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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
287/530

【第84話】 八咫烏 その①

明朝に目覚めるは黒鴉


電線に止まり地平線の輪郭を眺める


日輪に向かうは八咫烏


雲に爪を立てて太平洋の海流を眺める

1


クロナには、兄がいる。


【雨宮黒真】という名前だ。


クロナに似たつややかな黒髪を持ち、切れ長ながら、瞳は黒曜石のように穏やかな光を宿している。


高身長で、身体の線は細い。戦闘面では、不利な身体付きだったが、それを補うように体術と居合を極めた彼の動きは、「熟練」と呼ぶのに相応しかった。


そんな彼も、十年前の【白蛇】との戦いで、クロナの目の前で命を落としている。









その兄の【能力】を、クロナは一度だけ見たことがあった。


迫り来る白蛇からクロナを護る際、背中から、鴉のような漆黒の翼を生やし、地面を滑るように羽ばたくと、クロナを抱えて一瞬で空へと飛び立ったのだ。


その能力こそ、【黒翼】。











「・・・、って、あれ?」


クロナは自分の背中に生えた、その黒い翼を見た時、目を丸くして首を傾げた。


「何・・・、これ?」


生えている。


自分の背中・・・、大体、肩甲骨辺りから二枚の対象の翼が生えている。


その翼は、クロナの意思でパタパタと動く。その拍子に、数枚の羽が落ちてきた。


クロナは混乱したまま、香久山の方を見た。


「なにこれ!?」


縋るような視線に、クロナへ攻撃しようと構えていた香久山桜もたじろぐ。


「何って・・・、それは、能力よ・・・」


「能力!?」


クロナは改めて、自分の背中に生えた翼を見た。


「これが能力っ!?」


生えている。


やはり、生えている。


何度見ても、生えている。


クロナの背中から、黒い翼。


「ど、どどどど、どういうことですか!?」


「いや、私も知らないわよ」


香久山桜は、一旦薙刀を引くと、クロナに近づいた。


「あなた、能力者だったの?」


「いや、違いますよ。だって、DVLウイルスに感染しているんですもん」


そうだ。


クロナは、DVLウイルスに感染している。それはつまり、能力者としての可能性を失っているということだ。


だが、例外はある。


DVLウイルス。は、つまり「デビルウイルス」。架陰の精神の中に住み着いている【悪魔】が生み出したものだ。


悪魔の許可さえあれば、架陰の能力【魔影】や、響也の能力【死神】のように、DVLウイルスを媒体とした【能力】を発動させることが出来るのだ。











つまり。













「おわっ!!」


場面は移り変わる。


いきなり架陰が叫んだので、架陰と行動を共にしていた、薔薇班班長の【城之内花蓮】は振り返った。


「あの、どうされました?」


「い、いや、なんでもないです」


架陰は誤魔化す。


しかし、その周りには、架陰の身体から発生した【魔影】がふよふよと蠢いていた。


架陰は、精神の中の【悪魔】と【ジョセフ】に語りかけていた。


「すみません・・・、また勝手に魔影が発動したんですけど?」


ジョセフが答えた。


「ああ、すまない。それは、恐らく、もう一人の女の子が【能力】に目覚めたからだよ」


「え、それってまさか・・・」


「ああ。雨宮クロナのことだよ」













場面は戻る。


「えーと、どうしましょう・・・」


クロナは恐る恐る立ち上がった。


目の前に対峙するのは、百合班班長【香久山桜】。


「戦い、続けますか?」


「・・・・・・」


香久山桜も、微妙な表情だった。


完全に戦いの流れが切れてしまっていた。


クロナは辺りを見渡す。


真子と、桐谷が肩から血を流して倒れている。完全に【戦闘不能】の状態だ。


「一応・・・、あの子たちの敵討ち・・・、していいですか?」


「ええ、大丈夫よ・・・」


香久山桜無理やり頷くと、地面を蹴って後退。


そして、改めて薙刀を構え直した。


「一応言っておくわ。私は敵だけど、あなたのことを憎いと思っているわけじゃないわ。ハンターフェスで優勝するためにも、こうやってポイントを稼ぐ必要があるの」


「はい、わかっています」


クロナも、背中に翼を生やした状態で刀を構える。


よく分からないが、自分は能力に覚醒した。


この能力がどれだけの力を発揮するのか、香久山桜で試すのにはちょうどいい。


「行きますよ!!」


クロナは地面を強く踏み込んだ。


一瞬で決める。


得意の踏み込みと居合の速さで、香久山桜が反応するよりも先に、彼女の意識を刈り取りに向かうのだ。


「はあっ!!」


















次の瞬間、クロナは香久山桜の横を通り過ぎて、草むらに顔面から突っ込んでいた。













「ふえっ!?」


スピードを落とすことが出来ず、地面にスライディング。


土煙が舞った。


「う、うう・・・」


顔を押さえて立ち上がった。


振り返ると、香久山桜が挙っとした顔でこちらを見ていた。


「あなた・・・、速くない?」












その②に続く

その②に続く

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