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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
356/530

叩き折るって言ったよね? その③

愛に勝るものを探して


体温の中を泳ぐ鳥たちは


薔薇の茨に傷つこうとも


脈打つ体液に焦がれて

3


架陰から距離を取った笹倉と唐草は、一度ビルの屋上に着地した。


「で、説明しろよ」


笹倉は、唐草が抱えているカレンを見ながら、改めて聞いた。


「オレたちの任務は、【市原架陰の誘拐】だぜ? それなのに、どうして、【城之内カレン】の誘拐に切り替わっているんだ?」


「ああ、笹倉・・・、分からないの?」


唐草は目を細めて、笹倉に心底軽蔑するような視線を送った。


これには笹倉も黙っていない。


ずいっと唐草の方に詰め寄り、彼の麻布の胸ぐらを掴んだ。


「てめぇ、舐めた口聞くなよ? 言っとくが、オレの方が先輩なんだからな?」


「もー、鬱陶しいなぁ」


唐草はハエを払うかのように、笹倉の腕を退けた。


一度、抱えていたカレンをアスファルトの上に横たえる。


「この娘は、【城之内カレン】だ」


「んな事分かってる。前回戦って返り討ちにあったんだからな」


嫌な記憶が蘇る。


前回の【市原架陰誘拐作戦】で、笹倉は、架陰を助けにきた城之内カレンと戦った。


そして、カレンの風を前に惨敗したというわけだ。


「まあ、そんなことはどうでもいいや」


「いや、良くないでしょ。僕も笹倉も、後で鬼丸さんにこっぴどく叱られたもん」


「その話はするなよ・・・」


嫌な記憶が蘇る。


脱線しかけていた話を元に戻し、唐草は目を閉じて気を失っているカレンの頬を撫でた。


「この娘・・・、多分、体内に悪魔を飼っているよ?」


「はあ?」


笹倉は声を裏返して反論した。


「バカ言ってんじゃねぇよ。悪魔を体内に宿しているのは、架陰だろ?」


「確かにそうだけど、語弊があるね。市原架陰に宿っているのは、【悪魔の魂】と、悪魔の依代となっていた【ジョセフ】の魂の融合体だよ」


「悪魔じゃねぇか」


「違うよ」


唐草は物分りが悪い笹倉にため息を隠せなかった。


「いいかい? 僕たちの王様が求めているのは、市原架陰の中に宿る【悪魔の魂】だ。悪魔本体じゃない。悪魔本体とは、【悪魔の魂】が、【悪魔の肉体】に宿っている状態のことを言うんだよ」


「そうだっけ?」


「そうなんだよ」


唐草は続けた。


「悪魔は一匹だけじゃない。複数匹存在するんだよ・・・」


唐草と笹倉は知らないが、四天王のスフィンクス・グリドールがその例だった。


彼もまた、体内に【下級悪魔】を宿して、能力及び身体能力の向上を行っていた。


悪魔とは、言うものの、生物学から言えば、【UMA】に分類されるものなのだ。


「前回のことを思い出してみなよ。僕達は、王様の復活のために、市原架陰を誘拐した。そして、市原架陰に取り憑いた悪魔の魂を、奪おうとした・・・」


「だけど、何故か奪えなかったんだよな?」


「うん。王様が言うには・・・、【ジョセフの魂が邪魔をしている】らしいんだ」


「ジョセフ・・・、ああ。市原架陰の中にいるもう一人の魂か・・・」


「だから、僕たちが今すべきことは、【ジョセフの魂の弱体化】だ」


指をピンッと立てて、そう宣言する唐草。


「この城之内カレンという少女には、悪魔が宿っている。本人は気づいていないみたいだけど・・・、同じく、体内にDVLウイルスを宿した僕は気づくことが出来たよ・・・。笹倉もそうだよね?」


「・・・、あ、ああ」


曖昧な返事をした。つまり、「気づかなかった 」ということだった。


「まずは、この少女の体内に宿った悪魔を【奪う】よ。そして、王様に取り込ませよう」


「そうしたら、どうなるんだ?」


「たぶん、王様は強くなれる。そうしたら、僕たちの計画を邪魔する、ジョセフの魂を弱体化させることができるはずだ・・・」


雨がザアザアと降る。


唐草は頬に張り付いた髪の毛を鬱陶しいそうに退けた。


そして、頭から血を流しながら気を失っているカレンを担ぐ。


「じゃあ、帰ろう。王様に献上するんだ」


「そうか・・・」


あまり理解できなかったが、笹倉はこくりと頷いた。


いざ飛び立とうとした時、背後から鉄火斎の飄々とした声が二人を呼び止めた。


「おーい!! 笹倉!! 唐草!!」


振り返ると、一代目鉄火斎がビルからビルへと軽快に飛び移りながらこちらに向かって来ていた。


「帰るんだろ? 笹倉。僕を抱いて飛んでくれよ」


「鉄火斎さん・・・、あんた、身体能力高いんだから、自分で移動できますよね?」


「釣れないなぁ。僕は君たちと違って人間なんだから、体力が持つわけないじゃないか」


「うーん、説得力がない」


笹倉はそんなことを言いながらも、一代目鉄火斎の脇に手を回して、がしりと抱えた。


「じゃあ、行きますよ」


「うん。頼んだ」


背中に生えたコウモリの翼を羽ばたかせて飛び上がる笹倉。


唐草も、自慢の脚力でビルからビルへと飛び移りながら着いてきた。


「それより、鉄火斎さん。市原架陰が装備していたあの刀って・・・」


「ああ。【叢雲】とか言ったかな?」


鉄火斎は、貼り付けたような笑みを浮かべていた。


心做しか、口調に怒りがこもる。


「ほんと、馬鹿な弟子を取ると大変だね」


「・・・、あの刀・・・、鉄火斎さんの弟子が打ったんですね」


「ああ。蒼弥って言うんだ。昔は可愛かったけど・・・、今じゃ、汚い刀ばっかり作っている」


「汚いんですか?」


笹倉は思わず聞いていた。


架陰が握っていた【叢雲】という刀。確かに、一代目鉄火斎が、打った【雷光丸】や、【雨之朧月】には劣ると感じたが、「汚い」とは思わなかった。


どちらかと言えば、一級品だ。


「汚いよ」


一代目鉄火斎はそう断言する。










「だから、今頃・・・、鬼丸殿が粉々に砕いているんじゃないかな?」










第106話に続く

第106話に続く

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