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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
380/530

グッドラック その②

沈む暗夜に具して


百鬼夜行の葬列を


眺む稚児共の片手に提灯



2


魔影脚で脚力を強化した架陰は、猛スピードで駆け出して、戦線から遠のいた。


すかさず、唐草が山羊の肢で追いかける。


「逃がさないよ!!」


一瞬で、架陰の横に並んだ。


「つれないな!! もう少し僕たちと遊んでいけよ!!」


「遊んでいる暇は無い!!」


架陰の両腕は、花蓮を抱き抱えているために塞がっていた。


ストライドを広げ、勢いを利用したまま、ふわりと浮かび上がった。


空中で下半身を捻り、虚空に向かって回し蹴り。










「悪魔大翼・湖月!!!」









架陰の脚から、三日月形の斬撃が放たれた。


「っ!!」


意表を突かれた唐草は、躱す余裕が無い。


咄嗟に、胸の前に腕を十字に交差させて、それを受けた。


斬撃が炸裂して、唐草を吹き飛ばす。


彼の軽い身体はいとも簡単に道路の中央分離帯の植え込みに突っ込んだ。


「いてて・・・」


頭を抑えながら体を起こす唐草。


その間にも、架陰は唐草のはるか先に駆けていた。


「なるほど・・・、魔影はあんな風に応用ができるのか・・・、少し納得・・・」


斬撃を放てるのは、刀に纏わせた魔影のみ。と思い込んでいた。


だが、実際は蹴りによって放つことも可能らしい。


威力は弱い。斬撃とは名ばかりで、唐草を吹き飛ばす程度の威力しか無かった・・・。


「やっぱりこうでなくっちゃ!!」


唐草は手を叩いて立ち上がる。


そして、革鎧の内側に仕込んでいたトランシーバーを取り出すと、耳に当てた。


「あー、こちら唐草。こちら唐草。市原架陰は、二番通りを北上中。至急応援を頼む」


すると、笹倉が応答した。


『てめぇ!! 今は手が離せないんだよ!!』


「なんで」


『こっちも、桜班のヤツらに絡まれた!! 交戦中だ!!』


嘘ではないらしい。


マイク越しに、刃と刃が触れ合う金属音が立て続けに聞こえてきた。


「戦闘中なら仕方ないね」


唐草は、笹倉の『おい、どうすんだこれ!!』の言葉を無視して、通信を切断した。


間髪入れず、誰かのトランシーバーから連絡が入った。


「こちら唐草」


『こちら鉄火斎』


悪魔の堕慧児たちの武器の製造を担当している、【一代目鉄火斎】からだった。


「ああ、鉄火斎殿。どうしたんですか?あなたは作戦に参加しなくても構いませんよ?」


『ああ、それは知ってるよ』


「じゃあなんで?」


『すこし、遊んできていいかな?』


「遊ぶ?」


この状況で、どうして『遊ぶ』という言葉が出るのか、唐草には計りかねた。


『うん。ちょっとだけ遊んでくるからさ』












場面は移り変わる。


ビルの屋上。


今しがた、眼下の道路を、城之内花蓮と市原架陰が駆け抜けた。


一代目鉄火斎は、唐草との通信を切ると、トランシーバーを着物の袖に入れた。


腰帯をきつく締め、そこに、赤褐色の刀を装備する。


風に揺れる髪の毛を、紐で結い、戦闘態勢を整えた。


「さてと・・・」


ニヤリと笑って、遠ざかっていく架陰の姿を見た。


しかし、追うことはしない。


「僕の目的は、また別にある・・・」


着物の袖を翻して、南側を見る。


「さて、行こうか・・・」


屋上のタイルを蹴った。


カツンっ!!


と、下駄が心地よい音を立てて、彼を上空に打ち上げる。


空中で体勢を整えた、二つ隣のビルに着地。


もう一度、カツンッ!!と蹴って跳躍。


一代目鉄火斎は、まるで森を駆け抜ける猿のように、ビルからビルへと飛び移っていった。


カツン!!!


カツン!!!


彼が跳躍する度に、下駄の音が街全体に響く。


「ああ、いたいた・・・」


眼下に、目的のものを発見すると、彼はアスファルトを蹴るのを辞めた。


ビルの側面を蹴って、落下の勢いを殺しながら、道路の中央に着地。


「ふうっ!!」


と、ひと仕事終えた時のような息を吐いて、顔をあげた。


「久しぶりだね・・・」


目の前にいる男を見てから、悪意の篭った笑みを浮かべる。


「蒼弥・・・」


一代目鉄火斎が降り立った場所。


そこは、二代目鉄火斎と、桜班・総司令官アクアが待機している場所だった。


「っ!! 師匠!!」


突然襲来した男に、二代目鉄火斎の顔面は蒼白。


折りたたみ式の椅子を倒して、後ずさった。


「てめぇ!! なんでここに!!!」


冷静を欠く二代目鉄火斎に対して、アクアは冷静だった。


二代目鉄火斎を手で制して、彼の半歩前に出る。


ゴクリと生唾を飲み込むと、恐る恐る語りかけた。


「あなたが・・・、一代目鉄火斎さんですか?」


「ああそうだよ」


あっさりと認める一代目鉄火斎。


「君みたいな美女に名前を把握されるなんて、光栄だね」


「・・・・・・」


飄々とした口ぶり。


アクアは身体中をミミズが這うような感覚に襲われた。


足元から揺らぐような不快感を押さえ込み、一代目鉄火斎と対峙する。


「私たちに、なんの用でしょうか?」


「決まってるだろ」


一代目鉄火斎は鼻で笑った。


「バカ弟子を、殺しに来たんだよ」












その③に続く





その③に続く

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