さらば夜 その②
天蓋を割って
出てくる雛の目を潰し
生まれ落ちることさえも
獄門を潜りて
2
「来い」
鬼丸が手招きをする。
言われなくても、架陰はアスファルトを強く踏み込み、斬りこんだ。
「【魔影刀】!!!」
魔影を纏わせて、火力を底上げした刃を、鬼丸に向かって一閃する。
鬼丸は一歩も動かない。
刀を抜くと、その白銀の刃で、架陰の斬撃を受け止めた。
ドンッ!!!!
魔影刀から放たれる衝撃波。
空気が揺れる。
降りしきる雨が、一瞬、吹き飛ばされた。
「っ!!」
架陰の刀は、そこから先・・・、鬼丸が受け止めた先から動くことができなかった。
どれだけ力を込めて押し込んでも、鬼丸はビクともしない。
冷静な表情のまま、架陰の刀を受け止めているのだ。
「・・・・・・、ふむ。やはり、弱いな・・・」
その、一言に尽きた。
「くそ!!」
架陰は一度身を引く。
それから、再び刀に魔影を纏わせて、斬りこんだ。
しかし、架陰の視界から、鬼丸の姿が消える。
漆黒の刃は、空を虚しく切った。
「っ!!」
「・・・何もわかっていないな・・・」
背後に、鬼丸が立つ。
架陰の耳元で囁いた。
「貴様の斬撃は・・・、私には届かない」
「くそっ!!」
振り向きざまに一閃。
しかし、刃は空を斬る。
鬼丸は足音も立てずに、ひょいひょいとバックステップを踏んで下がった。
「確かに、鍛えられているだけの事はある。踏み込みも、刀の構え方も・・・、私に向かってくるその気概も、なかなかのものだ・・・」
いつの間にか、彼の腰の鞘には刀が収められていた。
「しかし・・・、私には敵わない・・・」
「くっ!!」
足元がぐにゃりと歪んだ気がした。
身体が、「この男には勝てない」と理解を始める。
それでも、足に鞭を打つようにして踏み込むと、再び斬りこんでいく。
「はあっ!!」
刀を・・・、振り下ろす。
ギンッ!!!
受け止められる。
「愚かな・・・」
鬼丸は刃を手で掴むと、身を反転させて架陰ごと投げ飛ばした。
「うわっ!!」
ビルの屋上から放り出される架陰。
「くっそ!!」
落下をしながら、身を捩って体勢を整えると、隣接するビルの非常階段の手すりに着地した。
足に魔影を纏わせる。
「魔影脚!!!」
思い切り手すりを蹴り飛ばし、屋上に立っている鬼丸に向かって、跳躍した。
突進するような形で、鬼丸に斬り込む。
しかし、鬼丸は他所を向いている。
架陰の方は見ていない。
一閃された刃を、上の空で受け止めると、また、架陰ごと投げ飛ばした。
架陰は受身をとることも出来ず、硬いアスファルトの上をゴロゴロと転がった。
「っ!!」
何とか手を着いて立ち上がり、雨水が広がった地面を滑る。
手のひらが痛い。
衝撃を緩和した時に皮ごと剥けたようで、ぼたぼたと血が滴っていた。
「・・・はあ、はあ、はあ・・・」
「分かったか?」
鬼丸は静かに聞いてきた。
「もう、諦めろ・・・」
「誰が・・・!!」
血が滴る手のひらで、叢雲の鞘を握る。
「よろしい」
鬼丸はそう言った。
「無理だとわかっていても向かってくる。そこに、武士の境地があるものよ・・・」
「御託は!! そこまでだよ!!」
架陰は、刀に魔影を纏わせると、虚空に向かって斬り上げた。
「【悪魔大翼】!!!」
不意を突いて、三日月形の斬撃が鬼丸に迫る。
鬼丸は、右足を軸にして、半歩身を引いた。
斬撃は、鬼丸の横をすれすれで通り過ぎていき、隣のビルを両断した。
「あ、当たらない・・・!!」
「片手で振るからだ。狙いが定まっていないぞ・・・」
「くそ!! もう一発!!」
ヤケになり、二撃目を喰らわせようと魔影を発動させる架陰。
しかし。
「眠れ・・・」
鬼丸は、架陰との間合いを一瞬で詰めてきて、架陰を凄まじい力でアスファルトの上に組み付した。
「っ!!」
右肩に、鬼丸の刀の刃が突き刺さる。
ズブッ!! とした感触と共に、激痛が彼を襲った。
「ああああっ!!」
「右腕は封じた。お前の利き腕だ」
「くそっ!!」
架陰は左手に魔影を纏わせる。
そして、架陰の上に馬乗りになる鬼丸の脇腹に、拳を叩き込んだ。
ドンッ!!!!
拳から放たれた衝撃波が、鬼丸を吹き飛ばした。
「ちっ!!」
鬼丸は舌打ちをひとつ打つと、体勢を整えて着地した。
「まずは、一発・・・」
架陰は右肩から血を流しながら立ち上がった。
右肩の腱を切断された。もう、腕は上がらない。
仕方なく、落ちていた刀を左手で拾い上げる。
「あんたに構ってる暇は無いんだよ・・・、さっさと倒して・・・、カレンさんを・・・、取り戻す!!」
その③に続く
その③に続く




