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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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第15話 この青い空の下へと引き摺りだせ その②

この青空は君自身で


この雲は僕自信


ただ陽だまりの中


昼寝をしたいだけなんだ

2


地面から飛び出して、獲物を串刺しにしようとする触手をいくら斬ったところで、吸血樹本体へのダメージにはならない。


半永久的に触手は生えてくるのだ。


「まずは、吸血樹本体を、地中から引きずり出すところからだ!」


班長響也の声を皮切りに、カレンとクロナが動き出す。


クロナが二丁拳銃を構え、引き金を引いた。


「W-Bullet!!」


ドンッ!! と火花が弾ける。空間を裂きながら鉄の玉が発射された。触手に命中すると、触手の先端が血飛沫を上げて吹き飛んだ。


「とりあえず、斬っていくか・・・」


吸血樹を地面に引きずり出す方法が分からない以上、やるべきことは自己防衛のための戦いだ。


響也は、ひとまず次々と地面から飛び出して襲ってくる触手を斬っていくことにした。


「二の技・・・」


上体を捻って力を溜める。


そして、踏み込んだ右脚を軸と定めると、一気に解放した。


「旋刈り!!」


The Scytheの刃がS字の斬撃を描いて、二本の触手を斬り裂いた。


立て続けにカレンが翼々風魔扇を扇ぐ。


「風神之鉄槌!!」


圧縮された空気の塊が、三本の触手を薙ぎ払った。


だが、また地面から触手が生えてくる。


「くっ・・・」


クロナは歯ぎしりをした。


「一体、どうすれば・・・」


うねうねと蠢く触手の数は三本。斬り裂くことは難しくない。だが、斬ったところで無駄な体力の消耗になる。


苛立ちを込めて、クロナは引き金を引いた。


「いつまでも地面の中に隠れてんじゃないわよ!! この卑怯者!!!」


弾丸の一発が触手を吹き飛ばした。


響也がThe Scytheを構えて走る。


「一の技・・・」


だが、踏み込んだ足に微弱な振動を感じ取る。


「!?」


本能的に回避体勢をとる。案の定、響也の足元から触手が飛び出した。


「っ! 地雷みたいに!!」


「響也!!」


仲間のピンチに、すぐ様カレンが翼々風魔扇を振った。今度は、空気に扇子を捩じ込むように、鋭く、速く。


「風神之剣!!」


ヒャンッ!!と空気が鳴いて、風の刃・・・、カマイタチが飛び出す。


「!!」


触手を切り裂いた。


突風のサポートしか受けていなかった響也は、カレンの放った一撃に目を丸くした。


「お前の扇子・・・、斬撃も飛ばせるのか!?」


「えぇ。集中力はいるわよぉ」


カレンは触手から距離を取ったまま扇子をパタパタと振った。その小さな動作だけでも、旋風が巻き起こっていた。


(さすが・・・、【能力武器】ってところだな・・・)


気を抜いている暇は無い。響也の背後から、二本の触手が迫った。


「響也さんっ!!」


クロナがW-Bulletを構えた。


示し合わせたように、響也が頭を下げる。


同時に発砲された弾の弾道が、響也の頭上を掠め、二本の触手を撃ち抜いた。


「ナイスだ。クロナ・・・」


響也は聞こえないようにため息をついた。








3


脇腹の傷口が、更なる熱を持って疼き始めた。架陰は思わず呻き声をあげた。


「ううっ・・・」


「架陰さん?」


心配した美桜が架陰に駆け寄る。


先程まで動き回っていたということもあるが、架陰は異常な程の脂汗をかいていた。


「ごめん、しばらく寝させてくれ・・・」


架陰は苦痛に顔を歪めながら、ふっと目を閉じた。


美桜には、それが死んだようにしか見えなかった。


「架陰さん!?」


思わず架陰の肩を揺さぶる。


反応は無い。眠ったと言うよりも、気絶に近かった。


今、回復薬が正常に作用して、架陰の身体の傷を治している。クロナの言う通り、あと、30分程で全快するだろう。


「うう・・・、くっ・・・、ああ・・・」


黒い渦に巻き込まれていく。


高熱を出した時に、たまに見る悪夢。


またしても、架陰はあの男のいる夢の世界へ迷い込んでいた。


(やあ、架陰。今日は二回目だね)


「どうも・・・」


暗闇の中に立った架陰は、ぺこりと頭を下げた。


(さっきは邪魔されちゃったね・・・、もう少しだったのに・・・)


男の表情は相変わらず読めない。だが、口調は楽しんでいるように聞こえた。


「それで、どうするんですか?」


架陰は警戒を込めた声で言った。


男が首を傾げる。


(何を?)


「僕は、こんな所にいるべきじゃない。一刻も早く皆さんと元に戻らないと・・・」


男が闇を泳ぐようにして架陰との距離を詰めた。架陰に顔を近づける。外国人のような金色の瞳がコロンと蠢いた。


(君が、そんなことする必要あるのか?)


ゾクリとする。


(君の中から見させてもらったよ。ハッキリ言って、君は弱い。君があの三人に加勢したところで、勝率は数パーセントしか変わらないよ・・・)


しかも、下がる方。と、男は付け加えた。


「じゃあ、どうしろって言うんですか?」架陰は怒鳴った。「僕に、このまま死んでいけと?」


どんどん口調が強くなっていく。自分の弱さを、現実がありありと映し出しているようで情けない。恥ずかしい。けれど、どうすることも出来ない。


男は人差し指を自分の唇に当てて、「静寂」を促した。


(そんなこと言うわけないだろ・・・。僕は、君が大好きなんだ・・・)


「・・・・・・」


架陰は思わず押し黙った。


一体、この男の目的はなんなんだ・・・!?






その③に続く

その②に続く

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