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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
332/530

【第98話】 モスマン その①

追い払うのは子猫


寄せ付けるのは猛獣


喰らうは化け物の腸

1


「一応、戦闘服は用意してるから」


アクアはそう言って、持っていたカバンの中から、二着の着物を引っ張り出した。


一着は架陰のもの。


もう一着はクロナのものだ。


「用意周到ですね・・・」


「当たり前。総司令官だもの」


架陰とクロナは、自分の戦闘服を受け取った。


前回の戦いで、かなり血みどろになっていたが、しっかりと染み抜きがされている。


「架陰。絶対に着替え見ないでよ?」


「え、わかってますけど?」


「何その言い方」


架陰と鉄火斎を玄関の方に向かせている間に、クロナは着物に着替えた。


桜の紋様が入った羽織を纏い、腰帯をしっかりと締め、そこに刀を差す。これで準備完了だった。


「着替えれたわ。見ていいわよ」


「じゃあ、次は僕が着替えますね。クロナさん。向こう向いててください」


「いや、あんたはいいでしょ」


「え?」


隣で架陰が着替えているのを横目に見ながら、クロナは鉄火斎に聞いた。


「で、そのUMAは、どんなやつなんですか?」


「さあな」


鉄火斎は素っ気なく首を横に振った。


「オレも、UMAの姿をはっきりと見たわけじゃない」


「じゃあ、どうしてそのUMAの体内に【魔影石】があるってわかったんですか?」


「この魔影石は・・・、【ローペン】から採集したものだ。だけどな、この山には、その【ローペン】を捕食するやつがいるんだよ」


「ローペンを、捕食?」


架陰が食いつく。


ローペンと言えば、架陰が初めての任務の時に戦ったUMAだ。死体を好んで食らい、飛行術に長けた翼竜。


「ああ。ここ最近、そのローペンを食ってるやつがいるんだ。山に出れば、至る所に、食い尽くされたローペンの死体が転がっている。どれも似たような殺され方でな。オレは、同じUMAが殺ったのだと思ってるよ」


「そのUMAを、狩ればいいのか・・・」


架陰も準備を終えた。


羽織を纏い、腰帯を締め、そこに、先程鉄火斎から借りた【名刀・赫夜・プロトタイプ】を差した。


「恐らく、そのUMAからなら巨大な【魔影石】が採集できるとオレは睨んでる、【生物濃縮】って言葉があるだろ? ローペンの体内からこれだけ小さな魔影石が出てきたってことは、そのローペンを食らったUMAの体内からはもっとでかい魔影石が出るはずだ」


「そのUMAを見たことがないんですね?」


「ああ。だけど、鳴き声なら聞いたことがある」


「鳴き声?」


「あまり、再現できるものじゃなかったな。例えるなら・・・、【猫避け】があるだろ? あの、近くを通ったらセンサーが作動して、『キーン』って鳴るやつ」


曖昧な言い方だったが、架陰とクロナとアクアは十分理解した。


「モスキート音みたいなものですか?」


「そう。それだ。耳の奥に直接響いてくる感じ。それを聞いたあとは、必ずどこかで【ローペン】が死んでいるんだよ」


「うーん」


モスキート音を発するようなUMAは、今までに倒したことがなかった。


架陰は、アクアに聞いていた。


「あの、知りませんか? なにか・・・」


「そうねぇ」


アクアは腕を組んで考える。


「音を発するUMAは沢山いるわ。私も、今までに沢山戦っていた。だけど、【モスキート音】だけじゃ、どのUMAか・・・」


「そうですか」


「とにかく。行ってみるしかないってことね。ほら、行くわよ。架陰 」


クロナはやけに意気込んで立ち上がった。


つかつかと玄関の扉に向かうクロナを、架陰は追いかけた。


「あ、待ってくださいよ。クロナさん!」


慌てて出ていく架陰を、鉄火斎は引き止めた。


「おい。待て!!」


「な、なんですか?」


「とりあえず言っておくが、この任務は【絶対】じゃない。あくまで、【魔影石】を獲るため。お前の刀を造るためだ。無理ならそれでいい。お前は新しい刀を手に入れることが出来ないだけだからな」


「・・・・・・」


重要性の無い任務。と、鉄火斎は言いたかった。


その謎のUMAは、ローペンを食らうだけ。人間に実害が出ているわけでもない。


あくまで、架陰の新しい刀を造るため。


「わかってます 」


架陰は力強く頷いた。


外に出たクロナが「ほら、早くしなさいよ」と急かした。


「じゃあ、行ってきます。アクアさん。鉄火斎さん」


「うん。気をつけてね。私はここで待たせて貰うから。なにかあったら、トランシーバで連絡して」


「はい!」


架陰は勢いよく外に飛び出して行った。


先を行くクロナに駆け寄る。


「行きましょう!! クロナさん!!」


「言われなくともわかってるわよ」


相変わらず、クロナは不機嫌そうに頷いた。


「今回は、私と架陰の二人で挑む任務。敵のUMAの素性も分からないから、警戒していくわよ 」


「はい。気をつけます」


二人は、木々が鬱蒼とする山の中へと足を踏み入れていった。












その②に続く

その②に続く

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