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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
364/530

合同作戦開始 その②

手を取り合う


薔薇と椿

2


「なんじゃこりゃ」


目の前の光景を見て、椿班の班長である【堂島鉄平】は、あからさまに顔を顰めた。


かつて、灰色のビルが立ち並び、多くのサラリーマンや観光客、若者が闊歩していたその街は、一晩にして地獄と化していた。


建物が命を持ったように、赤黒く染まり、所々に血管のような模様を確認出来た。


地面にもその「赤黒」は広がっていて、固いような、柔らかいような、陸上トラックのタータンを踏んでいるような感触だった。


この街の変化に巻き込まれたのか、あちこちに人間の死体が転がっていた。


皆、足を欠損したり、首を欠損したりと、尋常ではない様子。


辺りに充満するこの生臭い香が、死体から発せられているのか、それともビル郡に広がった肉壁によるものなのか。


「どうなってんだよ、こりゃ」


「とりあえず、調査するしかありませんね」


地獄の街に踏み入ることを渋る鉄平の横を、副班長の山田が筋肉質の巨体を揺らしながら通りすぎた。


「我々の任務は、この街の調査です」


「そうッスよ!! 鉄平さん!!謎を解き明かしちゃいましょう!!」


四席の矢島真子も、そう言って意気込んだ。


唯一、三席の【八坂銀二】だけは、欠伸を噛み殺して「早く帰りたい」とボヤいた。


鉄平は、頬を数回叩いて気合いを入れると、「じゃあ、早速調査と行きますか」と言って、山田を追い越して、先陣を切って街に踏み入れた。


ぞろぞろと、山田、真子、八坂と続く。


八坂が言った。


「ってか、なんでオレたち、ここの調査に派遣されたんですか? ここ、桜班の管轄ですよね」


「あん?」


ギロリと振り返る鉄平。


「おい、八坂。てめぇ、まさか架陰に協力しないつもりじゃねぇだろうな?」


「いや、そういうつもりじゃないです」


八坂は慌てて首を横に振った。


「ただ・・・、肝心の桜班が、現場に到着していないので・・・」


桜班の管轄地域だと言うのに、桜班ではなく、椿班が派遣されるのが腑に落ちなかったのだ。


すぐさま、山田が補足した。


「八坂。もうしばらくしたら、桜班も駆けつけます。あと、今回は薔薇班の方も調査に協力してくれるそうですよ?」


「え、薔薇班も来るっスか?」


矢島真子が目を丸くしてそう言った。


薔薇班。という言葉に過敏に反応した矢島真子を見て、山田が尋ねた。


「なにか、心当たりがあるのか?」


「いや、ハンターフェスの時に、ちょっこし戦ったンスよ」


「ああ」


真子の脳裏に浮かぶのは、薔薇班・三席の【桐谷】の姿だった。


「へえ、あいつも来るっスか・・・」


「来てないじゃん」


八坂は皮肉を込めて辺りを見渡した。


「オレ、ハンターフェスの時に、薔薇班の爺さんにやられたんですよ。あんまり会いたくないなぁ」


八坂にとっては苦い思い出だ。


ハンターフェスの時に、響也を援護したおかげで、薔薇班の四席から返り討ちに遭ったのだ。


薔薇班と交わりたくない八坂と、真子を宥めるように、山田が言った。


「薔薇班は、街の反対側から来るそうですよ。今回はあくまで調査なので、手分けをした方が早い。という話ですね」


「そうッスか」


「オレは早く架陰と合流したいぜ」


「鉄平さん。無茶言わないでください。架陰殿は、刀が破損したので、一度匠の方に報告に行っているんです」


「そうかぁ?」










四人は、規制線が張られ、人通りの無くなった大通りを見て回った。


人一人、UMA一匹と見当たらない。


いや、人一人いない。と言うのは語弊がある。


道端には、何者かに身体の部位を食われた人間の死体が転がっていた。


普段から死体に慣れている四人は、一応、その位置を地図に記録して、後で回収できるようにした。


「うーん」


地図に記入しながら、八坂が唸った。


「この街の変化に、これだけの死体。確実に、UMAが関わっていますよね?」


「そうだろうな」


鉄平が路地の方を覗き込みながら頷いた。


「だけど・・・、どこにもいねぇ・・・」


「もう逃げたんじゃないっすか?」


「その説も十分に有り得るが・・・、ちょっと腑に落ちねぇよな」


鉄平は、装備していた鉄棍で、壁をコツコツと叩いた。


柔らかいような。硬いような。


変な感触だ。


「このビルの壁・・・、一体何が起きてやがる?」


「街全体が、この肉壁で覆われていますよね」


山田もビルの壁や、道路をノックするように叩きながら頷く。


「恐らく、UMAの人外的な力が働いているんでしょうね」


「能力持ちか・・・」


熟考する鉄平。


能力には射程距離がある。


もしこの現象が、能力によるものなら、これは驚くべき事実だ。


ここまで射程距離が広い能力を、鉄平は見たことがなかったのだ。


「さて、どうしたもんか・・・」


数キロに渡る街の中を一通り見て回ったが、どこにも、この惨劇を指揮した親玉は見受けられない。


「ってか、この死体・・・」


根本的なことに気がついて、鉄平は路傍の死体を鉄棍で指した。


「どうやって殺されたんだ?」











その③に続く



その③に続く

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