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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
319/530

かぐや姫の昇天 その②

牛車の行先に


光がありますように

2


「【悪魔大翼】!!!!」


架陰は全身全霊を込めた一撃を、スフィンクス・グリドールに向かって放っていた。


【肆式】で発動できる全ての魔影を収束させた三日月型の斬撃が、地面を割りながらスフィンクス・グリドールに迫る。


スフィンクス・グリドールは、躱さない。


「もういいよ・・・」


失望したようにそう呟くと、握っていた剣を振った。


その瞬間、目に見えない波動のようなものが架陰の全身を襲う。


痛みは無い。しかし、寒冷の風に吹き付けられているかのような、不快な感覚だった。









パキンッ!!!










架陰の刀の刃が、粉々に砕けた。


「えっ!?」


間抜けな声が洩れる。


見間違いではない。


間違いなく、架陰の刀が砕けた。


修復すら困難な程に、粉々に。


キラキラと、雪のように刃の破片が散る。


(僕の・・・!! 赫夜が!!!)


架陰を絶望が襲った瞬間、スフィンクス・グリドールが斬撃に飲み込まれた。


ドンッ!! と衝撃波が拡散する。


地面が砕ける。岩が宙に打ち上げられる。木々がなぎ倒され、目の前を爆塵が覆った。


「くっ!!」


目を襲う砂から顔を覆う。


砂煙は、しばらくの間辺り一面に漂った。


架陰はじっと息を凝らして、スフィンクス・グリドールの動きを見る。













砂煙が晴れた。











「うーん。なかなか良かったよ」


煙の中から、スフィンクス・グリドールが現れた。


架陰は目を見開き、生存している彼を凝視した。


幽霊ではない。


スフィンクス・グリドールだ。


「む、無傷・・・!?」


「ん? ああ、いや、傷は受けたよ?」


スフィンクス・グリドールは白衣の袖を捲りあげて、ぐちゃぐちゃに潰れた右手を出した。手首から上の肉が吹き飛び、骨と腱だけが残っている状況だ。


「でも、この右手を犠牲にするだけで防げたってことだよ」


「っ!!」


架陰は再び刀を構える。


しかし、刀の刀身は粉々に砕けて消えていた。


「・・・・・・!!」


「ごめんね。君の愛刀を折っちゃったね・・・」


心がこもっていない謝罪をするスフィンクス・グリドール。


架陰にとって、謝罪はどうでもいい。


(赫夜が・・・、折られた・・・!!)


折られた。と言えば語弊がある。正確には、「砕かれた」だった。


粉々だ。


足元に、粉々になった刃が散らばっている。


(一体・・・、何をした!?)


考えている暇はない。


あの一撃で、右手の損傷までのダメージを与えることができたということは、もう一撃を喰らわせれば左手。もう一撃で、瀕死のダメージに持って行けるかもしれない。


(だったら!! もう一発!!)


架陰は再び、【肆式】からの【悪魔大翼】を発動しようと試みた。


しかし、身体の力がガクッ!と抜けて、荒れた地面の上に片膝をつく。


貧血を起こしたときのように、頭の中が揺れて呼吸困難を引き起こした。


「はあ、はあ、はあ、はあ・・・!!!」


「どうやら、体力が尽きたみたいだね?」


「くっ!!」


「そりゃそうだよ。あれだけの高火力の一撃を放てば、直ぐに動けなくなる。エネルギーってのはプラマイゼロなんだからさ?」


立っていられない架陰に対して、スフィンクス・グリドールは余裕の表情。


右手首からは相変わらずに血が滴っていたが、腕を割いた布で結んで止血する。


「これ以上は、回復薬を使うことができないんだ。良かったじゃないか。僕の右手は封じたよ? まあ、左手があれば十分なんだけど・・・」


スフィンクス・グリドールは、左手に握っていた剣を地面に突き立てる。


そして、左手を架陰に伸ばした。










「じゃあ、僕の実験施設に来てもらうよ?」











架陰は為す術がない。


その瞬間、聞き覚えのある少女の声が響いた。










「【明鳥黒破斬】!!!」










森の奥から、無数の鴉の羽根が飛んでくる。


「っ!!」


スフィンクス・グリドールはすぐ様身を翻すと、剣を掴んだ。


剣を高速で振って、飛んでくる鴉の羽根をたたき落とす。


しかし、全てを防ぐことは出来ず、数本が胸の辺りに刺さった。


「うっ!!」


よろめくスフィンクス・グリドール。


(どういうことだ? 【千里眼】の能力を持っている僕が・・・、敵襲に気が付かなかった!?)


「架陰!!!」


森の奥から、ボロボロの体をしたクロナが走り込んできた。


「く、クロナさん!!」


「今助けるわ!!」


クロナは名刀・黒鴉を握りしめると、【明鳥黒破斬】の二撃目の体勢を整えた。


「明鳥・・・!!」


それよりも先に、スフィンクス・グリドールが能力を発動させた。









「【千里眼】・【壱式】・【蛇睨】!!!」










「ひぐっ!!」


左手のひらの眼球に射すくめられたクロナは、ヒキガエルのような呻き声を上げて、その場に硬直した。


「少し黙ってておくれ」


身動きの取れないクロナに向かって、スフィンクス・グリドールは剣を振った。


ザンッ!!


と、クロナの胸に傷が付き、血が吹き出す。


「がはっ!!」


クロナは白目を剥いて、仰向けに倒れ込んだ。


「クロナさんっ!!!」












その③に続く

その③に続く

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