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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
295/530

葉月と鉄平 その③

心の穴に指を入れて


抉り出すのは黒真珠


滴る血液を啜り


湖畔の影に落としている

3


鉄平と葉月が森の中を歩き出して、十分が経過した。


鉄平はその十分間の全てを、市原架陰の素晴らしさを語ることで費やしていた。


「分かるか? オレの架陰は、とにかくすごいんだ!!あの突破か難しいとされる、総司令官アクアの試練に打ち勝って、直ぐに派遣された【ローペン】討伐任務では、単独行動ながら戦果をあげた!! 鬼蜘蛛の群れも、全部一人で倒しちまったんだぜ!!!」


「あ、はい、そうですか・・・」


葉月は適当な相槌を打った。


とにかくやる気のない「あ、はい、そうですか・・・」だったのに、鉄平は気を悪くすることなく、むしろ気を良くして「そう思うだろう? 架陰はすごいんだぜ!!」と熱くなる。


そんな鉄平を見て、葉月は唾を飲み込んだ。









(今なら・・・、やれるかも・・・)










鉄平は前しか見ていない。市原架陰について語ることに夢中になっている。


今なら、この隙を突けば・・・。


「・・・・・・・・・」


「オレと架陰が初めて対決したのは、バンイップとの戦いだったな!!あいつの体術はまじで凄いぞ!! 一度手合わせしてみろ!! 頭が柔軟なんだよ。あと、危機管理能力が高い!! 小細工なんて通用しないぞ?」


「・・・・・・・・・」


「それに、あいつは変なプライドを持っていないんだ。バンイップが雌雄で現れたときも、冷静にオレたち椿班と協力することを選んでくれたんだぜ!!」


「・・・・・・・・・」


「あとは・・・」











(今だ!!)











葉月は腰の刀に手をかけ、素早く引く。


「あ、そうそう!!」


鉄平が振り返る。


「うひゃあっ!!!!」


葉月は、慌てて手を止めた。


しかし、時すでに遅し。


葉月の黒い刀が刀身を現し、重厚な光を放っていた。


「おい、何やってんだ?」


気づかれていない。


これは好機。


葉月は慌てて誤魔化した。


「あ、いや、蝿が飛んでいて・・・」


「ん、蝿?」


その瞬間、これまた幸い。


鉄平の耳元を大きな蝿が通り過ぎた。


「こいつ!!」


鉄平は舌打ちと共に、握っていた鉄棍を振った。


棍棒の側面が見事、空中を飛行する蝿に直撃。


蝿は地面に落ちた。


「へへっ!! ざまあみやがれ!!」


その素早い棒術を見た葉月は、その場から逃げ出したい気持ちに駆られた。


目がぐるぐると回る。


(なによなによ!! なによ! 今の棒さばき!! 速すぎじゃない!!)


これはダメだ。


もし下手に奇襲をかけようものなら、容赦なく返り討ちにあう。それが、今の蝿をもって証明された。


「ほら、行こうぜ!! オレの勘なら、この先に架陰がいるはずなんだよなぁ」


鉄平は、再び歩き始める。


葉月も刀を鞘に収めて、その赤スーツの背中について行った。


(どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう!!!!)


どうしよう。


無理だ。


絶対に無理だ。


この男を倒そうなんて、百年早い。


さすが班長と行ったところだろう。


(どうすればいいのょ!!)










その時だ。











「やあ、そこのお二人さん・・・」











背後から、男の声が聞こえた。


「っ!!」


「なにっ!?」


鉄平と葉月は、ほぼ同時に振り返った。


まるで幽霊のように、その男は突然現れた。


外国人特有の金色の瞳に、白銀の髪の毛。2メートル近くはある長身に、白衣を身にまとっていた。


「し、四天王の・・・」


「あん?」


鉄平は、怪訝な顔をする。


「あいつ、もしかして、四天王の、【スフィンクス・グリドール】か?」


「は、はい!!」


もしかしてじゃなくて、確実にスフィンクス・グリドールだった。











(どういうこと・・・? どうして、主催者が、この戦場にいるの?)










反射的に、葉月の脳内に、百合班班長【香久山桜】の言葉が過ぎっていた。


このハンターフェスに向かう際に、警告されていた言葉だ。









「このハンターフェスの、【スフィンクス・グリドール】には注意しなさい・・・」











(一体・・・、何が起ころうとしているの・・・!?)











第87話に続く

第87話に続く

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