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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
301/530

その男悪魔につき その③

神々を欺くは


悪魔の黒い翼


影を縫う


千里の畦道



3


「ふむ・・・」


スフィンクス・グリドールは、華奢な指を顎に当てて考えた。


(さて、どうしたものか・・・)


いけない。落ち着くのだ。


自分の目的を、行動理由を最初から整理し直すのだ。


(僕の目的は・・・)


スフィンクス・グリドールの目的は、市原架陰についての情報を鉄平から聞き出すということ。


四六時中、市原架陰への愛を語っているものだから、てっきり簡単に教えてくれると思っていたが、なかなか口を割らない。


うっかり、胃袋を破裂させてしまった。


次に、回復薬で釣って市原架陰の情報を聞き出す作戦を立てるも、百合班の葉月の協力により失敗。


そして、副班長山田の乱入。


(うーん。僕はやっぱり人とは違うみたいだな。『ああすればこうする』と思って計画を立てるけど、意外に上手くいかないものだ・・・)


まあいい。


作戦が失敗したのなら、別の作戦を立て直せばいいだけだ。


(科学者ってのは、いつも成功するわけじゃない。1000回の挑戦の内に、1回の成功があるだけで、万々歳ってものさ・・・)


わずか一瞬で計画を建て直したスフィンクス・グリドールは、山田の方に向き直った。


背後でカサッと音がしたかと思うと、鉄平と葉月が武器を杖代わりにして立ち上がっていた。


(囲まれたか・・・)


前には山田。後ろには鉄平と葉月。


(ま、三人に囲まれたところで、僕が負けるわけがないんだけどね・・・)


余裕の笑みをもって、白衣の襟を直した。


「まあまあ。そんなに殺気立たないでよ。僕は別に、君たちを殺したいわけでも、嬲りたいわけでもない。【市原架陰】の情報を聞き出したいだけなんだよ」


「てめぇみたいな怪しいやつに、架陰のことを教えるわけねぇだろ!!」


鉄平が、鉄棍を握りしめてスフィンクス・グリドールへと襲いかかった。


スフィンクス・グリドールは、山田の方を見ているおかげで、鉄平の奇襲には、気づいていない。


「はあっ!!」


スフィンクス・グリドールの首筋向けて、鉄棍を振った。


スフィンクス・グリドールは、それを振り返らずに受け止めた。


「まず、最初の質問だ。市原架陰がUMAハンターになった経緯は?」


「っ!!」


まただ。


また受け止められた。


(どういうことだよ・・・!?)


スフィンクス・グリドールは、山田の方を見ていたのだ。それなのに、背後から襲いかかってきた鉄平の気配に気づき、反応してくるなんて。


(こいつ・・・、まさか、何かを使っている?)


「驚く顔は、そこまでだよ」


スフィンクス・グリドールは、また、ニコッと笑うと、鉄平を鉄棍ごと投げ飛ばした。


鉄平は、空中で体勢を整えると、山田の隣の地面の上に着地した。


「おい!! どうするんだ!?」


「私に聞かれましても・・・」


山田は額に冷や汗を浮かべながら、スフィンクス・グリドールからは目を離さない。


スフィンクス・グリドールは、顔はニコニコで、余裕を保っていた。いつでも鉄平のことを倒せますよ。と言いたげだった。


その様子を見て、鉄平は、舌打ちをした。


「あのやろう・・・馬鹿にしやがって・・・」


「ですが、鉄平さん。あの男には勝ち目がありませんよ?」


「やってみねぇとわからねーだろ」


「いえ、分かります。この山田一人では、あの方を倒すことは出来ません」


「っ!!」


鉄平は、奥歯をくだけんばかりに噛み締めた。


「くそ・・・、ここまで強いとはな・・・」


全ての攻撃が読まれている。


下手に攻撃をすれば、カウンターに遭う。











スフィンクス・グリドールは、「無駄だよ」と言った。


「どれだけ僕の視界をかいくぐろうと、僕には全て見えている。なんなら、君たちの全ての攻撃をいなす自信がある」


「なんだと・・・」


簡単に挑発に乗るのが鉄平だった。


「やってみねぇと、分からねえだろうが!!」


今度は真正面からスフィンクス・グリドールに向かって斬りかかっていった。


スフィンクス・グリドールは、「やれやれ・・・」と肩を竦めた。


「じゃあ、分からせてあげるよ・・・」


そう言って、鉄平の攻撃を返り討ちにしようとした。


その瞬間、背後から葉月が斬り込む。


「へえ・・・」


スフィンクス・グリドールは、身を反転させると、同時に二人の一撃を受け止めた。


「無駄だよ。全部見えている・・・」


そして、二人同時に吹き飛ばした。


「くっ!!」


「っ!!」


「さあ、どんどん来なさい・・・」


クイクイと手首を返す。


鉄平は、体勢を整え、再び向かっていく。









その様子を見ながら、山田は静かに考えた。


(どうして・・・、スフィンクス・グリドール様は、『全て見えている』んだ・・・?)


明らかにおかしい。


先程の葉月の背後からの攻撃も、前方から見ていた山田にとって『完璧』と言う他ない完璧な一撃だった。


それを、受け止めた。










(まさか・・・、【能力】を使っている・・・?)











第89話に続く




第89話に続く

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