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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
372/530

泡沫の血飛沫 その③

能ある鷹は爪を隠し


その鷹を射る私は


毒の鏃を天に向けて

3


「全面戦争と行こうじゃないか」


唐草は両手を広げ、神になったかのような口振りでそう宣言した。


「戦争は、【知略】なんだよ」


右人差し指で、こめかみをコツコツと叩く唐草。


「この街は、僕の仲間の【蜻蛉】と言う女の能力で支配されている。そして、蜻蛉と、笹倉はこの街の反対方向から侵入した椿班と交戦中」


そして、唐草は装備している和傘を畳むと、先を、目下の薔薇班に向けた。










「僕の役目は、君たち薔薇班を始末することだよ」










「話が早いですね」


西原は黒タキシードの腰に装備したステッキの柄に手を掛けた。


「あなたが私たちに向かってきてくれると言うのなら、私たちは単純に【返り討ち】にするまでです」


柄を引くと、仕込み杖に仕込まれた白銀の剣が姿を現し、ビルの隙間から差し込む陽光を反射して鈍く光った。


「手足を切断して、嫌でも、お嬢様の居場所を聞き出そうか」


「おお、怖いね」


唐草は肩を竦めて笑った。


終始ヘラヘラとしている唐草を見て、隣に立っていた男が咎めた。


「唐草殿。もう少し緊張感を持って頂けますか?」


中学生のように小柄で、首から下を覆ってしまう白いマントを身にまとっている。


顔は童顔。ビー玉のようにクリっとした瞳が、唐草を睨んだ。


「我らが王のために、この作戦を遂行するのですからね?」


「ああ。わかってるよ。【神谷】」


神谷。と呼ばれた男は深くため息をついた。


「本当にわかっているのですか?」


「わかってるわかってる」


「いや、わかっていないでしょ」


「わかってるよ」


バサリと傘を広げる。


「いいかい? 神谷。好きこそものの上手なれ。だよ」


「どういうことですか?」


「好きな物こそ、上手にできる。勉強は嫌いだからできない。でも、ゲームは好きだから上手くなる」


「それとどう関係があるんですか?」


「楽しめってことだよ」


そう言う唐草は心底楽しそうに笑っていた。


脊髄を駆け抜ける快感に頬を紅潮させ、武者震いを抑えられないでいる。


「さあ、神谷。楽しもうよ」


屋上から飛び降りる。


神谷は「仕方がありませんね」と、先輩の飄々とした雰囲気に心底うんざりしながらも、その後に続いた。


二人同時に、薔薇班の前に着地。


「じゃあ、遊ぼうか」


「唐草殿。遊んではいけません。我々の目的は市原架陰の奪還です」


「いやぁ、だって、まだ桜班はここに到着してないじゃないか」


ペロリと下唇を湿らせる唐草。


「本番は市原架陰率いる桜班が到着してからだ。それまで、適当に戦力を削って遊ぼうよ」


「・・・、もういいです」


神谷は諦めて薔薇班の方を向き直った。


「もう唐草殿には期待しません。さっさと、この薔薇班のメンバーを戦闘不能にさせてもらいましょう」


「じゃ、援護よろしく」


そう言葉を交わしあった唐草と神谷は、次の瞬間には戦闘態勢に入っていた。










まずは、唐草が地面を踏み込んで、前衛の西原に斬りこんでいく。


西原も瞬時に臨戦態勢を整えると、後方の三人に指示を出した。


「桐谷!!お嬢様は援護を!! 斎藤は前衛に!!」


「「「了解!!」」」











「間に合うかなぁ?」


間合いを詰めた唐草は、死角から突き上げるようにして、和傘の先端を放った。


西原はそれに気づき、すかさず仕込み剣の側面でそれを受け、身を引くと共に勢いを後ろに流した。


「いい体術だね!!」


「あなたも」


やはり、この男、強い。


先程、西原に為す術なく組み伏せられたのは、彼に「抵抗する意思」が無かったから。


本気を出せば、ここまで柔軟かつ精密な動きをすることができるようだ。


「ですが」


西原は唐草の傘の斬撃を受け止めながら目を細める。











「多勢に無勢はいけませんよ?」











上体を大きく仰け反らせる西原。


突いた唐草の和傘が空を切った。


「っ!?」


その瞬間、西原の後方から斎藤が飛び出した。










「【バトラーの仕込み棍】」











右手に握っていた、黒い筒をフェンシングの甲突剣のように前方に突き出す。


筒の中に何重にも折りたたまれていた、筒が「チキッ!!チキチキチキッ!!」と乾いた音を立てながら伸縮する。


「おっと!!」


唐草は紙一重でその攻撃を躱した。


「面白いね。仕込み槍かな?」


「仕込み棍です」


伸びきった棍棒を振る。


大きくしなったそれは、間一髪で躱したはずの唐草の脇腹に直撃した。


「吹き飛びなさい」


しなりの反動で、大きく吹き飛ばされる唐草。


受身をとることもできず、ガラス張りのビルに突っ込んだ。











ガシャンッ!!!










と、ガラスが割れる音が響いた。


「唐草殿・・・」


あっさりと吹き飛ばされた先輩を見て、神谷は幻滅を隠せなかった。


「おい、ダメでしょ。神谷」


崩れたガラス片の中から、唐草が顔中を血まみれにして立ち上がる。


「今のは援護しろよ」


「・・・、すみません」


「まあいいや」


唐草は手をプラプラとさせて脱力する。











「身体が温まってきたよ」











第111話に続く


第111話に続く

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