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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
368/530

知略 その②

ふやけた脳を


ホルマリンの海に沈めて


アダムとイブの


終末を見に行こう

2


「好きですよ。あなたのそういうところ」


譫言のようなことを言いながら、蜻蛉が迫ってくる。


鉄平は、揺れる地面の上で体勢を整えるのに精一杯だった。


「こいつ!!」


彼女のしなやかな連撃を、鉄棍で防いでいく。


しかし、ふとした拍子に、バランスを崩し、そこに攻撃を叩き込まれていた。


ぐにゃりぐにゃり。


ぐにゃりぐにゃりと、地面が蠢く。


突き上げるような感覚と、引き込まれるような感覚が交互に襲ってきて、上手く立ち回れなかった。


「くそ!!」


鉄平は苛立ちを隠せない。


冷静さを欠いて、蜻蛉の攻撃を食らってしまった。


「くっ!!」


脇腹の辺りを斬り裂かれた。


傷口が熱くなり、沸騰するような血液が吹き出す。


飛び散ったそれは、蜻蛉のブレザーに掛かって、赤い斑点となった。


「綺麗な血の色してますね」


「なんなら!! もっと見せてやるよ!!」


鉄平は傷口を左手で抑えた。


血をベッタリと付着させると、蜻蛉に向かって吹きかける。


「っ!!」


蜻蛉は咄嗟に顔を覆ったが、それよりも先に、鉄平の血液が彼女の眼球に入った。


「目潰し!?」


「おらよォ!!」


蜻蛉に生まれた隙を、鉄平は全力で突きに行く。


歪む地面の中、渾身の脚力で足場を捉えて、踏み込む。


鉄棍の先端で、蜻蛉の腹を穿った。


「吹っ飛べ!!」


「がはっ!!」


蜻蛉は口から胃酸を吐いた。


そのまま、鉄平の腕力に吹き飛ばされ、地面の上をゴロゴロと転がった。


「くっ・・・」


蜻蛉は直ぐに起き上がった。


目に入った血を拭い、顔をあげる。


目の前に、鉄平がいた。


「くっ!!」


指を鳴らす。


鉄平が鉄棍を振り下ろす。


間一髪で能力が発動した。


盛り上がった地面から肉塊がせり上がり、鉄平が蜻蛉の脳天を砕く前に、彼の体を持ち上げ、吹き飛ばした。


「コノヤロウ!!! 仕留め損ねた!!」


「危ない危ない・・・」


再び距離を取り合う二人。


蜻蛉は鉄平に突かれた腹を抑えながら立ち上がった。


「ダメですよ。女の子の腹を攻撃したら。大切なところなんですよ?」


「大切なところってことは!! 弱点ってことだろうがよ!!」


鉄平はお構い無しに襲いかかってくる。


「赤子が産めねぇ体にしてやるよ!!」


「冗談でも言っちゃダメですよ」


蜻蛉は落胆して肩を落とした。


それから、左手の指をパチンと鳴らす。









「【肉塊圧殺】」










その瞬間、四方八方を取り囲んでいた肉壁から肉の塊が飛び出し、鉄平を圧殺せんと迫った。


「っ!!」


「これ、結構体力使うんですよ」


「なんのっ!!」


鉄平は跳躍して、それを回避しようとした。


しかし、触手のように伸びてくるそれは、起動を変え、鉄平を追尾してきた。


「こいつ!!」


これだけ大量の肉塊だ。


まず、鉄平の装備している鉄棍では全てを払い切れない。


鉄平はわずか数秒の間に熟考した。


(どうする!?)


肉塊は全方位から襲いかかってきている。


右のものを弾けば、左、下、上からと袋叩き。


左のものを弾けば、右、下、上からと袋叩き。


どうあがいても、被弾してしまう。










ならば。










「だったら、こうしてやるよ!!」


鉄平は空中で体勢を整える。


そして、鉄棍を握りしめると、上体を思い切り引いた。


「っ!?」


防ぐことを辞めた鉄平に、蜻蛉は言い知れぬ違和感を感じ取った。


諦めたのか?


いや、あの目は諦めていない。










勝とうとしている目だ。










「オレのっ!! 野生の勘を!! 舐めるなよォ!!」











振り絞って、解放する。


鉄平から放たれた鉄棍は、空気を引き裂いて、まるで断罪の槍の如く、蜻蛉に迫った。


「っ!!」


鉄平のしたことを今更ながら理解する。










(能力者本体を狙ってきた!?)










胸の前に腕を交差させて、防御姿勢をとる蜻蛉。


勢いよく飛んできた鉄棍は、彼女の腕の肉を突き破り、胸に突き刺さった。


「がはっ!?」


喉の奥から血が吹き出す。


(馬鹿な!? 打撃武器が、私の体を貫いた!?)


「どんなもんだい!!」


意識が逸れた瞬間、鉄平を囲っていた肉塊の動きが鈍くなった。


「やっぱりな!!」


鉄平は肉塊の隙間を抜けて、着地する。


「てめぇの能力・・・、射程距離が長い分、操るのが難しいんだろ!! ちょっと意識を逸らしただけで、操縦がおぼつかねぇぞ!!」


「全く・・・」


蜻蛉は胸に刺さった鉄棍を引き抜いた。


血が勢いよく吹き出したが、能力で肉を生成して、傷を一瞬で塞いた。


「腹を殴るわ、胸に傷を付けるわ・・・」


「それが嫌なら!! 引っ込んでろ!!」


鉄平は自分の腹の傷を抑え、再び手に血を纏った。


「いえ・・・」


首を横に振る蜻蛉。










「むしろ好きですよ?」










その③に続く

その③に続く

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