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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
345/530

名刀・叢雲 その②

墨汁の雨に唐傘を差して


絹の光を待っている

2


「機能は上々」


架陰が名刀・叢雲の能力を使いこなしている様子を見て、二代目鉄火斎は満足気に頷いた。


これはあくまで「試し斬り」。


架陰と鉄火斎の強さの優劣を決めるためのものでは無い。


「じゃ、どんどん行こうぜ」


鉄火斎はそう言うと、刀の鋒に炎を集中させた。


それを、フェンシングの要領で前方に突き出す。


「【火炎・貫】!!」


炎が、円錐型の槍のような形と化して架陰目掛けて放たれた。


架陰はすぐさま、空中を漂う魔影を集結させて、虚空に黒龍を形作った。


「【黒龍】!!!」


刀で遠隔操作して、黒龍を炎に向かって放つ。









ドンッ!!!










爆発が巻き起こり、赤い火花が四方八方に弾け飛んだ。


砂埃が舞い、視界が悪くなる。


鉄火斎は気配を消すと、下駄の音を立てずに、低い姿勢のまま架陰に斬りこんだ。


「っ!?」


死角から襲いかかってきた鉄火斎に気づき、架陰は半歩引きながら刀を構える。


そこに、鉄火斎が切り上げた刃が衝突した。









キインッ!!









と、心地よい金属の音が響く。


「くっ!!」


「いい音だ!!」


鉄火斎の刀に殺意は無い。


自分の作った刀が、架陰によって使いこなされ、架陰の戦闘の手助けをしているという事実に酔いしれ、嬉々としながら刀を振り続けた。









キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!









激しい剣戟を繰り広げる二人。


それを傍から見ていたクロナは、思わず「凄いですね」と隣のアクアに洩らしていた。


「架陰はUMAハンターだから当たり前ですけど・・・、あの二代目鉄火斎・・・、ちゃんと架陰の斬撃に追いついています・・・」


「そうね・・・」


刀匠であるのが勿体ない。


直ぐにUMAハンターになって、UMAと一戦交えても総戦力になりそうな位の腕をしていた。


「当たり前だろ!!」


クロナの声が聞こえたのか、鉄火斎はそう叫んだ。


叫びながら、架陰と刀の刃をぶつけ合って行く。


「師匠に散々叩き込まれたんだ!! 戦うすべを!! 刀を打つ方法を!!」


刀から炎が発せられ、架陰の叢雲の刃と激突した瞬間、鋭い音と光と共に爆せた。










ドンッ!!!








「くっ!!」


風圧に押し込まれて、後ずさる架陰。


その隙に、鉄火斎は追撃を加えた。


「【火炎・斬】!!」


炎を纏った刀。


魔影を纏わせた刀で受け止める。


そして、衝撃波を発生させて吹き飛ばした。


しかし、鉄火斎は空中で器用に身をこなすと、背後の岩場の上に着地した。


「なかなかやるな・・・」


ペロリと、唇の端から垂れた血を拭う。


オレの打った名刀・叢雲の硬度もさることながら、架陰の剣術もさながらのものだった。


「もう一発、行くぜ!!」


刀に炎を纏わせると、交戦で荒れた地面を踏みしめて架陰に襲いかかる。


架陰は一度黒龍を解除した。


「行くよ!!」


形が崩れ、ただの魔影となった黒いオーラが、刃にまとわりつき、大剣となった。


「【魔影刀】!!!」


その瞬間、架陰はハッとした。


今、架陰は魔影を刀に纏わせた。


刀に纏わせることで、その部分が大幅に強化され、威力が増すからだ。


「これは!!」


架陰は普段、【想像力】を使って魔影を操っている。


魔影を「犬の形にしたいな」と思い念ずれば、魔影は収束して形を変えて、犬の形になる。だが、それにはかなりの想像力が必要なのだ。


無論、架陰が刀に魔影を纏わせたり、足や手に魔影を纏わせる時も同様だ。


それなりに、想像力を使うのだ。


だが、今さっき架陰が作り出した【魔影刀】は、その想像力をほとんど使わなかった。


魔影を刀に纏わせたい。


そう思っただけで、魔影は動き、架陰の刃に纏わりついた。


「オラアッ!!」


ぼーっとしている架陰に向かって、鉄火斎が刀を振る。









ギンッ!!










受けきることが出来ず、吹き飛ぶ架陰。


(そういう事か!!)


やっと合点が行った。


やられたらやり返す。とでも言うように、空中で身を捩り着地。


それから、再び魔影を刀に纏わせた。


「叢雲は、魔影石から作られたから、魔影を吸着しやすいのか!!」


これはありがたい能力だ。


今までに、架陰は集中力が切れると、直ぐに魔影を解除してしまう欠点があった。


磁石のように。


こちらが強く望まなくとも、簡単に纏わりつく刀の能力は、それを課題としていた架陰にとって小躍りしたくなるほど嬉しい力だった。


「鉄火斎さん!! ありがとうございます!!」


「あたぼうよ!!!」


鉄火斎が、刀に炎を纏わせて斬りこんでくる。


架陰もまた、この【名刀・叢雲】と言う最高の武器を作ってくれた刀匠に感謝して、刀を一閃した。













その③に続く

その③に続く

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