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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
315/530

魔影・肆式 その②

逃げるな


逃げるな


逃げるな


砂漠で爪を研ぐ

2


「魔影・・・、肆式、発動!!」


架陰はそう宣言した。


その言葉を合図に、泥だらけ、擦り傷だらけとなった架陰の身体の表面から、漆黒のオーラが湧き出す。


その様子を見て、スフィンクス・グリドールは「へえ」と頷き、顎に手をやった。


(肆式? つまり、弍式や参式の上だと言うのか?)


肆式を発動するとどうなるのか。参式とはどう違うのか。


想像するだけで、心臓が高鳴り、好奇心が先行した。


思わず、ニヤリと笑う。


「おもしろい。見せてよ。君の新しい力を」


「見せてあげますよ・・・」


心做しか、架陰の目付きが変わった。


先程も十分と言っていいくらい、鋭く、冷たい目付きだった。しかし、「肆式」と宣言した瞬間から、そこに、底の見えない「殺意」が宿った気がした。


背筋がゾクゾクとする。それが、人間の持つ防衛本能から来るものだとわかった時、スフィンクス・グリドールは初めて「なるほど」と身構えた。


「結構、やばいのが来そうだね・・・」










架陰の両脚に、魔影が纒わり付く。


架陰の両腕に、魔影が纒わり付く。


そして、架陰の刀に、魔影が纒わり付いた。


「・・・・・・、魔影肆式・・・」


架陰の耳元で、ジョセフが囁いた。










「【肆式】を発動すると、発現することができる魔影の量が増加する。その量は、単純に、弍式の時の【三倍】だよ」










「魔影、肆式・・・、【魔影脚】+【魔影拳】+【魔影刀】・・・」


架陰の脚に纏わりついた魔影は、形状を固定して、まるで猛禽類の足のような形となる。腕に纏わりついた魔影は、鉤爪を持つクマの腕のような形に。


そして、刀は、身の丈程の大剣と化した。


「それだけ?」


スフィンクス・グリドールは、少しガッカリした様子で言った。


「単に、魔影の量が増えただけじゃないか。強化する部位の範囲が増えただけ・・・、なかなか拍子抜けなんだけど・・・」


「本当にそうですかね?」


架陰の眼球の血管にも魔影がまとわりつき、見開いた目は赤黒く染まっていた。


その禍々しい姿で見られた瞬間、その場にいる者全ての背筋に冷たいものが走った。









「警告します。油断すると、死にますよ?」










その瞬間、スフィンクス・グリドールの視界から架陰の姿が消え失せた。


「え・・・」


視界から、架陰が消えた。


瞬間移動?


いや違う。先程まで架陰が立っていた地面が粉々に砕けている。


つまり、魔影で強化した脚で地面を蹴り、猛スピードでスフィンクス・グリドールの視界から離脱したということだ。


(一体どこに・・・!?)


スフィンクス・グリドールが、架陰の姿を探して辺りを見渡した瞬間、脇腹に、架陰の蹴りが直撃していた。


「がっ!?」


ボキボキと、肋が砕ける。口から血が吹き出し、受身を取ることも出来ずに吹き飛んだ。


まるで水面を跳ねる水切り石のように、地面の上を跳ねるスフィンクス・グリドール。大木の幹にぶつかって止まった。


「がふっ!!」


喉に吐血が絡まり、上手く息が出来ない。


「はっ!?」


顔を上げると、前方から架陰が迫ってきていた。


すぐ様、脚に力を込めて右に跳躍する。


しかし、架陰は一瞬の判断で軌道を変えると、スフィンクス・グリドールの回避した先に突っ込んで行った。


「ちっ!!」


このままではやられると確信したスフィンクス・グリドールは、先程「使わない」と約束したはずの【能力】を発動させた。


右手を迫り来る架陰にかざす。









「【壱式】・・・!! 【蛇睨】!!!」










裂けた手のひらの皮膚から覗いた眼球が、架陰を睨む。


その眼光に当てられた瞬間、架陰の体はプツンと動きを止めていた。


「ぐっ!!」


架陰は、身体に力を込めて、その束縛を解除する。


簡単なことだ。もしも、生物や物質の動きを封じる【蛇睨】を使用して来たとしても、「自分は負けない!!」という強い精神力があれば簡単に解除することが出来る。


だが、一瞬でも気を失った隙に、スフィンクス・グリドールは地面に転がった鉄棍を拾いあげていた。


「くぅ!」


的に武器を握らせたくなかった架陰は、直ぐ様、刃から黒い斬撃を放つ。


それを、スフィンクス・グリドールは涼し気な顔で弾き返した。


「流れを掴むことだね・・・」


ニヤリと笑う。


「掴んでますとも!!」


その瞬間、再び架陰が視界から消えた。


そして、スフィンクス・グリドールが気配を感じ取って振り返るよりも先に、背後から強烈な蹴りを入れられる。


「がはっ!!」


何が起こったのか分からぬまま、吹き飛ばされる。


空中で体勢を整え、足を擦りながら着地。


顔を上げると、目の前に架陰がいた。


(これはっ!!)


そして、追撃の蹴りが入る。


「がはっ!!」


鉄平のお返しと言わんばかりに、スフィンクス・グリドールの胃袋が破裂した。


(どういうことだ? 目で追えない・・・!! 速すぎる!!)












その③に続く




その③に続く

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