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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
354/530

【第105話】 叩き折るって言ったよね? その①

オレは約束を守る


言っただろ?


「叩き折る」って

1


架陰は走る。


アスファルトの上に溜まった雨水を蹴り飛ばし、滑っておぼつかない足元に力を込めて、駆け抜ける。


「オラあっ!! 逃げんなっ!!」


振り返れば、ガーゴイルの姿をした笹倉が追ってきていて、架陰の背中に向かって雷撃を放った。


「くっ!!」


架陰は身を反転させると、迫り来る雷撃に向かって、叢雲の黒龍をぶつけた。










ドンッ!!!!










黒龍が、雷撃をかき消す。


巻き起こる衝撃波で、雨が霧のようになり、二人の視界を奪った。


「はあっ!!」


霧が晴れた瞬間、笹倉が斬り掛かる。


振り下ろされた刃を受け止める架陰。


ずるっ!!と、足元が滑った。


「っ!!」


バランスを崩す。


その一瞬の綻びに勝機を見出した笹倉は、至近距離で雷撃を放った。


「雷光丸!!」









ドンッ!!!!










雷撃に吹き飛ばされる架陰。


空中で体勢を整え、屋上のフェンスに着地。


「くそ!! 滑って、上手く戦えない!!」


「その分、オレは飛べるからなぁっ!!」


ガーゴイルの姿になった笹倉は、下半身が無い。上半身だけで飛行する怪物だ。そのため、足元に広がる雨水の影響は皆無だった。


「オラオラッ!!」


連続して、雷撃を放つ。


架陰もまた、叢雲で空気中に黒龍を生み出すと、それを操って、雷撃の一つ一つを相殺して行った。


「オラッ!!」


雄叫びをあげた笹倉は、翼を羽ばたかせて、一気に曇天へと飛翔する。


「ちょっと、大技・・・行っときますかな!!」


空中から架陰を見下ろすと、刀の切っ先を墨汁を垂らしたかのように黒い空に向けた。


バチバチッ!! バチバチバチッッ!!


と、鋒に閃光が走る。


黄金に輝く雷撃が、その形を形成していって、刃の周りを取り巻く、一匹の龍になった。


「あれは・・・!!」


「行くぜ!! 【雷龍】!!!」


刀を振り下ろす。


それに連動して、雷撃によって作り出された雷龍は、咆哮を上げながら架陰に襲いかかった。


「っ!!」


まずい。


架陰は、フェンスを蹴って、隣のビルの屋上に飛び移った。


あれはまずい。


あの雷撃の塊をモロに喰らえば、架陰はタダでは済まない。


そんな気がした。


「距離をとる!!」


「とらせねぇよ!!」


笹倉は、刀を振り、雷龍を器用に操作した。


雷龍は逃げた架陰の背中を一直線に追いかける。


「追尾機能があるのか!!」


「お前の黒龍も同じだろうがよ」


逃げられない。


意を決した架陰は、振り返った。


「迎え撃つ!!」


刃に、魔影を収束させて、一本の大剣に変化させる。


魔影刀。


それを、雷龍に向かって一閃。


「【悪魔大翼】!!!」


刃から放たれた漆黒の斬撃。


大顎を開けて迫り来る雷龍を、頭から粉砕した。


「よし!!」


小さく拳を握りしめる架陰。


対して、笹倉はニヤリと笑った。










「【天理雷光】・・・」










その瞬間、空中に飛散した雷撃の粒子が、一斉に架陰に襲いかかった。


「っ!!」


架陰は咄嗟に、刀で払ったが、数が多すぎる。


「がっ!!」


雷撃が、架陰の身体を巻きついた。


心臓を直接殴られたかのような衝撃が架陰を襲い、息が詰まる。


「がはっ!!」


架陰は刀を落として、その場に跪いた。


(まずい!! 早く退けないと!!)


拘束具となって架陰にまとわりつく雷撃をとり払おうとするが、雷撃が架陰の運動神経を狂わせる。


力が入らない。


勝ちを確信した笹倉が、ニヤリと笑って、架陰の元へと降りてきた。


「【天理雷光】はな、一見攻撃技に見えるが、本質は【敵の拘束】。まんまと引っかかったな」


「くっ!!」


「さて、一緒に来てもらうぜ」


そう言って、架陰の頭に手を伸ばした。










その時だ。










「笹倉。作戦変更だ」











男の渋い声が、笹倉の動きを止めた。










架陰と笹倉は、声がした方向を向く。


そこには、二人の男が立っていた。


一人は、灰色の袴に、紺色の着物。その上に、白い羽織を羽織った、侍のような姿をした男。


笹倉が言った。


「鬼丸さん!!」


その隣の男は、浴衣を着て、下駄を履いている。肩までの髪は雨に濡れて頬に張り付いていた。ほうれい線の具合から、三十代くらいだろう。


「それと、鉄火斎さん・・・」


「やあ、久しぶりだね」


鉄火斎・・・、いや、一代目鉄火斎は飄々とした笑みを浮かべ、笹倉に手を振った。


「鬼丸さん、鉄火斎さん、どういうことですか? 架陰は、もう拘束出来ましたけど・・・」


困惑する笹倉に、鬼丸は言った。


「ああ。ご苦労。笹倉。しかし、都合が変わった。市原架陰の拘束は解いてくれ」


「え・・・、でも」


「大丈夫だ。解け」


「わ、分かりました・・・」


笹倉は腑に落ちない顔をして、架陰にまとわりついた雷撃を解除した。


自由になった架陰は、すぐさま刀を拾い上げ、鋒を三人に向けた。


殺気をむき出しにする架陰を見て、一代目鉄火斎は「おお、怖い」と、肩を竦めた。


それから、架陰の握っている刀を見て、「おや!」と言う。


「ねえねえ、市原架陰くん。もしかして、その刀・・・、蒼弥に打ってもらったのかな?」


「蒼弥・・・?」


誰だ?


「ああ、あいつ、君には名前を名乗っていないのか・・・」


合点したように頷く。


それから、こんなことを言った。










「改めて、自己紹介といこう。僕の名前は、【一代目鉄火斎】・・・」










ニヤッと笑う。










「その刀を打った男の・・・、【師匠】だよ」











その②に続く

その②に続く

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