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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
327/530

新章・二代目鉄火斎編開幕 その③

刀匠の誇りを胸に


進むは


鋼鉄の時代

3


ぱちぱちと火花が弾ける囲炉裏を取り囲んで、アクア、架陰、クロナは座った。


「おらよ」


目の前の少年が、陶器の湯のみに緑茶を注ぎ、三人に出した。


「ありがとう」


「ありがとう」


「ありがとう」


三人同時に受け取り、三人同時に啜る。


「あ、意外に美味しい」


クロナが率直な感想を洩らすと、男の子は目を釣りあげてクロナに食ってかかった。


「おい、アマ。どういう意味だ? オレの淹れた茶が不味いわけないだろ?」


「いや、うん。すみません」


「なんたって、山の中で採れた茶葉を使ってるからな!!」


怒ったり得意げになったり。情緒が不安定な男の子だった。


男の子は、囲炉裏の前で足を崩して座ると、「で、なんの用だよ?」と、三人の来客に尋ねた。


「ああ、そのことなんですけど・・・」


架陰はようやく本題に入った。


学ランのポケットから、布に包まれたものを取り出し、男の子・・・、自称【二代目鉄火斎】に手渡した。


「ん? なんだこれ?」


二代目鉄火斎は、首を傾げながら、布を剥ぎ取った。


勢いよく開いたために、中のものが床の上にゴトッと落ちる。


それは、【名刀・赫夜】の柄だった。


「おう・・・、これは・・・」


鉄火斎はそれを拾い上げる。


すうっと彼の顔から血の気か引いた。


と思えば、直ぐに真っ赤に染まる。


「おいてめぇ、これは一体どういうことだ?」


「つまり、そういうことです」


「よく見ろやぁ!!」


架陰に、折れた刀を突き出す鉄火斎。


「おい!! どうした!! 刀身はどうした!! どこにやった!!」


「ここにあるわよ」


今に架陰に殴り掛かろうとする鉄火斎に、アクアが布の包みを渡した。


もちろん、布の中には、粉々になった刃があるだけだ。


「おいこら!! これはどういうことだよ!!」


「つまりこういうことです」


「折れてんじゃねぇか!!いや、砕かれてるじゃねぇか!!」


「そういうことです」


「ああクソ!! まじかよ!! なんで壊すかな? これはオレの力作だったんだぞ!? 【名刀・赫夜】!! オレが心血注いで造った最高の刀だぞ!!」


「すみません・・・」


架陰は何も反論が出来ぬまま、頭を下げた。


その頭を、鉄火斎は鷲掴みにして上下に揺さぶった。


「てめぇか!! てめぇがオレの刀を折りやがったのか!!」


「はい・・・」


正確には、スフィンクス・グリドールに折られたのだが、架陰の未熟さ故とも言うべきだった。


架陰では話が先に進まないと思ったのか、アクアが二人の間に割って入った。


「それで、【二代目鉄火斎】さん。あなたに、市原架陰の新しい刀を打ってもらいたいのだけど・・・、いいかしら?」


「ああん?」


赫夜の柄を握りしめたまま、二代目鉄火斎は凄んだ。


「オレの刀だぞ? 使い手がお粗末じゃない限り折れるわけがねぇんだ!! つまり、この男はお粗末ってことだろうが!! そんな奴に、オレは刀なんて打ちたくないね!!」


「まあ、そう言わず」


アクアは、架陰と鉄火斎を引き剥がした。


「お願いよ。だって、あなたは【匠】でしょ?」


「あたぼうよ!! オレは、UMAハンターがUMAを倒せるように刀を打つのが仕事なんだからな!!」


「だったら造ってよ」


「それとこれとはわけが違うんだよ!!」


そっぽを向いてしまう鉄火斎。


お茶を飲み干したクロナは、床に湯呑みを置いて、架陰に耳打ちをした。


「なんか、予想通りって感じね」


「そうですね・・・」


完全に職人気質だ。


自分が打った最高の刀を壊されて、かなり頭に来ている感じだ。


「どうしましょう・・・、これ、もう刀を打ってもらえないんじゃ・・・」


「仕方ないわね」


そう言ったのはアクアだった。


「刀を打ってもらえないのなら、仕方ないわ。いきなりあなたの工房に押しかけた私たちにも非はあるし・・・」


お茶を飲み干すと、すくりと立ち上がった。


銀髪を翻して、架陰とクロナの方を向く。


「二人とも、帰るわよ。架陰。あなたには申し訳ないけど、支給品の【鉄刀】があるから、しばらくはそれを使いましょう」


「え、でも、刀は・・・」


「【二代目鉄火刀斎】さんは、あなたの担当の【匠】だったけど、刀を作ってくれないというのなら、契約をしている意味はないわ。また別の【匠】を探すわ」


「え、おいおい・・・」


家を出ていこうとするアクアの袖を引いて引き止めたのは、鉄火斎だった。


「おい、帰るのかよ!」


「そうだけど?」


「契約を解除するのか?」


「そうだけど?」


「まてまてまてまて」


急に慌て始める二代目鉄火斎。


「契約を解除ってことは、オレはSANAから援助金が貰えないんじゃ・・・!」


「そうだけど?」


素っ気なく言い放つアクア。


「わかってる? あなた達【匠】は、本来は銃刀法違反なのよ?それが許されるのは、SANAが許容しているから。SANAの保護がなければ、あなた達匠は直ぐに警察行きだろうね」


「は、はは・・・」


引きつったように笑う鉄火斎。










「やらせてください」











第97話に続く





第97話に続く

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