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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
374/530

太歳 その②

アダムとイブに憧れて


万里の長城に登ってみたが


天国にはまだ遠く


肉の果実をがりりと齧る

2


「永劫せよ【太歳】」


能力を発動した瞬間、悪魔の堕慧児の一人である神谷の姿に異変が起こった。


ボコボコと内側から泡立つようにして肉が肥大し、彼の【人間】の原型を一瞬で呑み込む。


地面に枝分かれした足を食い込ませ、強靭な根を張って自らを固定した。









そして、一木と化した。











「なんだ!?」


突如変化した神谷に、一同は驚きを隠せなかった。


桐谷の、城之内家に仕える執事としての勘が危機を察知する。


「お嬢様!!」


桐谷は、すぐ様、城之内花蓮を抱き抱えると、神谷から距離をとった。


肉の木の幹から、ボコボコと肉塊が盛り上がり、神谷が顔を出した。


「懸命な判断ですね」


「っ!!」


やはり、なにかする気だったようだ。


人間の形を保っていない神谷は、巨木の枝を手足のように動かした。


「人間、未知のものに遭遇した時にとるべき行動は【逃亡】です。いや、【様子を見る】の方が妥当な答えでしょうか?」


木の枝は、メキメキと軋みながら伸びていき、喉を刺されて窒息しかけていた唐草の脳天に突き刺さった。


「っ!!」


「なにをっ!?」


その瞬間、神谷から伸びる枝が淡く白光りした。


枝と言うよりも触手が、ドクンッ!! ドクンッ!! と蠢き、唐草に何かを注入する。


「くっ!!」


嫌な予感を感じた西原は、素早く斬りこんで、唐草の脳天から伸びる触手を切断しようと試みた。


それよりも先に、触手が唐草の脳天から抜ける。


「しまった!!」


刃は空を切る。


脳天を貫かれていた唐草だったが、死ぬ様子は無い。むしろ、さっきよりも快活に見えた。


ニヤリと笑い、「イヒヒヒヒヒ」と呻き声を洩らしながら、ゆっくりと喉に刺さったナイフを抜いた。


その瞬間、血が勢いよく吹き出した。


「っ!?」


「面白いね・・・」


ゆらりゆらりと身体を揺らしながら、上目遣いで西原たち桜班を睨むつける。


ビチリと、傷が塞がった。


「傷が塞がったっ!?」


「今ので分かっただろ?」


ぬらりと動く。


地面を這うようにして、斎藤の懐に潜り込むと、彼の腹に、強烈な蹴りをお見舞した。


「吹き飛びな」


「がはっ!!」


ただの蹴りだ。


だが、隙を突かれて受けるダメージは半端なものでは無い。


肋の下・・・、鳩尾につま先が食い込み、グリグリと内臓を抉る。


胃はたちまち悲鳴を上げて、黄色味かがった胃酸を逆流させた。


ガクッ、と、脱力する斎藤。


「斎藤!!」


直ぐに西原が援護に入った。


その瞬間、西原の足に何かが絡みつく。


「っ!?」


振り返ると、巨木に変化した神谷から枝の形をした触手が伸びており、それが西原の足を止めていたのだ。


「このっ!!」


西原が剣を振り上げる。


足に絡みついたそれを切断しようとしたが、触手は蛇のように蠢き、西原の足を掬った。


「桐谷!!!」


「はい!!」


城之内花蓮を建物の影に避難させた桐谷が戦線に復帰する。


「てめぇ!! 西原さんを放しやがれ!!」


小柄な身体で疾走しながら、タキシードの腰のベルトに結びつけた【甲突剣】の柄に手をかけた。


ボコボコと神谷の顔が首を擡げ、鬱陶しそうに桐谷の方を振り返った。


「焦らないで下さいよ」


「ぶっ飛ばしてやる!!」


桐谷は甲突剣を構えると、走りながら上体を引いた。


柄を強く握りしめる。


「甲突剣!!!」


桐谷の握力を合図に、剣全体を、白い閃光が駆け抜けた。


バチバチと雷光が刃覆い、鋒に集中する。











「甲突剣!! 【貫】!!!」











虚空に向かって、剣を突く。


蓄積されたエネルギーが、鋭い形となって、樹木に変化した神谷に放たれた。


「っ!!」


神谷の脇腹・・・、つまり、樹木の幹の部分が半分消し飛ぶ。


「もう一発!!」


桐谷は追撃とばかりに、右足を軸に回転すると、勢いをつけて一閃した。











「甲突剣【斬】!!」











先程とは少し威力の落ちた斬撃が、損傷を受けている神谷に迫った。


「甘いですね!!」


神谷は眉間に皺を寄せて、ギリッと桐谷を睨んだ。


その瞬間、斬撃が神谷に炸裂して、彼の胴体が真っ二つに切断される。


「よし!!」


完全に切断した。


だが。


「だから、甘いんですよ」


根元辺りから切り離されたというのに、神谷は未だに言葉を発していた。


切断面から、どろりとした粘液が分泌して、切り離された幹と根元が固着する。


「なにっ!?」


困惑する桐谷。


神谷は、触手を操ると、西原を投げ飛ばして、桐谷に激突させた。


「くっ!!」


「ぐあっ!!」


二人揃って、地面に倒れ込む。


そして、さらにそこに、蹴り飛ばされた斎藤の身体が墜落した。










折り重なって倒れ込む三人。











「僕の能力は、【太歳】。知りませんか? 中国に伝わる、伝説の果実のことを?」














その③に続く





その③に続く

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