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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
279/530

百合の逆襲 その②

瑞々しくも皺深く


皮の奥の骨は砕け


落雁のように散ったとしても


棺桶に求めるのは


百合の花

2


突如、頭よりも高い岩の上から飛んできたナイフ。


間髪で防いだクロナが、真子、桐谷と共に視線を上げると、そこには二人分の人影があった。


逆光でよく見えない。


しかし、メリハリのある身体や、風にたなびく長髪。そして、揺れる袖のシルエットから、その者の「班」を特定することは容易だった。


「外しました・・・」


「それでいいのよ。ありがとう」


襲撃者は、岩から飛び降り、クロナ達三人の前に立ち塞がった。


赤を基調として、絢爛な黄金の刺繍を施した着物を身に纏う、二人の花魁。


辺りの孤高な殺風景は、その輝きには不釣り合いで、より一層彼女達の美しさを際立たせた。









百合班・・・班長【香久山桜】


百合班・・・副班長【狂華】










この二人が、クロナ、真子、桐谷の道を阻んだのだ。


「くそっ!! よりによって、百合に捕まっちまったよ!!」


桐谷が舌打ちをして、腰に差した【甲突剣】を抜いた。


状況を理解出来ていない真子は、弓を構えないでほうけている。


「あれが百合班っスか? 綺麗っすね」


「馬鹿野郎。あいつら、オレたちを襲って、ポイントを奪うつもりだぜ!!」


「え、まじっすか?」


緊迫した状況でも、締りが無い。


クロナは、立ち塞がった二人の動きに警戒しながら、腰の刀に手をかけた。


(この二人・・・、やっぱり私たちを襲いに?)


殺気立つクロナを見て、背の高い方・・・、つまり、班長の香久山桜は「ごめんね」と言った。


「本当はこんなことしたくないよの。特に、可愛らしいあなたを傷つけるなんて・・・」


「え・・・」


クロナの頬が少し赤くなる。


女の人に、「可愛らしい」なんて言われたのは初めてだ。それに、雅な雰囲気を放つ、香久山桜から言われたら尚更。


嬉しくも、気恥しい。


香久山桜は、続けた。


「だけど・・・、UMAハンター達は、UMAよりもポイントが高い人間に味を締め始めている。そして、UMAハンター同士で戦いが起こっている。どの班も、かなりの高得点を稼いでいるのよ・・・」


「はい・・・」


実際クロナも、先程に藤班の人間を一名戦闘不能にしていた。


香久山桜は、心底申し訳なさそうに、クロナに頭を下げた。


「例え、これが私有地で行われる模擬戦だとしても・・・、私たち百合班は勝たなければならない。そのためには、たくさんのポイントを稼ぐことが必須・・・」


右手に握っていた、薄紅の刃を持つ薙刀を、クロナに向けた。


「お手合わせ・・・、お願いしたいのだけど・・・」


「っ!!」


クロナは、奥歯を噛み締めた。


やはり、この人もポイント狙い。


「もちろん、嫌なら引くわ。また別のUMAハンターを探す・・・」


そこまで言った時、香久山桜の表情がぴくりと動いた。


「ああ、あなた・・・、【桜班】の人ね・・・」


「はい」


「ごめんなさいね。あなたの副班長を倒したのは、私なのよ・・・」


「え・・・」


クロナの体の中の血液が、一瞬にして凍りついた。


動悸が速くなり、刀を握る手が震えた。


(この人が、カレンさんをっ!?)










次の瞬間、クロナの隣から桐谷が飛び出した。


「先手必勝っ!!」


クロナと香久山が話に夢中になっている一瞬の隙を突いて、百合班の陣に斬りこんでいく。


針のような剣、【甲突剣】を中段に構え、目にも止まらぬ速さで突いた。











ギンッ!!!











鋒が香久山の腹を貫く直前で、横の狂華が動き、攻撃をいなした。


二人は、一度地面を蹴って後退する。


「攻撃してきたってことは・・・、『了承』ってことでいいのよね?」


「おうよ!!」


クロナの代わりに桐谷が答えた。


「こっちだって優勝を狙ってんだ!! 人間が10ポイントなら尚更!!」


左手を腰に回し、甲突剣の鋒を揺らしながら臨戦態勢を整える。


「だったら!! さっさと終わらせてやるさ!!」


一人で斬りこんで行く桐谷を見て、クロナは、舌打ちをした。


「あのバカ!!」


相手は【班長】と【副班長】だぞ。


いくら、三席と四席が寄り集まったって勝てる相手ではない。


それに、あの香久山桜という女は、城之内カレンを倒したと聞く。


(馬鹿がやられるのは勝手だけど、私たちまで巻き込まれたら困るわ!)


クロナは、着物の懐からプラスチックの球体を取り出した。


(ここは、引く!!)


それを、香久山桜と桐谷の間の地面に叩きつけた。


表面のプラスチックが割れた瞬間、白い噴煙が立ち込め、辺りの視界を奪う。


「なっ!?」


「桐谷!! ここは、逃げるわよ!!」


「なんでだよ!!」


「あんたには勝てないのよ!!」


クロナは白い煙が押し寄せる前に踵を返すと、背後に控えていた真子の手を取った。


「早く逃げるよ!! 桐谷も早く来なさい!!」


「くっそ!!」


桐谷は、甲突剣を引っ込めると、クロナの声の方へと走り出した。










白い煙の中、狂華は香久山桜に尋ねた。


「あの、いいんですか?」


「うーん。どうしましょう・・・」


香久山は大袈裟に首を傾げた。


「ポイントは、惜しいんだけどね・・・」


「じゃあ、追いますか?」


「そうね・・・、私の名刀【ソメイヨシノ】の能力があれば・・・、あの子たちは逃げられない・・・」












その③に続く





その③に続く

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