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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
369/530

知略 その③

油虫が一匹


土間の隙間を渡っている

3


「むしろ好きですよ?」


追い詰められている側だと言うのに、うつむき加減に、ニヤリと笑う蜻蛉。


それを見た瞬間、鉄平の背筋がすっと冷たくなった。


野生の勘が、危機を察知する。


「っ!!」


何をされた。というわけでもないのに、鉄平は地面を蹴って上に跳躍していた。


その瞬間、肉塊で覆われた地面に一文字の亀裂が入った。


亀裂がくぱっ!! と開いて、真っ暗闇が顔を覗かせる。


「これは!!」


「さすがです。奇襲を掛けたつもりが、躱されちゃいましたね」


地面を覆った肉塊が、大顎の形状に変形し、鉄平を飲み込もうとしたのだ。


まさに、陥没した地面のように。


鉄平は空中で身をひねり、その大顎を躱した。


「あめぇんだよ!!」


流れるように、蜻蛉との距離を詰める。


そのまま、鉄棍を振り下ろそうとした。









次の瞬間。










死角から、鋭い雷撃が飛んできて、鉄平の腕に直撃した。


バチッ!!


と、流れた電流が、鉄平の腕の神経を狂わせる。


「っ!!」


手の力が抜けて、鉄棍がポロリと放り出される。


「この雷撃は!?」


「ふっ!!」


蜻蛉がニヤリと笑った。


地面から肉塊を隆起させ、鉄平の腹を穿つ。


「がはっ!!」


鉄平は、吐血して上空に吹き飛ばされた。


(くそ・・・!! この雷撃を使えるやつは!!)


虚ろう目で、隣のビルの屋上を見た。










そこには、人間の姿をした、【笹倉】が立っていたのだ。


「てめぇ!!」


「わりぃな」


笹倉は冷酷に言い放つと、握っていた【名刀・雷光丸】を一閃した。











「【雷撃刃】」











刃から、三日月型の雷撃が放たれた。


「にゃろおっ!!」


鉄平は空中にいるために、防ぐことが出来ない。


(くそ!! 終わった!!)


諦めて目を閉じた。


その時だ。











「【爆炎火矢】!!!!」











どこからともなく、炎を纏った矢が飛んできたのだ。


「っ!!」


これには、勝利を確信していた笹倉もうろたえる。


炎の矢は、間一髪で、鉄平に迫った【雷撃刃】を相殺した。










ドンッ!!!!











と、空中で爆発が巻き起こる。


笹倉は舌打ちしをして、矢が飛んできた方向を見た。


「くそ!!」


それから、満身創痍の蜻蛉の方を見て、怒鳴った。


「おい!! 蜻蛉!!! 一体どうなってやがる!!」


「え・・・」


蜻蛉も、何が起こっているのか理解しかねている状況だった。


「どういうこと?」


「ふざけんな!! お前!! ちゃんと分断したんじゃねぇのかよ!!」


「したわ」


「できてねぇだろ!!」


「は?」


笹倉は、三つ先のビルを指さした。


「三時の方向!! お前の作った檻から抜け出して、椿班の狙撃手が狙っているぞ!!」


言った傍から、炎を纏った矢が飛んできた。


「くそ!!」


笹倉は雷光丸を振って、それをたたき落とす。


ビュンビュンッ!!


と、ライフルの銃弾までもが飛んできた。


「しっかりしろよ!! 蜻蛉!! お前の役割は【敵の分断】だろうがよ!!」


「したわ!! 分断したわ!!」


蜻蛉は冷静さを欠いて、そう叫んだ。


蜻蛉はしたのだ。


能力の【陽炎】を使って、肉の壁を作り出し、鉄平とその他三人を分断させた。


そして、一人一人倒す作戦だった。










それなのに、なぜ、椿班の者たちは牢獄から抜け出したのだ!?










「悪いわね。私、空を飛べるのよ」











「え?」


振り返る。


そこには、背中に翼を生やした【雨宮クロナ】が悠然と佇んでいた。


「桜班の・・・!!」


見れば、地面に真っ逆さまのはずだった鉄平の身体を抱き抱えている。


クロナの能力は、【黒翼】。


背中から翼を生やし、大空を自由自在に飛び回ることができる能力だ。


「まさか、あなたが・・・!!」


「そうよ・・・」


間髪入れず、クロナは鉄平を路肩に放り投げた。


それから、腰の刀を抜いて、一閃する。











ギンッ!!!











反射的に、肉鎌で防ぐ蜻蛉。


しかし、クロナの踏み込みの強さを緩和することが出来ず、後方に吹き飛んだ。


すぐ様、笹倉に合図を出した。


「笹倉さん!! 桜班が到着しました!!」


「んなこた分かってる!!」


笹倉もまた、ビルの屋上の上で交戦中だった。


(まずい!! ビルの上は、椿の狙撃手に狙われやすい!!)


笹倉に回避する暇さえ与えずに、炎を纏った矢と、ライフルの弾丸が飛んできていた。


何とか刀でたたき落とすものの、それが精一杯だった。


背後から気配。


「っ!!」


本能のままに、上体を倒す。


ビュンッ!!!


と、三日月状の刃が、笹倉の頭を掠めた。


低い姿勢から、思い切り蹴りあげる。


空を切った。


「こいつは!!」


「よっ!! 久しぶりだな・・・」


笹倉を襲撃してきたのは、桜班班長の、【鈴白響也】だった。












第110話に続く



第110話に続く

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