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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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新たな刀を その③

黒龍の背中に乗って


滝を登る我の背には


銀翼の鱗が生え揃い


眼科の鯉共に餌付けをす

3


それから三週間、架陰、クロナ、アクアは、鉄火斎の家で過ごした。


その三週間の間、鉄火斎は隣の工房に籠りきりで、ひたすらに溶けだした鋼を叩き、そこに魔影石を練り込むという作業を繰り返していた。


一度、架陰が工房を覗こうとしたのだが、「てめぇ! 入ってくんなっ!!」と包丁を投げつけられたという。


山の中には、カーン、カーンと、金属を打つ音が響き続けたのだった。











そして、三週間が経った頃。


「ああー」


居間に寝転がったクロナが、腹の底から退屈そうなため息をついた。


「一体どれだけ時間がかかってんのよぉ・・・」


最初の頃は、「自然でも楽しむか」といった感じで、山の中での暮らしを堪能していたクロナだが、五右衛門風呂をいちいち沸かさなければならなかったり、食材を採取しに行ったりと、自給自足の生活に飽き飽きしていた。


架陰は架陰で、この生活に順応した。


その日も、山菜をたらふく採って帰ってきた。


「クロナさん、今日はこんなに山菜が採れましたよ」


「肉が食べたい」


「イノシシでも狩りに行きますか?」


「無理」


べシャリと顔を床に押し付けるクロナ。


うつ伏せになってバタバタと暴れた。


「アーンもう、早く帰りたい!」


「埃が立つのでやめてください」


架陰は山菜を入れた籠を床に下ろすと、せっせと食べれる部分と食べられない部分に分けていく。


「って、アクアさんはどこに?」


「アクアさんは五右衛門風呂沸かしに行ってる。あの人凄いよ。【水】の能力で、簡単に綺麗な水を出せるんだから・・・」










その瞬間、玄関の引き戸が勢いよく開いた。


ズカズカと、顔を泥まみれにした鉄火斎が入ってくる。


熱が発せられるところに長時間居たために、彼の身体中は真っ赤になっていた。


喉がかわいているのか、声が枯れている。


絞り出すように言った。


「出来たぞ・・・ 」


「出来た?」


「ああ。刀が、出来たぞ・・・」


「えっ!!」


架陰は山菜をぽとりと落とすと、目を輝かせて立ち上がった。


「本当ですか!!」















架陰とクロナは外に出た。


工房から、鉄火斎が刀を携えて戻ってくる。


「おらよ。これがお前の新しい刀だ」


そう言って渡されたものを、架陰は両手で受け取った。


全長は、名刀・赫夜よりも、若干長くなっている。


そして、赫夜には無かった装飾が施されていた。


架陰の沸き立つ魔影をイメージした、流線型の鍔に、深みのある紫色の柄紐。鞘はシンプルに黒塗り。そして、漆で艶やかに塗装がされている。


「ぬ、抜きますよ」


「おう、抜けや」


鉄火斎は目をギラつかせて頷いた。


そっと刀を抜く架陰。


鍔と鞘の隙間から、紫電の光が洩れだした。


「これは・・・!!」


一気に引き抜く。


その瞬間、辺りの空気がピンッと張り詰めた。


「凄い・・・!!」


深淵からやってきたような、深みのある紫色をした刃。見ているだけで、何かが表面から溢れ出し、その身を切り裂くようだった。










「命名、【叢雲】だ」











「叢雲か・・・」


「使い方を説明するぞ。よく聞いとけ」


「はい」


「まず、そいつは【能力武器】であり、【領域系】の分類に入る」


「領域系?」


初めて聞く言葉だ。


鉄火斎は一から十まで説明した。


「ああ。見たことないか? 地面に刃を突き刺して戦うUMAハンターを」


「あ!」


覚えがあった。


ハンターフェスの時に、百合班の三席であった【篠原葉月】の姿が頭を過ぎる。


彼女は、【名刀・葉桜】を地面に突き立てて、地中の木の根を操っていたのだ。


「能力武器には、二種類がある。一つは、武器本体から能力を発動する【出力系】の武器」


クロナが「私の黒鴉は出力系ね」と言った。


「そして、地面に刃を突き刺して、地の利を利用した戦いをする武器を【領域系】と言うんだ」


「それが、僕の叢雲なんですか?」


「ああ。試しに、叢雲の刃を地面に突き立ててみろ」


「はい」


促されるまま、架陰は地面に紫の刃を突き立てた。


その瞬間、刃から地面へ影のようなものが広がり、架陰の周囲を覆った。


「これは・・・、魔影?」


「そうだ。今、叢雲はお前の【魔影】の能力を吸収して、地面に広げたんだ」


「なんで?」


「まあ聞け」


結論を早まる架陰に、鉄火斎は舌打ち。


「叢雲の能力は、【魔影拡大】だ。魔影の欠点である、何かに纏っていないと真価を発揮しない。を克服した刀だな」


試しに、架陰は地面に染み込んだ魔影に命令を与えてみた。


ズブズブと、地面から魔影が湧き上がり、空中で固まる。形状を変形させて、【一匹の黒龍】に変化した。


「これは!!」


「センスあるな。そうだよ。今まで、魔影は腕や刀に纏わせないと威力が出なかっただろ? だけど、叢雲の能力を発動させている間は、何にも纏わせなくても威力を出すことができるんだ」


そういうと、二代目鉄火斎は、パチンと指を鳴らした。


そして、架陰に向かって手招きをする。


「どうだ? 試し斬りに、オレと手合わせしないか?」












第102話に続く



第102話に続く

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