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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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【第90話】 千里眼 その①

あゆむ道は違えど


この足を動かすものに


寸分の違いは無く


その瞳に宿す光に


一点の曇り無し

1


「じゃあ・・・、僕の能力も解放しちゃおうかな・・・」


これは、誰が見ても詰みの状況だった。


葉月の渾身の奇襲により、スフィンクス・グリドールの四肢を傷つけ、動きを封じた。


スフィンクス・グリドールが立ち上がれないでいる隙に、葉月、鉄平、山田は、逃げてしまった。


もう、走り去る足音も、彼らの荒い呼吸音も、草むらをかき分ける音も聞こえない。


完全に「逃げられた」のだ。


これから追っても、三人を捕まえられることは不可能に近い。


RPGのように、レアなモンスターを逃せば、次にエンカウントするのにはかなりの時間を要することになる。










その状況下でも、スフィンクス・グリドールには、三人を仕留められる自信があった。


「面白い。面白いよ。やっぱ、ハンターフェス、開いて良かったなぁ・・・」


空を仰いで、うっとりとした表情を浮かべた。


「本来の目的は・・・、人体実験のつもりだった・・・。UMAハンター同士を戦わせて、対人戦での危機的状況が人間にどんな影響を及ぼすのか知りたかった」


スフィンクス・グリドールは、「そして・・・」と付け加えた。










「【市原架陰】について・・・、知りたかったなぁ・・・」










科学者らしい、薬品で荒れながらも白い手で、頭を掻きむしった。


「市原架陰・・・!! 彼は・・・、悪魔に認められた少年・・・!! 僕の研究に役立つ、素晴らしい逸材!!! ああ!! 早く捕まえたい!! 捕まえて、頭を輪切りにしたい!! 彼の能力をこの身で受け止めてやりたい!! あああ、あああ・・・、楽しみだなぁ!!」


にちゃあ、と、口が開き、唾液が糸を引いた。


「だけど、今は我慢・・・。美味しいものは最後に取っておかなきゃダメだよね・・・」


頭をコツンと叩いた。


白衣が風に揺れる。


「今回はまだ、【情報】のみでいい。市原架陰は、どんな性格なのか、どんな風に戦うのか。そして、彼の能力はどんなものなのか・・・」


それを知るために、スフィンクス・グリドールは、鉄平から話を聞こうとしたのだ。


だが、鉄平は彼に市原架陰についての情報を教えることを拒否した。


「仕方がないなぁ・・・」


スフィンクス・グリドールは、中指を親指にかけて、関節をパキリッ!!と鳴らした。


「【情報】は分け合うものだ。独り占めするものじゃない。みんなで分け合って、有益に活用するべきだ」


スフィンクス・グリドールの瞳が白く光る。


手のひらの皮膚表面が、ボコボコと盛り上がった。


そして、スフィンクス・グリドールは、狂気に塗れた言葉を虚空に向かって吐いていた。










「さあて、人体実験の始まりだ・・・」










その瞬間、スフィンクス・グリドールの手のひらの皮膚が裂けた。


ブチュッ!!と、血液が吹き出し、彼の頬に飛び散る。


まるで、ナイフで切れ込みを入れたかのように横一文字に裂けたスフィンクス・グリドールの左手。


開いたその中から、異形なるものが姿を現した。










それは、眼球だった。










スフィンクス・グリドールの白い左手のひらの裂けた皮膚の中から、【眼球】が出てきたのだ。


眼球は、まるで、生きているかのようにぎょろぎょろとその黒目を四方八方に泳がせた。


そして、最後に自分を見下ろすスフィンクス・グリドールの顔を見た。


スフィンクス・グリドールは、赤子をあやすかのように、左手を撫でた。


「じゃあ、今日もよろしく頼むよ・・・、【アイちゃん】・・・」


そして、スフィンクス・グリドールは、眼球が現れた左手を抉れた森の向こうに向けた。


「能力・・・、発動・・・」















「能力【千里眼】!!! 【壱式】!!!」















そう叫んだ瞬間、手のひらの中で閃光が弾けた。


バチバチ、バチバチと電流のような青い光が点滅する。


そして、スフィンクス・グリドールの手の中に、ピンポン玉程の【エネルギー弾】が発生したのだ。











「【蛇睨】・・・」










そのつぶやきを合図に、エネルギー弾が四方八方に飛散した。


散り散りになった光は、空気に溶け込むようにして、消え失せた。


「さて、これで大丈夫・・・」


スフィンクス・グリドールが手の甲を撫でると、裂けた傷口が塞がり、飛び出ていた眼球も肉の中に戻ってしまった。


「これで、あの三人は、もう動けない・・・」













スフィンクス・グリドールのたっている場所から、約二百メートル程先。


あと少しで、この森を抜け出せる。と言ったところで、葉月、鉄平、山田の三人は地面に伏して倒れていた。


三人とも、身体中から赤黒い血液をを流していて、流れ出たそれは地面を黒く染め上げていた。


「く・・・、そ・・・」


鉄平は、力を振り絞って這うが、直ぐに動けなくなった。


「・・・、わけのわからねぇところから・・・、攻撃が・・・」













椿班・堂島鉄平・・・脱落。


椿班・山田豪鬼・・・脱落。


百合班・篠川葉月・・・脱落。











椿班・・・四名全員戦闘不能。


百合班・・・四名全員戦闘不能。












その②に続く



その②に続く

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