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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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その男悪魔につき その②

血の盟約といこうじゃないか

2


「もしかして・・・、勘違いさせちゃったかな?」


スフィンクス・グリドールは、べったりと笑顔を貼り付けたまま、倒れ込む鉄平と葉月に近づいた。


手刀を作り、虚空を振ると、そこから放たれた衝撃波が木を吹き飛ばす。


「僕はね・・・、【四天王】なんだよ? 四天王・・・は、SANAの中で四本の指に入る強さを持っているってことだよ?」


見開いた眼球の中の瞳孔が震えた。


「四天王には権限が与えられる。UMAを駆逐するという条件の元、財。人望・・・。僕の場合は

【研究】だ・・・」


スフィンクス・グリドールはそう言って、白衣の内ポケットから注射器を取り出した。


その鋭い針を、先程鉄平に勝ち割られた額の傷に突き刺す。


その瞬間、ゴボゴボと皮膚が膨れ上がり、流血を止め、新しい皮膚を形成した。


「僕は、研究者。僕には、【研究】という権限が与えられている。つまり、この世の全てを探求していいってことなんだよ・・・」


空になった注射器を放り投げる。


そして、また一歩、二人に近づいた。


「そして、誤解の無いように言っておくけど・・・、僕は四天王であるけど、決して、【やつは四天王の中でも最弱】じゃないよ? 四人いる四天王の中で、二番目の強さを誇っている。つまり、僕が、UMAハンターの中で【二番目】に強いってことだよ・・・」


にいっと笑った時に見せた白い歯が、不気味に光った。


狂気。


彼の全身を覆う【狂気】が、雨のように二人に降り注ぐ。


「さあ、実験と行こう・・・」


ぬうっと、スフィンクス・グリドールの手が伸びてくる。


その指先が、鉄平の頬に触れようとした次の瞬間。










「・・・、そこにいるのはわかってるよ」


スフィンクス・グリドールは、ピタッと静止した。


振り向き様に、虚空に向かって手刀を一閃した。


衝撃波が飛び、後方の木々を吹き飛ばした。


「・・・・・・、うーん、仕留めそこなっちゃったか・・・」


巻き起こる砂煙を見て、スフィンクス・グリドールは頭をポリポリと掻いた。


砂煙が晴れる。


そこには、身長二メートルはあろう大男が立っていた。鉄平と同じ、深紅のスーツに身に纏い、優等生が身につけそうな丸メガネを装着している。頭は坊主で、寡黙な雰囲気が見受けられる。











椿班の副班長である、【山田豪鬼】だった。











「山田っ!!」


鉄平が歓喜の声を上げた。


「お前!! 無事だったのかよ!!」


「はい、このとおりでございます・・・」


山田は、丸メガネをクイッと上げた。


そして、のしのしと近づいてくる。


スフィンクス・グリドールは、にまっと笑い、唇を湿らせた。


「へえ、班長のピンチに、副班長が駆けつけたのか・・・」


山田は四天王に臆することなく、近づいていく。


「申し訳ありません。スフィンクス・グリドール様・・・、鉄平さんは、我々椿班の班長でございます・・・」


「知ってるよ。君のことも知っている。椿班、副班長の、【山田豪鬼】くんだよね・・・」


「はい。ご存知なようで・・・、ありがとうございます・・・」


その瞬間、山田は、スフィンクス・グリドールに向かって拳を放った。









パンッ!!!










風船が破裂するような音が響く。


山田の、隙を突いた一撃を、スフィンクス・グリドールは片手で楽々と受け止めていた。


「ごめんね。全部・・・、見えてるから」


「っ!!」


山田は直ぐに手を引こうとした。


しかし、スフィンクス・グリドールは、強い握力で山田の拳を包み込み、彼の後退を封じる。


「もう少し話をしようよ。情報は有益。急ぐ必要は無い。僕は、僕にとってためになる情報を引き出してから、相手を倒すタイプなんだよ」


ミキミキと、山田の拳の骨が軋んだ。


鈍い痛みに、山田の寡黙な顔が崩れる。


「僕には権限がある。【尋問】・・・、いや、【拷問】の権限だ。僕は、君が何か僕に有益な情報を話すまで倒さない。という権限がある」


「・・・、何をっ!!」


山田は歯を食いしばった。


唯一拘束されていない左拳を引く。


「だったら、これはどうですか!!」


そう言って、左拳でスフィンクス・グリドールを殴った。


しかし、これもまた受け止められる。


「残念! 全部見えている!!」


「果たしてそうですかね?」


その瞬間、左拳を掴んでいたスフィンクス・グリドールの左手の中が、焼けたように熱くなった。


「っ!!」


反射的に手を放し、後退するスフィンクス・グリドール。


「へえ、何か、仕込んでいたね・・・」


「はい。指の隙間に、【火炎玉】を仕込んでおきました。それが圧力により発火したというわけです・・・」


山田は指の間に挟んでいたぼうぼうと燃える【火炎玉】を地面に捨てた。通常は火薬の発火に用いられるものだが、山田はそれを奇襲に応用したのだ。


その代わりに、山田の左手は火傷を起こして爛れていた。


「私の班長を、返して貰いますよ・・・」











その③に続く


その③に続く

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