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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
353/530

悪魔の巣食う女 その③

地獄の底を見た者が


踵を返すのと同じで


鬼を見た私は


天使の翼をちぎる

3


「マジかよ」


唐草から伝えられた事実に、笹倉は苦虫を噛み潰したような顔をした。


「こっちに、鬼丸さんと、鉄火斎さんが向かってんのかよ」


「どうしたの? 不満なの?」


「いや、なんか、オレたちの力信用されていないような気がしてな・・・」


「事実じゃないか。実際、さっきも君は市原架陰の誘拐に失敗してる」


「馬鹿野郎。失敗なんかしてねぇよ」


こればっかりは、認めるわけにはいかなかった。


「一時撤退だ」


「逃げたんだ」


「殺すぞ」


笹倉は、面白がってニヤニヤと笑っている唐草を睨む。できることなら、この減らず口を首ごと吹き飛ばしてやりたかった。


「とりあえず、街の周囲はUMAを使って占拠しているからな。この街には、UMAハンター以外は侵入出来ない」


「へぇ、君にしては用意周到じゃないか」


「ああ。だから、時間はたっぷりある」


笹倉は舌なめずりをした。


「幸い、ここには、市原架陰とカレンしかいない。オレとお前でかかれば、行けるさ」


「そうだといいんだけどね」


唐草がそう呟いた瞬間、どこからともなく「ドンッ!!!!」と、なにかが炸裂する音が聞こえた。


音に反応して、二人が振り返る。


ビルの影から、架陰とカレンが飛び出してきた。


「あっ!! いました!!」


架陰は、カレンをお姫様抱っこして、脚に魔影を纏わせている。


魔影脚の脚力で、ここまで跳んで来たのだ。


笹倉の顔がサッと青ざめた。


「あいつ!! もう追いついて来やがったのか!!」


唐草は思わず吹き出す。


「ねえ、どうするの? 奴さん、逃がしてくれないみたいだよ?」


「くそ!! 手伝え!! 唐草!!」


「ハイハイ」


慌てふためく笹倉とは対処的に、唐草はこの状況を楽しんでいた。


屋上のタイルの上に着いていた和傘をバサッと開く。


「じゃあ、僕はあの女の子を殺る。君は市原架陰を倒せ」


「おうよ!!」


市原架陰&城之内カレン。


VS


唐草&笹倉。


先手を取ったのは、架陰にお姫様抱っこされていたカレンだった。


そのままの体勢のまま、竜巻の槍を放つ。


「風神之槍!!」


竜巻の槍は、風に弱い笹倉の方へと飛んでいく。


瞬時に、唐草が笹倉の前に立った。


「行くよ【名傘・雨之朧月】」


広げた和傘で、竜巻の槍から笹倉を護る。


和傘の影から、笹倉が飛び出して、雷撃を纏った刀を一閃した。


「オラァ!! 【名刀・雷光丸】だぁ!!」


眩い雷撃が、亀裂のように交錯しながら架陰とカレンに迫る。


架陰は魔影を纏わせた脚を、雷撃にぶつけた。











「【魔影脚】!!!」











トンッ!!!


と、架陰の蹴りから放たれる衝撃波が、雷撃をかき消した。


「ちっ!!」


「もう、頼りないなぁ」


唐草が笹倉の横から飛び出す。


折りたたんだ傘を中段に構え、自慢の脚力で架陰との間を詰める。


流れるような動きで突いた。


「ぐっ!!」


傘の先端が、架陰の頬を掠める。


「ほら、隙が生まれた」


その隙を突いて、唐草の回し蹴りが架陰とカレンを吹き飛ばす。


二人は屋上のアスファルトの上を水切り石のように跳ねた。


これで、下ごしらえは完璧。


「ほら、二人は分断した、お互いの役割を果たそうね」


「わかってるよ」


二人は一斉に襲いかかった。


唐草はカレンへ。


笹倉は架陰へ。










「くっ!!」


カレンが頬に着いた泥を拭って顔を上げると、唐草がカツンカツンと、下駄を踏み鳴らして走ってくる。


「あらぁ。私の相手はあなたなのぉ?」


「そうらしいね!!」


強く踏み込む唐草。


ドンッ!!!!


と地面が撓み、蜘蛛巣状の亀裂が走った。


勢いを左脚に乗せて、カレンの頭蓋骨を砕こうと、強烈な蹴りが放たれる。


カレンはマッドマックスのように上体を仰け反らせて、その蹴りを間一髪で躱した。


「風神之槍」


返す手首で、竜巻の槍を放つ。


「っ!!」


唐草の視界の足元から竜巻が飛んできて、彼の顎を穿った。


「がはっ!!」


脳が揺れる。


強烈なアッパーを食らったボクシング選手のように、空中に投げ出される唐草。


カレンは目の玉をひん剥いてニヤリと笑った。










「ほら、死んでよ」











空中の唐草に、容赦なく竜巻の槍を放った。


唐草もまた、ニヤリと笑う。


和傘を開いて、竜巻から身を護った。


「へぇ、面白いね」


空中で体勢を整えて、カランッ!!と着地する。


対峙するカレンと唐草。


雨は一層強くなる。


「・・・・・・」


「なるほどね」


唐草は独り合点して頷いた。


和傘を閉じて、杖のように地面に着く。


「君・・・、体内に何か飼ってる?」


「あらぁ。なんのことかしらぁ?」


カレンは貼り付けたような笑みを浮かべ、追撃の竜巻を放った。


「風神之槍!!」


竜巻が、雨水を巻き込みながら、唐草に迫る。


唐草は「やっぱりね」と納得した。











「やっぱり、君、体内に悪魔を飼っているでしょ」











第105話に続く




第105話に続く

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