらが使っている武器、全部、あんたが作ったんだろうが!!」


蒼弥に被せるようにして、アクアが腕組みした状態で口を開いた。


「一代目鉄火斎殿。少し不思議だったんですよ。悪魔の堕慧児たちは、UMAハンターではないのに、【能力武器】を装備していました。かなりの上物です」


「そりゃそうだ。僕が作ったんだから」


「どうしてです?」


アクアの目がぎらりと光る。


「同じ質問をします。どうして、悪魔の堕慧児に武器を与えたんですか?」


「無粋だね」


「あなたが悪魔の堕慧児のために武器を作らなければ、彼らの戦力がここまで上がることはなかったはずです」


確認出来ただけでも、笹倉の【雷光丸】や、唐草の【雨之朧月】は、一代目鉄火斎による作品だった。


一代目鉄火斎は、両手を広げて、天から降り注ぐ陽光を全身で浴びた。


「実に無粋だ」


「・・・・・・」


「僕は職人だよ? 頼まれれば、作るに決まっているじゃないか」


「たった、それだけの理由ですか?」


「それだけの理由にしてくれないか?」


どういうことだ?


彼の言葉の真意が汲み取れず、アクアは固まってしまった。


一代目鉄火斎は、ニヤリと笑うと、「本題に入ろう」と言った。


腰の刀に手をかけて、するりと抜く。


赤色の刃が姿を現した。











「【名刀・溶岩藝流】」










「っ!!」


辺りの空気が一瞬で張り詰めた。


痺れるような恐怖が肌を伝い、蒼弥の足元を震わせる。


自然と呼吸が浅く、速くなり、目の前の光景がぐにゃりと歪んだ。


動揺する蒼弥を見て、一代目鉄火斎は逆撫でするように言った。


「怖いのか?」


「・・・・・・」


奥歯を噛み締める蒼弥。


「怖いんだろ?」


「嫌だよ・・・」


蒼弥は声を震わせ、ただをこねるように首を横に振った。


「師匠・・・、オレ、あんたと戦いたくないよ・・・」


「別に『戦え』とは言っていない」


赤い刀の鋒を、蒼弥の鼻先に向けた。


「バカ弟子を『殺す』って言っているんだ」


「それがわからねぇよ・・・」


「分からなくてもいい」


その瞬間、一代目鉄火斎は刀を振った。


刃から赤い斬撃が放たれ、雨に濡れた子犬のように震える蒼弥に迫る。


アクアがすかさず、彼の着物の襟元を掴んで引き寄せた。


「鉄火斎!!」


アクアの助力で、何とか斬撃を回避する。


倒れ込んだ蒼弥は、「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう」と連呼しながら、地面に拳を叩きつけた。


「ちくしょう!! このバカ師匠!!!」


「あらら、バカ弟子にバカって言われちゃったよ・・・」


「ふざけんな!!」


叫んだ瞬間、彼の喉元にピリリと痛みが走った。


声が枯れようと構わない。


「ふざけんな!!ふざけんな!!ふざけんな!!ふざけんな!!」


立ち上がったかと思えば、駄々をこねるように地団駄を踏む。


「なんでこんなことすんだよぉ!!!」


「分からないだろうね」


一代目鉄火斎は冷酷に言い放つと、刀を地面に突き立てた。


それから、蒼弥に問う。


「一つ聞きたい。あの刀を打ったのはお前か?」


「あの、刀・・・?」


「市原架陰が装備していた、あの黒い刀だよ」


「オレだよ」


蒼弥は断言した。


「師匠に教えてもらったこと全部つぎ込んで作った、オレの最高傑作だよ!!」


「ああ、そう・・・」


独り合点すると、刀の柄を強く握りしめた。


その瞬間、刃が赤い光を放つ。


グツグツ、グツグツと、刀が突き立った地面が発熱して、どろりと溶けて、溶岩となった。


熱気が、蒼弥とアクアに押し寄せる。











「これがボクの能力【灼熱】・・・」












第114話に続く

第114話に続く

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