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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
336/530

見えない攻撃 その②

道端の草になど足は止めない


植え込みの薔薇に心惹かれる

2


(一体どういう事?)


クロナは、目と鼻から垂れる血液を着物の袖で拭った。


大した出血では無い。少し擦るだけで止血が出来た。


気にするべきは、「何故出血したのか」だった。


今、架陰とクロナが交戦している【モスマン】は、目撃例、戦闘例共に少ない未知のUMA。一応【Aランク】と位置づけられてはいるものの、それ以上かもしれない。


クロナは記憶を辿る。


クロナの兄、雨宮黒真が残した資料には、こう書かれていた。










【モスマン】・・・体長二メートル程。全身を毛に覆われ、背中には蛾のような羽が生えている。モスマンが現れる時には、必ずモスキート音が聞こえる。歳を取った人間には音を捉えることが出来ず、奇襲を受けて死亡する可能性あり。モスマンの放つ衝撃波のようなものを食らうと、身体の血管を潰されて出血する可能性あり。特に、眼球や鼻の粘膜をやられる。










この出血は、その衝撃波による追加効果だと見て間違いない。


だが・・・。


(どうして、架陰は出血していないの?)


まず、二人は衝撃波を回避したはずだった。それなのに、クロナだけが出血。


(・・・、出血の基準は、【衝撃波】以外にあるの?)


そこまで考えを巡らせた時、クロナは上空に気配があることに気がついた。


「架陰!!」


架陰の手を引いて、その場から飛び退く。









ドンッ!!!!










二人が立っていた地面が粉砕して、土煙が上がった。


上を見れば、モスマンが静かに羽ばたきながらこちらを見ている。


「あいつ!!」


「あんなところに!!」


キリキリと、再び金属を擦り合わせるような音が聞こえた。


この予備動作の後に、モスマンは衝撃波を放つ。


「架陰!! 来るわよ!!」


「はい!!」


衝撃波の幅は狭い。タイミングさえ合わせておけば、簡単に躱すことができた。









しかし。










「今だ!!」


モスマンが衝撃波を放つ瞬間に、左右に跳んで回避する二人。


確実に躱した。


はずなのに。


「えっ!!」


架陰の眼球から、どろりと血の涙が流れ出した。


もれなく鼻からも血が流れる。


(今度は架陰から出血!?)


(衝撃波は確実に躱したのに!!)


その瞬間、空気が揺れた。











ギンッ!!!











空気を切り裂くようにして、静かに襲ってきたモスマンの突進を、何とか防ぐ架陰。


攻撃をいなされたモスマンは、羽根を羽ばたかせて、直ぐに上空に逃げた。


「あいつ!! 近接もできるのか!!」


「架陰、油断しちゃダメよ!!」


「わかってます」


バサバサと羽ばたきながら、こちらの様子を伺うモスマン。黒い眼球がキロキロと蠢いていた。


クロナは、黒鴉を構えて、何時でも【明鳥黒破斬】が放てる準備を整える。


上空のモスマンと、目から血を流す架陰を見比べた。


(このUMA、未知すぎる・・・!!)


吸血樹の時もそうだったが、UMAと戦う際には、ある程度、予備知識を参考にする場合が多い。このUMAはこう戦うべきだ。このUMAのこの攻撃に注意すべきだ。と。


だが、このモスマンは、違う。


分からないのだ。どうやって、攻撃を仕掛けて来るのかが。


「衝撃波に乗り遅れる当たらなくても、出血をしたってことは、衝撃波以外に何かをしている。ということ。一体なんのために? あの出血は何か意味があるの?」


考えていてもモスマンは襲ってくる。


クロナは、舌打ちをして、刀を強く握りしめた。


彼女の握力に反応して、【名刀・黒鴉】が能力を発動する。


ドクンドクンと、刀全身が脈を打つ。黒い刃の表面が泡立ち、そこから無数の羽根が生えた。


一枚の翼に変化した【黒鴉】を、上空のモスマンに向かって一閃する。










「【明鳥黒破斬】!!!」











振った時の衝撃で、刃から生えた硬質化羽根が一気に射出される。


無数の羽の雨が、モスマンを襲った。


しかし。


羽は、モスマンだけを避けるようにして軌道を変換し、青い空へと吸い込まれていく。


「なっ!!」


これには、クロナも顔を青くする。


「命中しなかった!?」


「クロナさん!!」


架陰も、また、黒い斬撃を放つ。










「【悪魔大翼】!!!」









赫夜から放たれる、三日月型の斬撃。


触れたもの全てを切り裂き、抉りとるその強力な一撃は、一直線にモスマンに迫った。










しかし、それすらも軌道を変えて、モスマンの横を通り抜けていった。


「当たらない!!」


モスマンが鳴く。


「キイッイッ!!」


その瞬間、二人は、頭上から降ってくる拡散型の衝撃波により、地面に叩きつけられていた。


「がはっ!!」


「ううっ!!」


遅れて、二人の鼻と目から、どろりと血が流れる。











(くそ、モスマンは何をしているんだ!?)











その③に続く

その③に続く

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