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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
360/530

【第107話】 城之内カレン奪還作戦 その①

造花を進呈する


秋になったら捨ててちょうだいね?

1


「おい、クロナ。これはどういうことだ?」


遅れて、○○地区に到着した響也は、街の惨状を見て、隣のクロナに尋ねていた。


クロナ、目の前の光景に瞳孔を震わせて「わ、分かりません」と言うことしか出来なかった。










惨状。










街の人間は消え失せ、代わりに、大量のUMAがビルの壁に叩きつけられて死んでいた。


その死体から流れ出した血液が、道路を真っ赤に染め上げている。


腸の生臭い臭いが、二人の鼻を突いた。


「この街に・・・、何が起こっているんだ?」


「さっきのUMAも、なんだったんでしょう?」


街に入る時に通る唯一の県道を、数匹のUMAが占拠していたことを思い出した。


UMA自体は強くなく、簡単に討伐することが出来た。


気がかりなのは、そのUMAと、この街に起こっている異常。その関連性だ。


「とにかく、架陰とカレンと合流しよう」


「そうですね」


響也とクロナは、架陰達を探して血溜まりの中を歩き始めた。


雨は既に止んでいた。


丁度その時、前方から、架陰が歩いてくるのが見えた。


「あ、架陰です!」


「そうだな・・・」


架陰の姿を見た時、二人は一目で架陰の様子がおかしいことに気がついた。


激しい戦いを交わしたのか、身体中から血を流して、着物は返り血で真っ赤に染まっている。右腕がだらんと垂れて、その指先から血が滴っていた。


本人の瞳も虚ろで、意識があるのか無いのか測りかねない様子。


二人は架陰に駆け寄った。


「おい、架陰。どうした?」


「・・・・・・」


架陰は俯き加減で、足を引きずるようにして歩いている。


ズルズル、ズルズルと、二人の横を通り過ぎて歩いていく。


「おい!!」


響也が架陰の肩を掴む。


そこでようやく、架陰は我に返った。


「あ、響也さん・・・、それに、クロナさんも・・・」


「おい、どうした? その傷は? 回復薬は使わないのか?」


「え、あ、ああ・・・」


架陰は自分が回復薬を摂取していないのを思い出して、着物の懐から【桜餅】を取り出そうとした。


しかし、右肩の腱が切られているために、腕が上がらない。


仕方なく、左手で取り出そうとする。


その左手には、柄だけとなった【名刀・叢雲】が握られていた。


それを見た時、クロナの顔がサッと青ざめた。


「あんた!! その刀!!」


「あ、ああ・・・、これですか・・・」


架陰の手から、叢雲の柄がポロリと落ちる。


カシャンッ!!


と、乾いた音を立てた。


「折られました・・・」


「折られただと?」


「UMAにか!?」


「いや・・・、悪魔の・・・、堕慧児に・・・」


「悪魔の堕慧児だと!!」


彼らの襲撃を知るや否や、響也は架陰に詰め寄り、彼の胸ぐらを掴んだ。


「悪魔の堕慧児に遭遇したのか!!」


「は、はい・・・」


「戦ったのか!!」


「はい・・・」


架陰の目は、虚ろ。


こうやって上下に揺さぶられているというのに、何も感じていないような混濁した瞳だった。


そんな呆けた様子に、響也は若干のいらだちを覚えた。


「おい、架陰。はっきりとものを言え。とりあえず、現状報告をしろよ・・・」


「あ、ああ・・・、すみません」


架陰は思い出したように頷くと、事の顛末を話し始めた。


「刀を、折られました・・・」


「ちっ!!」


響也は架陰の頬を打った。


架陰はそのままよろめいて、雨水の溜まった道路に腰を打ち付けた。


響也は眉間にシワを寄せた。


「クロナ。こいつはダメだ。一度戻って、治療を受けさせるぞ。刀を折られたせいでボケてる」


「あ、はい・・・」


クロナは、立ち上がらずぐったりとしている架陰の前にしゃがみ込んだ。


彼の頭をくしゃくしゃと撫でる。


「もー、しっかりしてよ。響也さん怒っちゃったじゃない」


「クロナ。早くしろ」


「分かりましたよ」


クロナは、架陰の腕を掴んで立ち上がらせた。


「ほら、一旦帰るわよ。治療も受けなきゃダメだし・・・」


架陰の気持ちは理解できた。


せっかく手に入れた新たな刀を一瞬で折られたのだ。絶望もするだろう。


腕を自分の肩に回して、架陰を支える。


「大丈夫? 痛くない? ってか、カレンさんと合流しなかった?」


「・・・、…、ました」


「え? なんて言ってるの?」


「連れ去られました・・・」


「え?」












「カレンさんが・・・、悪魔の堕慧児に、連れ去られました・・・」











架陰がそう言った瞬間、そっぽを向いていた響也が勢いよく振り返った。


クロナを押しのけ、架陰の首を掴むと、そのまま地面に組み伏せる。


「お前っ!! 今!! なんて言った!!!」


「カレンさんが・・・、連れ去られました・・・」


「何故それを早く言わない!!」


「すみません・・・」


響也は装備していた【Death Scythe】を放り投げて身軽になると、右拳を握りしめた。


そして、思い切り架陰の頬を殴る。


ゴツッ!!


と鈍い音が響いて、架陰の頬が赤く腫れた。


「いい加減正気に戻れバカ!!」











その②に続く


その②に続く

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