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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
363/530

【第108話】 合同作戦開始 その①

薄絹を脱いで


この背中に残る傷跡を


舐める貴方の


舌の温もりに溺れていく




1


カレンが悪魔の堕慧児達に連れ去られてから、五時間ほどの時が経過した。


丁度、架陰達が二代目鉄火斎の工房に向かっている頃、とある場所で動きがあった。


帰宅ラッシュを過ぎて、車通りがほとんど無くなってしまったビル街。


歩道を闊歩するは、居酒屋から出てきた酔っ払いサラリーマンだけで、皆、各々に路肩で嘔吐いていた。


それをビルの屋上から見下ろす人影が二人。


「本当にやるのか?」


一人は、能力を解除して人間の姿に戻った笹倉。


そしてもう一人は、高校のブレザーを身にまとった少女だった。


「やりますよ」


黒い天蓋の下で、風に黒髪をたなびかせながら、少女ははっきりとそう言った。


「もう始めますので、笹倉さんは準備をお願いします」


「ハイハイ」


面倒くさそうに返事をする笹倉。


それを聞いて、少女もまた、面倒くさそうに舌打ちをした。


「嫌なんですか?」


「なわけ」


「私も、笹倉さんと一緒に任務に当たるのは嫌ですよ」


「結構酷いこと言うよね?」


「酷いことを言われるのが嫌なら、言われない努力をお願いします」


「ハイハイ」


「ちっ!」


少女は、はっきりと分かる舌打ちをした。


それから、スカートを少したくし上げ、白く細い太ももを顕にした。


「笹倉さん。見ないでください」


「いや、お前が見せて来たんだろうが」


「あなたは女子の気持ちを理解する能力に欠けているようですね」


少女は、そう言いながら、その白い太ももに、指をズブリと喰い込ませた。


爪が脚の肉を抉り、ぐちゃぐちゃと体内に侵入していく。


血が吹き出し、ぼたぼたと地面に落ちた。


「この能力を使えば、私は傷つくんです。どうせなら、目立たない傷がいいでしょう?」


「そうだな・・・」


少女は太ももの肉をゾリッ!!と抉り出した。


真っ赤に濡れた手の中に、ピンポン玉程の肉塊が握られる。


血の滴るそれをグチャりと握りつぶし、すぐし下の地面に塗りこんだ。










「能力【陽炎】。発動・・・」









少女を中心として、彼女の血肉がアスファルトを侵食するように広がっていく。


ズブリズブリ、ズブリズブリと、生々しい音を立てながら、それはありとあらゆる方向を赤黒く染め上げて行った。


「すげぇよな」


その様子を見ながら、笹倉は感嘆の声を洩らした。


「お前の能力、射程範囲広すぎだろ」


「あまり便利なものではありませんよ? 笹倉さんみたいに空は飛べませんし・・・、唐草さんみたいにパワーが上がるわけでもありません・・・」


ピキピキと骨が軋む音がした。


見れば、少女の眼球が真っ赤に充血して、ブレザーを突き破り、肩甲骨辺りから白い硬質の翼が生えていた。


「私の能力は、ただ、【敵をおびき寄せる】だけなので・・・」


「十分すげぇだろ」


彼女の血肉は、数十秒でビルを飲み込んだ。


墨汁を垂らしたように灰色だったビルは彼女の肉に覆われ、血肉はさらに範囲を拡大させていく。


一人のサラリーマンが酔っ払って歩いていると、目の前に広がってきた血肉を発見した。


「なんじゃこりゃ、誰かが怪我でもしたのかぁ?」


そんなことを言いながら、血溜まりをヒョイッと飛び越える。


その瞬間、血溜まりから肉の塊が首を擡げ、サラリーマンの右足首を掴んだ。


そして、バクんッ!!と、彼の足首から下の骨と血肉を取り込む。


「えっ!!」


突然、右足が消えた。


当然、サラリーマンは困惑して、発狂した。


ばたりとアスファルトの上に倒れ込み、それでも直ぐに、自分の足を心配した。


「ふぎゃあっ!! オレの足が!! オレの足がァー!」


それを見て、笹倉は大袈裟に顔を歪ませた。


「お前、結構悪趣味だよな?」


「どこかですか?」


「いや、直ぐに殺せばいいのに・・・」


「殺しませんよ・・・」


少女はニヤリと笑い、太ももから流れて来る血を拭った。


「私の能力は、敵のエネルギーを吸い取ることもできるんです。これから始まる戦いに備えて、栄養補給と行こうじゃありませんか・・・ 」



すると、太ももの傷から流れていた血がピタッと止まった。


直ぐに肉が細胞分裂を開始して、その傷を癒していく。


「さて。準備は整いました。後は好きにしてください 」


「へいへい」


笹倉は、屋上の肩網から若干首を出して地面の様子を見た。


バタリバタリとサラリーマン達が倒れている。


皆、足首から下が無かったり、手首から下が無かったり。


必ずどこかを怪我していた。


「ほんと、悪趣味だぜ」
















翌日、とある情報が桜班に駆け込んできた。











○○地区にて、謎の肉片が出現。


肉片は○○地区のほとんどを飲み込み、辺りを地獄のような惨状と化した。











「桜班」、「椿班」、「薔薇班」で、この状況を調査せよ。











その②に続く

その②に続く

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