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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
294/530

葉月と鉄平 その②

夜に奏でる


脊椎のクラッキングを

2


「おら、降りてこいよ!」


鉄平に促されるままに、木の上に潜んでいた葉月は飛び降りた。一応、着物の裾は押さえて、土埃を払う。


自分の視線と同じ高さに葉月が来たことに満足した鉄平は、「それでなんだが」と話し始めた。


「おまえ、市原架陰を知らないか?」


「いちはらかいん?」


何処かで聞いたことがある名前。


しかし、記憶を辿っても該当する人物の顔と名前は見つからなかった。


素直に「すみません、分かりません」と答える。


すると、鉄平は剣幕を変えて葉月に詰め寄った。


「お前っ!! 本当に架陰を知らないのかっ!!」


「ええ、はい・・・」


ライオンよりも鋭い鉄平の眼光に、葉月は思わず引き下がった。


鉄平は、「やれやれ」と言いたげに肩を竦め、深いため息を吐いた。


「お前・・・、市原架陰を知らないってことはな、息の仕方を知らないってことと同じだぜ?」


「はあ・・・」


そう言われても。


というか、知らないものは知らないんだ。


「まあ、UMAハンターの名前だということは分かりますけど・・・、どんな人なんですか?」


「よくぞ聞いてくれた」


なんか、目が光った。


「市原架陰ってのは、つい最近、桜班に入った新人のUMAハンターだよ」


「新人?」


そこで、葉月の頭の中に、ビリリと電流が走った。


何処かで聞いたことがあると思ったが、やはり、桜班のことか。


鉄平は、続ける。


「そして、オレの親友!!」


「親友・・・」


意外だな。と思った。


椿班のメンバーは、とにかく素行が悪い。他の班にも突っかかるという話をよく聞いた。


そんな荒くれ者のイメージがある椿班の班長が、まさか他の班の人間を【親友】だと呼ぶとは。


「へえ、そうですか」


としか言いようがない。


大体、会って間もないこの男の親友の話など、知る由もないし、知りたくもない。


だが、鉄平は熱心に市原架陰のことについて語る。


「架陰は、すごいやつだぜ。一人でローペンを殺った。一人で、バンイップを殺った。一人で吸血樹を殺ったんだ」


「え、それはすごい」


そんな反応をすると、鉄平はますますつけ上がり、架陰の話をした。


そして、ご機嫌な顔で笑うと、葉月の背中をバシバシと叩いた。


「お前、気が合うなぁ!!」


「あは、そうですかぁ?」


内心、気があってたまるか。って感じだ。


だが、この状況、悪くない。


葉月は、生唾を飲み込み、腰紐に差した刀の柄をそっと掴んだ。


この男、もしかしたら、馬鹿なのかもしれない。


ポイントに飢えているUMAハンター達が蔓延るこの戦場で、他の班に対してここまで無警戒とは。









(隙を突けば・・・、とれる・・・!!!)










鉄平は、葉月の着物の袖を引いた。


「よし!! じゃあ、一緒に架陰を探しに行こうぜ!! お前に、あいつの顔を拝ませてやるよ!!」


「あ、はい。そうですね」


この男。やはり、ただの馬鹿かもしれない。


普通、敵のハンターと行動を共にするわけがないだろう。背後を襲われて終わりだ。


だが、鉄平は、臆することなく葉月に背中を見せて向かっていく。


今なら、殺れる。


葉月は、そう胸に、腰の刀の柄に手をかけた。


がら空きの鉄平の背中。


今なら、この刀を振るだけで、鉄平は戦闘不能だ。


(行ける・・・!!!)


と思ったのだが、手が動かなかった。


指先がピクピクと痙攣している。


(・・・、さすがに、こんなに簡単じゃないよね)


なんて言ったって、鉄平は椿班の【班長】だ。つまり、四席の葉月よりも遥かに格上。


力比べで勝てないということはわかっていても、やはり、こういう奇襲をかければ、直ぐに反応されて返り討ち。という未来が浮かぶ。


(怖い!!)


ただ単純にそれだった。


さっきだってそうだ。葉月は、確実に気配を消していた。


だが、鉄平は、いとも簡単に葉月の居場所を特定したのだ。


もし、今刀を振ったとして、殺気が鉄平に勘づかれでもしたら。










(返り討ちにあう!!)









そう考えと、ガタガタと足が震えた。


なんて言ったって、椿班の班長【堂島鉄平】だ。あのむき出しの鉄棍で、肉塊になるまでたさ殴られるに決まっている。


「・・・・・・」


「ん? 何やってんだ?」


鉄平が怪訝な顔で振り返った。


「ほら、行こうぜ。どうせこの辺りにはUMAはいねーんだ」


「あ、はい・・・」


葉月はできるだけ、鉄平の背後をついて行った。


先程から何体かのUMAを倒してきた鉄平は、肩こりをほぐすかのように首を回した。


「いやー、よかったよ。さっきからずっと一人で迷っててなぁ。真子も八坂もいねぇし・・・、UMAの相手を一人でやるのも骨が折れるんだ」


「そ、そうですか・・・」


葉月の頬から、冷や汗が流れ落ちる。









(この状況・・・、まずくない?)











その③に続く



その③に続く

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