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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
286/530

兄の力 その③

翼をください

3


場面は再び移り変わる。


「はあ!」


クロナは、懇親の一撃を香久山に振り下ろした。


しかし、香久山の高い動体視力を前に、薙刀の柄の部分で受け止められてしまう。


香久山桜は身を半歩引いて斬撃の威力を軽減すると、柄をしならせて、クロナを吹き飛ばした。


「くっそ!」


クロナの身体に蓄積していた疲労は限界を迎えていた。


受身をとることが出来ず、後退して迎撃の準備をしていた桐谷に衝突した。


「うわ!」


「きゃあ!」


二人はそのまま、地面に身体を打ち付けた。


「クロナ!! しっかりしろよ!!」


「わかってるわよ!」


手を着いて立ち上がる。


その瞬間、地面がピンク色に淡く発光した。


しまった。と思った時にはもう遅く、クロナと桐谷は一瞬にして桜花吹雪の煙幕に囲まれていた。


視界が薄紅に染まる。


平衡感覚が狂い、地面がグラグラと揺れる感覚に襲われた。


(まずい・・・!!)


完全に、香久山桜のペースだった。


これが、百合班の班長の実力。


その剛腕もさることながら、状況に応じて能力を使い分けるキレた頭の持ち主。


「さあ、終わりよ・・・」


香久山桜は、薙刀を槍投げのように構えると、腕をしならせて投げた。


薙刀は空を切って飛んでいく。


そして、クロナと桐谷に直撃。すると思いきや、二人の横を通り過ぎた。


勢いを弱めることなく、レーザービームのように飛んで行った薙刀が突き刺さったのは。











「ぐあっ!!」











真子だった。


桜花吹雪に囲まれているクロナと桐谷を援護しようと躍起になって油断していた真子を、香久山桜は、狙い打ったのだ。


真子の赤スーツの肩口に、薙刀は深く突き刺さった。


傷口から電流に当てられたかのような激痛が走り、真子は目を見開いて絶叫した。


「ああああああああぁぁぁっ!!!!」


手から弓矢が落ちる。


ガクッと膝を折ると、その場に倒れ込んでしまった。


「まずは一人!!」


真子を仕留めることに成功した香久山桜は、地面を強く蹴って真子の方へとひとっ飛びした。


そして、容赦なく真子に突き刺さった薙刀を抜いた。


「そして・・・」


薙刀を再び、槍投げのフォームで構える。


「もう一人!!!」


今度こそ、薙刀は桜花吹雪が立ち込めている地点へと飛んで行った。


そして、桐谷の背中に突き刺さる。


「ぐあああああっ!?」


桐谷も、真子と同じ絶叫を響かせた。


握っていた甲突剣がポロリと落ち、地面に突立つ。


二人の異変を、視界が遮られた桜花吹雪の中で感じ取ったクロナは、一か八か、地面を蹴って桜花吹雪の領域から脱出しようと試みた。


「そうすると思ってたわ」


クロナの行動を完全に読んでいた香久山桜は、桜花吹雪からクロナが飛び出して来たタイミングに合わせて、着物の袖から暗器を放った。


ナイフが三本、クロナに迫る。


「くっ!?」


クロナは素早く刀を振って、二本をたたき落とした。


一本が、クロナの右胸に刺さる。


「くっそ!!」


一瞬で力が抜け、地面に墜落した。


桐谷から薙刀を抜いた香久山桜は、残るクロナを仕留めに掛かる。


「戦いは全て【頭脳戦】よ。フィールドを観察して、勝利への糸口・・・、敵の綻びを見つけるのよ・・・」


「っ!!」


クロナは歯を食いしばって立ち上がろうとしたが、疲労が足に蓄積していて上手く身体を支えられなかった。


「そして、私は見つけた。あなたたち三人の陣形を一気に壊滅させて、三人をまとめて討ち取る方法を・・・!!!」


明鳥黒破斬も、展開が間に合わない。


(殺られる!!)


「とった!!」


香久山桜は、クロナの右肩へ向かって、薙刀【ソメイヨシノ】を振り下ろした。


薄紅の刃が、クロナの肩に食いこもうとした次の瞬間、香久山の背筋に冷たいものが走った。


「っ!?」


本能が「まずい」と叫ぶ。


香久山桜は、刃をギリギリのところで静止させると、直ぐに地面を蹴って後退した。


安全地帯に着地した香久山桜は、速まった動悸を抑えながら、胸から血を流すクロナを見る。










そして、驚愕した。










「あなた・・・、それは、何?」


「え?」


クロナはキョトンとした。


クロナ自身、理解していなかったのだ。


どうして、自分を倒せる位置にいた香久山が、自分への止めを中断して後退したのか。


香久山を見るクロナの視界に、ぱらり、と、黒い羽根が落ちてきた。


「・・・、これは?」


拾い上げる。


黒い羽は、クロナの手のひらの中で塵となって消えた。


そこでやっと、クロナは上を見上げた。


「え?」










クロナの背中に、彼女の身の丈以上の大きさを誇る、【黒い翼】が生えていた。











第84話に続く



第84話に続く

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