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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
333/530

モスマン その②

悪魔といえど


翼を持っているのなら


雄大な世界を知っている

2


「ってか、あんた、本当に刀を壊しすぎでしょ」


山の中を歩きながら、クロナが言った。


「まず、支給品の【鉄刀】をバンイップとの戦いで折っている。そして、その後に鉄火斎さんが打ってくれた【赫夜】もハンターフェスで砕かれた」


「いや、はい。もう、何も反論できませんよ」


クロナの刺々しい言葉に、架陰はみるみると小さくなっていった。


「借りた【赫夜】も折らないでよ」


「折りませんよ」


その後に、「多分」と付け加える。


すかさず、クロナの手のひらが飛んできて、架陰の頭を叩いた。


「もっと刀は大切にしなさい!!」


「はい・・・」


「私はこの刀はある訳にはいかないのよ」


クロナはそう言って、腰に差した【名刀・黒鴉】の黒色の柄紐に触れた。


確か、クロナの愛刀は、今は亡き兄から譲り受けたものだ。つまり、形見。


「だから、大切に使っている。お兄ちゃんのことを思いながら、いつも振るっているわ」


「・・・・・・」


「何よ。辛気臭い顔してさ」


「いえ」


架陰は首を横に振った。


そして、再び前を向く。


今までに、架陰達は様々な山に踏み入って探索をした。そして、UMAを倒してきた。


ローペンと戦った時も山の中。


リザードマンと戦った時も山の中。


そして、白蛇と戦った時も山の中だった。


山の中は、生き物が姿を隠しやすい。つまり、UMAも多く生息しているということ。


「どう思う?」


クロナが、飛び出した木々の枝葉を刀で切り落としながら言った。


「鉄火斎さんのこと」


「どう思うって・・・、どういうことですか?」


「だから・・・、【信用なるか】ってことよ」


「信用していないんですか?」


「そういう訳じゃないけど、あの子、まだ十五歳って言ってたじゃない。そんな子が、刀を造れると思うの?」


「でも、見ましたか? クロナさん」


「何を?」


「あの、住居と、工房ですよ」


「ああ、見たよ」


確かに、二代目鉄火斎の身の回りのものは、【刀匠】と呼ぶにふさわしいもので埋め尽くされていた。


今までに造ったと思われる刀はもちろん、刀を造るために必要な鉱物や、鉄槌などがガラクタのようにあった。


工房は見ていないが、煙突から煙が出ていたということは、作業の途中なのだろう。


「でも、確かに不思議ですね」


架陰は腰の刀に触れる。


「どうして、幼い頃から『刀匠になろう』って思ったのでしょうか・・・」


「さあね。だけど、私がお兄ちゃんに憧れてUMAハンターを目指したのにも似ているのかも」


「・・・・・・」


その時だった。











架陰とクロナの耳に、「キーン」という音が届いた。


身体を震わせ、足を止める二人。


反射的に、刀の柄に手をかけた。


「ねえ、架陰・・・」


「はい。いまさっき、聞こえましたね」


鉄火斎が言っていた、「ローペンの死体が見つかる前には、必ず、モスキート音が響く」というものに酷似した状況だ。


再び、音が響く。










キーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーンキーン











聞こえる。確かに聞こえる。


耳の奥を直接刺激するような、高音。


聞くだけで猫も烏も嫌な顔をしていなくなる音。


「だけど・・・!! どこから聞こえるんだ!?」


分からない。


このモスキート音がどこから響いて来るのか、二人には識別することが出来なかった。


「とにかく、すぐ近くになにかがいることは確かね。探すわよ!!」


「はい!」


クロナと架陰は、同時に走り始めた。


普段から鍛えている強い足腰で、山の急斜面を駆け上がる。


二人が走っている間にも、呼吸音と足音に紛れて「キーンキーン」とモスキート音が聞こえた。


しばらく走った時、架陰とクロナは音に加えて、「臭い」を感じ取った。


「架陰!!」


「はい。血と腸の臭い!!」


走れば走るほど、喉の奥から鼻の先にまで、噎せ返るような臭いが漂っている。


込み上げてくる吐き気に耐えながら、架陰とクロナは走った。


そして、見つけた。


「いた!!」


と言っても、時すでに遅し。


茂みの中に横たわっていたのは、巨鳥ローペンの死骸だった。


今しがた殺されたばかりで、首が落とされ、腹が裂かれて内臓を持っていかれている。地面に広がった黒い血溜まりからは、微かに湯気がたっていた。


「くそ、一歩遅かったわね」


クロナは舌打ちをして、ローペンの死骸に歩み寄る。


その瞬間、奥の茂みからガサゴソとなにかが蠢く音が響いた。


「っ!!」


身構える二人。


茂みから、ローペンが翼を羽ばたかせて飛び出してきた。


「クロナさん!! 下がって!!」


架陰はクロナを背後にやると、鋭い嘴をもって襲いかかってくるローペンに向かって刀を振った。









「【名刀・赫夜】!!!」










ローペンの首はあっさりと切断され、地面に転がった。


(ローペン・・・!? こいつがモスキート音を出していたのか?)










その③に続く

その③に続く

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