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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
361/530

城之内カレン奪還作戦 その②

雪原の追憶の中で


サクサクの遠のく貴方の


赤らんだ指先を


掴むことの出来ない


盲目の吹雪よ

2


「いい加減正気に戻れバカ!!」


その言葉を聞いて、架陰の頭の中は冷水を浴びたように明瞭になった。


いつも気だるげな響也がこうやって取り乱し、叫ぶのは滅多に無い。


事の重大さを、改めて痛感した。


「あ、はい・・・」


頷く。


「すみません」


架陰は腫れた頬を擦りながら、上半身を起こした。


響也もそれ以上殴ってくることはなく、「全く・・・」と言いながら、架陰から離れた。


「とにかく、現状報告だ。何が起こったか言え」


「はい」


架陰は立ち上がって、改めて説明した。


「悪魔の堕慧児が襲撃してきました。確認できるだけで三体。【唐草】と、【笹倉】と、【鬼丸】でした・・・」


「どいつも、前回の奪還作戦で交戦した奴らか・・・」


「はい。彼らは最初、僕を誘拐するつもりで襲ってきたんです。ですが・・・、途中から『作戦変更』って言って、カレンさんを連れ去ったんです」


「お前は、止められなかったのか?」


「はい。このザマですよ」


架陰は落ちていた【名刀・叢雲】の柄を拾い上げて、二人に見せた。


根元からポッキリと折られている。


「僕は【鬼丸】と戦いました」


「鬼丸か・・・」


苦虫を噛み潰したような顔をする響也。


無理もない。彼女は前回、鬼丸と交戦して、右腕を切り落とされるという痛手を負っていたのだ。


「まあ、お前が勝てないのは無理がないな。五体満足で帰って来れて結構だ」


「ありがとうございます・・・」


「しかし、不思議だ・・・」


響也は腕組みをして、うつむき加減に考えた。


「悪魔の堕慧児の目的は、【架陰の誘拐】じゃないのか? どうしてカレンを攫ったんだ?」


「わ、分かりません・・・」


「とにかく、カレンのトランシーバーの発信機を追うぞ」


響也がそう言うやいなや、クロナがサッと着物からトランシーバーを取り出し、液晶画面を覗いた。


GPSを使って、カレンの居場所を逆探知する。


しかし、直ぐに首を横に振った。


「ダメです。反応がありません」


「ダメか・・・」


奴らも学んだのだろう。


前回、架陰の居場所をGPSでバレたように、今回はカレンのトランシーバーを破壊したらしい。


「くそ・・・」


響也は珍しく動揺した様子で、近くにあった電柱を蹴った。


「カレン・・・」


しかし、直ぐに切り替えると、架陰の方を向き直った。


「一度帰るぞ。このことは、アクアさんに報告だ。それに、仮に居場所がわかったとしても、私たち三人だけじゃ、あの集団に勝てるとも限らない。前と同様に【椿班】との協力も見越して動こう・・・」


「はい」


架陰はこくりと頷いた。


それに、叢雲が折れてしまった今、架陰の戦力は格段に落ちている。


前回、二代目鉄火斎から【赫夜・プロトタイプ】を譲り受けていたのがまだ救いだった。


「じゃ、帰るわよ」


クロナがそう言って、架陰の前に背中を見せてしゃがみ込んだ。


「その傷じゃ動けないでしょ。おんぶしてあげるから」


「ありがとうございます」


架陰はクロナの背中におぶさった。


三人は、一度桜班の本拠地に戻ることとなった。




















「なるほどね・・・」


桜班本拠地。総司令官室。


響也の報告を受けたアクアは、神妙な面持ちで頷いた。


「悪魔の堕慧児が、また動き出したのね・・・」


「はい・・・」


クロナに連れられて治療に向かっている架陰の代わりに、響也が頷いた。


「カレンが、連れ去られました」


「居場所は?」


「トランシーバーを破壊されたので、分かりません」


「そう・・・」


下唇を噛み締めるアクア。


居場所が分からない以上、助けに行くことが出来ない。


「とりあえず、【椿班】には、前回と同じように共闘を申請するわ。あそこの総司令官なら許可は出ると思うけど・・・」


「ですが・・・」


響也はこう言いたかった。


この数ヶ月で、急激に強くなっている架陰はともかく、もとより強かったカレンが敵に捕まったのだ。


つまり、敵も強くなっている。ということ。


「椿班と、桜班だけで・・・、悪魔の堕慧児達を殲滅できると思いますか?」


「響也にしては珍しいわね」


妙に弱気な発言を、アクアは指摘した。


響也は、「そりゃそうでしょ」と、それを認める。


「カレンがさらわれたんですよ? 慌てもしますよ」


「そうね」


「特に・・・、カレンは私の生きる全てなんですから・・・」


「そうね」


ガチャッと、総司令官室の扉が開いて、身体中に包帯を巻いた架陰が戻ってきた。その後ろにはクロナがついている。


「架陰、怪我の具合は大丈夫なの?」


「はい。回復薬も食べたので、しばらくしたら全快します」


「問題は山積みね」


アクアは腕組みをして、ソファの背もたれに体重を掛けた。


「カレンも助けないといけない。架陰の刀は折られた・・・」


「あ、そのことなんですけど」


架陰は思い出したようにアクアに報告した。


「実は・・・、悪魔の堕慧児達に混ざって、【一代目鉄火斎】がいたんです」












その③に続く


その③に続く

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