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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
352/530

悪魔の巣食う女 その②

茨を食む


頬に焼け付く


鮮血の流動

2


「おいおい・・・」


雨が降りしきる。


笹倉の頬から、冷や汗が流れ落ちた。


「まさか、本当に殺っちまうとはな・・・」


カレンの翼々風魔扇から放たれた突風は、二人を取り囲むUMAの群れを吹き飛ばし、壁に叩きつけて殺した。


躊躇が無かった。


壁にめり込んで息絶えるUMA達が、【元人間】であろうと、まるで羽虫を払うかのように殺した。


カレンのその行動の早さに、架陰でさえも息を呑んだ。


「・・・カレンさん?」


「架陰くん。躊躇はダメよォ」


カレンはニコニコとしながら、架陰の頭を撫でた。


「UMAが襲いかかって来たのなら、それがたとえ人間であろうと、殺しなさい」


「でも・・・」


「見てみなさいよぉ」


カレンは、ビルの壁にめり込んで死んでいるUMA達を指さした。


壁を雨水が伝い、彼らの血液がドロドロと道路の方に流れ込んでくる。


「あれは、UMAよ?」


「そ、そうですけど・・・」


「そして、彼も・・・」


カレンの冷たい瞳が、笹倉を見た。










「UMAよ」










その瞬間、カレンは不意打ちをかますかのごとく、翼々風魔扇を振った。


「【風神之槍】」


扇から竜巻の槍が放たれ、空気中の雨水を巻き込みながら笹倉の方へと迫った。


笹倉はすかさず、刀を振った。


「【名刀・雷光丸】!!」


刃から、黄金の雷撃が放たれ、カレンの竜巻と衝突する。


竜巻と雷撃。


二つの攻撃は、ぶつかり合い、相殺した。


「こいつ!!」


笹倉は一瞬で確信した。


(強くなってやがる!!)


竜巻の威力が増している。前回なら、押し勝っていたのは笹倉の方だ。


「はい、もう一発」


カレンは笑みを絶やさぬまま、追撃の竜巻を放った。


笹倉の刀、【雷光丸】は雷撃を放つことができるものの、連発をすることは出来ない。


「ちっ!!」


竜巻の槍が、笹倉の腹に直撃した。


突風に吹き飛ばされ、笹倉はビルの壁に叩きつけられた。


腰椎から首筋の骨がピシピシと軋む。


「がはっ!!」


「架陰くん、殺っちゃって」


「え」


「早くしてよぉ」


「あ、はい!!」


架陰は、刀に魔影を収束させると、虚空に向かって振り下ろした。










「【悪魔大翼】ッッ!!!」











名刀・叢雲の刃から、漆黒の三日月状の斬撃が放たれる。


そのまま、ビルの壁に叩きつけられて悶えている笹倉に迫った。


「くっそ!!」


笹倉は力を振り絞って、背中から生えたコウモリの羽を羽ばたかせると、その場から飛躍した。


間一髪で、架陰の斬撃を躱す。


悪魔大翼は、無人となったビルだけを粉砕した。


カレンは残念そうに唇を尖らせた。


「あらぁ、外しちゃった・・・」


「すみません」


「いいのよぉ。また、動きを止めればいい話だし」


そんな二人の様子を、笹倉は肩で息をしながら見下ろしていた。


腹の底から、ふつふつと怒りのようなものが湧いて出てきて、叫ぶ。


「てめぇ!! 何しやがる!!」


「何しやがるって・・・」


カレンはキョトンと首を傾げた。


「あなたを殺すのよ」


言った瞬間から、翼々風魔扇を振って、上空の笹倉に向かって竜巻の槍を飛ばした。


「こいつ!! 正気かよ!!」


笹倉は雷光丸の雷撃でそれを、吹き飛ばした。


このまま、架陰とカレンを相手に戦うのは分が悪いと判断した笹倉は、羽を羽ばたかせて距離を取る。


「くそ!! 一旦撤退だ!!」


計画が完全に狂った。


まさか、一度にけしかけた百体のUMAを、一瞬で一掃するなんて想像できるわけがない。


(どうする・・・!!)


歯を食い縛った時、眼下に広がるビルの群衆から、笹倉を呼ぶ声がした。










「笹倉ー!!」










はっとして、声がした方を見ると、ビルの屋上に誰かが立っていた。


女のようにサラサラとして長い茶髪。飄々とした顔。体型は痩せ型で、その上に麻の衣を纏っている。


そして、和傘を差していた。


「あの野郎・・・!!」


笹倉は舌打ちをして、その者を睨んだ。


彼は、悪魔の堕慧児の一人、【唐草】。


「おい! 唐草!!」


笹倉は罵声を上げながら、唐草の方へ寄って行った。


「お前!! どこにいたんだよ!」


「どこって・・・」


唐草は、悪びれることなく、肩を竦めた。


「そりゃ、この辺りを散歩していたんだよ。逃げそびれた人間を殺しながらね」


「てめぇ!! 俺はな!! あのカレンって女に殺されかけたんだぞ!!」


「へえ?」


面白がってニヤリと笑う唐草。


「なんで? 君が負けるはずがないのに?」


「知らねぇよ」


笹倉は唾を吐く。


「あいつ、容赦が無い。まるで悪魔だ!!」


UMAを、なんの慈悲も無く殺した。


「とにかく、架陰を誘拐するなら、まずあのカレンって女を引き剥がさないと無理だぜ」


「仕方ないなぁ・・・」


唐草は面倒くさそうに言った。


和傘を畳む。


「じゃあ、僕が市原架陰を襲撃するから、君はカレンちゃんの相手をしててよ」


「ダメだ。逆だ」


「なんで?」


「決まってんだろ。俺の能力【ガーゴイル】と、あの女の【翼々風魔扇】の能力じや、相性が悪い!! 前にもあれでやられたんだぞ!!」


「君が弱いのが悪いんだよ」


唐草は唇を尖らせた。











「でも、追撃は少し待った方がいい。鬼丸さんと・・・、一代目鉄火斎さんが、今こちらに向かってるからさ・・・」














その③に続く


その③に続く

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