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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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【第91話】 寄生悪魔恢恢 その①

丹田にて蠢く


蠱毒の蠍


腸を噛みちぎり


皮膚を突き破りて


陽光を見る

1


「どうして、あなたから悪魔の堕慧児の気配がするんですか?」


架陰の放ったその一言で、場は一瞬にして凍りついた。


目を見開いた驚愕したのは、地に伏して倒れていた鉄平と山田だった。


「悪魔の・・・、堕慧児だと・・・!?」


「それは本当ですか? 架陰殿・・・!!」


二人の食いつくような質問に、架陰は、こくりと頷いた。


「はい。間違いありません」


悪魔の堕慧児。


それは、人間とUMAの力を併せ持つ者のこと。


架陰は、以前にその悪魔の堕慧児の集団に攫われ、交戦したために、本能的に彼らから放たれる気配というものに敏感になっていた。


背筋を這う冷たい感触。


まるでガラスの人形を相手にしているかのような虚無な気配。


「僕は、一度、悪魔の堕慧児と戦ったことがあります。鉄平くんも、山田さんもそうでしたよね?」


「ああ」


「はい」


二人は同時に頷いた。


鉄平も、山田も、悪魔の堕慧児に拐われた架陰を取り戻すための作戦【架陰奪還作戦】で悪魔の堕慧児の一人と交戦したことがあった。


「彼らに似た気配が・・・、このスフィンクス・グリドールさんからするんですよ・・・」


ほぼ直感と言ってもいい。


しかし、確信だった。











指摘されたスフィンクス・グリドールは、「へえ」と言って、唇をペロリと舐めた。


「よく気がついたね・・・」


「っ!!」


否定しない。ということは、スフィンクス・グリドールも悪魔の堕慧児ということだ。


あの、架陰を拐った集団の一味。


「だけど、勘違いしないで欲しい。僕は、【悪魔の堕慧児】ではあるけど、前回に君を襲った奴らとの仲間ではない・・・」


「仲間じゃ、ない?」


「そもそも、悪魔の堕慧児であるかどうかも怪しいところかな?」


「どういうことですか?」


架陰は、スフィンクス・グリドールから視線を外さずに言った。


スフィンクス・グリドールは、身体の力を抜いて悠長に話し始めた。


「まず、【悪魔の堕慧児】が生まれる条件を知っているかな?」


「はい。DVLウイルスに感染した人間に突然変異が起こり、UMAへと変貌してしまうのを食い止めるために手術を受けて・・・、人間とUMAの姿を切り替えることができるようになった者のことですよね・・・」


「うん。正解だ。話が早くて助かるよ」


スフィンクス・グリドールは、拍手をする。


「【悪魔の堕慧児】という名前は、君を襲った者たちが付けた・・・、いわば、自称のようなものさ。対して僕は、彼らの目的には組みしていない・・・」


スフィンクス・グリドールの左手のひらが架陰にかざされる。


手のひらに一文字の傷が入り、ギョロりと目玉が飛び出した。


「僕はね、DVLウイルスに感染して、突然変異を起こし始めた時点で、【自分で自分の身体にメスを入れて、突然変異を食い止めた】んだ。この意味が分かるかい?」


「っ!!」


背筋がゾッとした。


「つまり、僕は誰の力も借りずに、自らの技量だけで、人間とUMAの力を手に入れた者。それを、世間一般で【悪魔の堕慧児】と呼ぶのならそれでもいいさ。この人間とUMAの力を併せ持つ生物を【人間】と呼ぶのか、【UMA】と呼ぶのかは意見が分かれるところだがね・・・」











その時、架陰の視界で白い火花が弾けた。


まるでブレーカーが落ちるかのように目の前が真っ暗になり、架陰の意識は夢の中へと吸い込まれていった。


気がつくと、架陰は暗闇の中に立っていた。


見れば、身の前に、架陰の精神の中に住み着いている【悪魔】と【ジョセフ】が立っている。


「やあ、架陰」


ジョセフは相変わらず、人懐っこい笑みを浮かべて、架陰に手を振った。


突然、意識の中に引き込まれることは日常茶飯事なので、架陰も冷静に応対した。


「ジョセフさん、どうしたんですか? 急に呼び出して・・・」


「ああ、少し厄介なことになったんだ・・・」


ジョセフはそう言って、指をパチンッ!と鳴らした。


ジョセフの背後の暗闇がぼんやりと明るくなり、スフィンクス・グリドールの姿が浮かび上がった。


「【悪魔の堕慧児】の探知能力が上がってきたようだね。彼がただの能力者ではないことを見破ったのは流石と言うべきだ・・・」


「それを言うために、僕をこの世界に呼び出したんですか?」


「ソンナワケナイダロウ・・・」


ここに来て、初めて悪魔が口を開いた。


架陰の目の前に立つジョセフの足元に気だるげにしゃがみこんでいた悪魔は、おもむろに立ち上がり、架陰を獣のような金色の目で見据えた。


「アノ男・・・、ナカナカニ厄介ダゾ・・・」


「どういうことですか?」


「コノ愚カ者ガ・・・」


聞いただけなのに貶された。


無愛想な悪魔に、架陰がムッとしていると、ジョセフが宥めるように架陰の頭を撫でた。


「正直・・・、僕もあまり理解が追いついていないんだ・・・。悪魔が言うには、スフィンクス・グリドールという男、かなりやばいらしい」
























「何せ、あの男・・・、体内に悪魔を飼っているみたいなんだよ・・・」












その②に続く


その②に続く

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