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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
304/530

名刀・黒葉月 その③

お天道様は見ている

3


「もしかして、他に作戦があるのかな?」


「っ!!」


スフィンクス・グリドールの真意を突いた言葉に、葉月は奥歯を噛み締めた。


やはり、四天王相手に小細工は通用しないのか。









もう、やけくそだ。










「そうですよ・・・」


葉月は頷いた。


「私の目的は、【貴方を倒すこと】ではありません。【貴方から逃げる】ということです」


「へえ、じゃあ、この落ち葉を操る能力で僕の目をくらまして、逃げればいいじゃないか」


「そういう訳にはいかないんですよ」


葉月は、空中を漂う落ち葉を操作して、スフィンクス・グリドールに向けてけしかけた。


スフィンクス・グリドールは、葉月の方を向いたまま、まるで、蝿を払うかのようにその葉を退ける。


「じゃあ、どういうつもりかな?」


「こういうつもりですよ!!」


その瞬間、スフィンクス・グリドールの両足首に鋭い痛みが走った。


「っ!?」


血が吹き出し、がくりと膝を折るスフィンクス・グリドール。


バランスを保てず、思わず地面に手をついた。


その手首にも鋭い痛みが走り、血が吹き出す。


「これは・・・」


「全てバレていそうなので言っておきますけど、私の【名刀・黒葉月】の能力は、【落葉操作】・・・、その射程距離は、半径二十メートル程です。二十メートルから離れてしまえば、操作している落ち葉は動くことができなくなります」


つまり、ただ【逃げる】だけでは、逃げ切ることができないのだ。


「貴方の四肢の腱を全部切断して、動きを封じさせて貰いますよ」


硬質化して、ナイフ並の強度を持った落ち葉が、一斉にスフィンクス・グリドールに襲いかかった。


そして、彼の右足首、左足首、右手首、左手首の腱を切り裂く。


「くっ!!」


スフィンクス・グリドールは、四肢から血を吹き出して、その場に倒れ込んだ。


その隙を見て、葉月は鉄平と山田に向かって叫んだ。










「今です!! 逃げますよ!!!」











「はい!」


山田が葉月の方へと走り出した。


鉄平も、「くそ!! 逃げるなんて気に入らねぇ!!」と言いながらも山田の後に続く。


二人とも、倒れ込むスフィンクス・グリドールの横を通り過ぎて走った。


「早く!! あの人は回復薬を持っています!! あれで回復される前に!!」


「ありがとうございます。百合班殿」


「くそ、気に入らねぇ!!!」


三人は揃って走り出した。























「あーあ・・・」


三人の足音が遠ざかるのを聞きながら、スフィンクス・グリドールは、ため息をついた。


白衣の内ポケットから注射器を取り出し、自分の心臓部に突き刺す。


みるみるうちに、切り裂かれた右手首、左手首、右足首、左足首の傷が修復した。


「甘いよ。甘いよ。甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い・・・」


傷が完全に治癒すると、スフィンクス・グリドールはゆっくりと起き上がった。


白衣が泥で汚れている。血が飛び散っている。


「あーあ、汚れちゃった・・・」


三人の足音はもう聞こえなかった。


「さてと・・・」


スフィンクス・グリドールは、深く息を吸い込むと、空を仰いだ。


「綺麗だね」


青い空だ。


白い雲だ。


澄んだ空気が、スフィンクス・グリドールの肺に流れ込む。


「何回言ったら分かるのかなぁ?」


スフィンクス・グリドールは、手刀を作った。










「全部見えているんだよ・・・」










そして、虚空に向かって一閃。











ドンッッ!!!!!!!











一閃された手刀から放たれた衝撃波が、目の前の森を吹き飛ばした。


まるで大蛇か這ったかのように地面が抉れ、砕けた木々か空に打ち上げられる。


「・・・ダメか・・・」


見えている。


仕留め損ねた。ただ森を抉っただけだ。


彼らはもう、この手刀の斬撃の射程距離よりも遠くに逃げてしまった。


「仕方ないなぁ・・・」


スフィンクス・グリドールは、気だるげに頷く。


そして、自らの白い手のひらを眺めた。










「じゃあ、僕の【能力】も解放させてもらうよ・・・」









第90話に続く

第90話に続く

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