黒羽 その②
生かしてほしいのは翼
殺してほしいのは嘴
天翔る八咫烏に祈るは
この道程が平穏でありますように
2
クロナは、息を整えながら、バックステップを踏んで後退した。
刀を下段に構え、再び香久山桜に向かっていく。
(薙刀の弱点? 刀の有利点? そんなの100も承知!!)
戦闘スタイルは、人それぞれだ。
腕力があり、一撃を好む者はできるだけ重量級の武器を使用する。
クロナのように俊敏さが取り柄ならば、日本刀を握って数で勝負を仕掛ける。
それぞれの武器に、じゃんけんのような相性があろうと、それを補って戦ってこそ真のUMAハンター。
「居合!!!」
低い姿勢から、地面を這うようにして切り込み、香久山の懐に潜り込んだ。
そのまま、刀を切り上げる。
ギンッ!!!
「くっ!! 防がれた!!」
「甘いわ!!」
だが、手応えは悪くない。
クロナは畳み掛けた。
重心を極限まで傾け、香久山の懐に潜り込んだまま、連続で刀を振る。
香久山もまた、重心を後方に流し、クロナの高速の斬撃をいなしていく。
ギンッ!!!ギンッ!!!ギンッ!!!ギンッ!!!ギンッ!!!ギンッ!!!ギンッ!!!ギンッ!!!ギンッ!!!ギンッ!!!ギンッ!!!ギンッ!!!ギンッ!!!ギンッ!!!ギンッ!!!ギンッ!!!
激しい剣戟。
刃と刃がぶつかり合う度に、赤い閃光が弾けた。
ある程度叩き込んだところで、クロナはさらに、身体を前のめりにした。
クロナの頭がサッと下がる。
その瞬間、後方で備えていた真子が、矢を放った。
「名弓・【天照】!!」
矢は、放たれた瞬間に空気との摩擦で発火して、赤い炎を上げながら香久山に迫った。
「っ!?」
クロナが、重心を傾けて頭を下げたのは、この矢を躱して、香久山桜に当てるためだったのだ。
(どういうこと?)
香久山桜は、薙刀を振って矢を弾いた。
(この子達・・・、ちゃんと連携をしてくる!!)
予想外のことだった。
桜班。百合班。そして、薔薇班。
この三つの班が同盟を結ぶだけで奇妙かつありえない話だ。
だが、即席のチームで、百合を倒すことができるはずがない。
そう、高を括っていた。
それが、蓋を開けたらどうだ。
自分たちの役割を理解して、一瞬の目配せと単独にて見事な連携をしてくるでは無いか。
(まさか、これが初めてじゃない?)
香久山桜が矢を弾いた瞬間、彼女の懐ががら空きになった。
「もらった!!」
クロナは、ゴツゴツとした地面に手を着くと、腕力だけで身体を押し上げた。
蹴りを、香久山桜の腹にお見舞する。
「くっ!!」
もろに命中した。
桜は、口から糸を引いた唾液を吐き出す。
たまらず地面を蹴って、クロナの蹴りの勢いを受け流した。
(さすが剣士ね。足腰もしっかりと鍛えられている・・・!!!)
だが、香久山桜たち百合班も負けてはいられない。
「ごめんなさいね」
香久山桜は、腹にめり込んだクロナの足首を掴んだ。
「少し、揺れるわよ!!」
「うわっ!!」
凄まじい握力。
そして、クロナの身体を支える腕力。
その力で、香久山桜は、クロナを投げ飛ばした。
「くっ!!」
クロナは身を捩り体勢を整える。
投げ飛ばされたくらいでは、そこまでのダメージではない。
(着地したら、直ぐに切り返す!!)
ゴツンッッ!!!
クロナの背中に、固いものがぶつかった。
「えっ!?」
「何っ!?」
首だけで振り返ると、それは、狂華と戦っていた桐谷だった。
「おい、クロナ!! てめぇ、何やってんだ!!」
「それはこっちのセリフよ!!」
空中で激突した二人は、バランスを崩し、地面に墜落した。
受身をとれず、腹部に大ダメージを受ける。
「くっ!」
(まさか・・・、意図してぶつけてきたの?)
クロナの足を掴んだ香久山桜は、明後日の方向にクロナを投げた訳では無い。
あの一瞬で、狂華と合図をし合い、お互いに相手にしている敵を、同じ場所に向かって吹き飛ばしたのだ。
「もらった!!」
起き上がることが出来ない二人に、狂華と香久山桜が迫る。
すぐ様、真子が矢を射った。
「クロナ姐さん!!」
香久山桜と、クロナの横を、炎を纏った矢が通り過ぎる。
桜は、思わず動きを止めてしまった。
その隙に立ち上がったクロナは、桐谷のタキシードの襟を掴んで引き寄せる。
「ほら!! ぼさっとしないの!!」
「あの狙撃女!! クロナだけを助けやがった!!」
何とか立ち上がった二人は、再び狂華と香久山桜に向かっていく。
(厄介なのは、あの子のようね・・・)
香久山は、クロナの斬撃をいなしながら、横目で真子を見た。
先程、クロナを援護したあの狙撃技術。かなり洗練されたものだ。
あの場面、多くの狙撃手は、味方に当てまいと躊躇をしてしまう。
それなのに、迷うことなく放った矢。レーザービームのごとき正確な軌道。
(先に倒すべきは、あの狙撃手かしら・・・)
その③に続く
その③に続く




