第81話【百合の逆襲】 その①
神経衰弱めくる手は
少し震え
揃ったキングに
百合の花を添える
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場面は移り変わる。
響也と、西原の激闘が決着した、ほぼ同時刻のことだ。
桜班・三席【雨宮クロナ】。
椿班・四席【矢島真子】。
薔薇班・三席【桐谷】。
この三人により結成された、桜・椿・薔薇連合は、次々と現れる獲物をバッタバッタとなぎ倒しながら、険しい山岳地帯を駆け抜けていた。
森を抜けて、かなり走った。
いつの間にか、辺りを取り囲むようにして立ち並んでいた木々は消え失せ、代わりに、ゴツゴツとした地面が広がる。
岩に食いついた苔は、若干湿り、踏むと滑りそうになる。
桐谷が言った。
「おい!! いつになったら市原架陰と合流できるんだよ!!」
「知らないわよ」
クロナは、襲ってきたローペンの首を、走りながら切り落とした。
「トランシーバーのGPSも機能していないし・・・、さっきから一人のUMAハンターともすれ違わないし・・・」
「くそ!! どこだよ!! 市原架陰はよ!!」
桐谷は、先程からずっとこの調子だ。
架陰と同じ班である、雨宮クロナについて行けば、市原架陰と合流できる。と、思ったのか、クロナに協力を持ちかけてきた。
無駄な交戦は避けたいクロナは、当然これを飲んだが、クロナだって市原架陰の居場所は分からない。
桐谷の戦闘能力は、UMAを倒すのに便利なだけで、あとはうるさいだけだった。
クロナと桐谷の半歩後ろを走っていた、椿班・四席の矢島真子が、じれったい声を上げた。
「ああ!! もうっ!! これじゃ拉致があかないっスよ!!」
赤スーツを身に纏った真子は、背中に掛けていた弓を構えると、矢を弦に引っ掛けた。
「こうなったら!! 私の矢で狼煙を上げて、鉄平さんを呼び出しましょう!!」
「おい!! この馬鹿女!!」
桐谷が慌てて、真子のお団子頭を殴った。
「てめぇ、そんなことしてみろ! 他のUMAハンターとかが寄ってくるだろうが」
「じゃあどうしろって言うんっスか!!」
「大人しくしてろってんだ!!」
さっきからずっとこの調子だ。
クロナは、架陰と合流したい。
真子は、架陰にくっついてくる鉄平と合流したい。
桐谷は、架陰と合流したい。
三人は、結束して走っているが、成果は得られなかった。
(どいつもこいつも、うるさいのよね)
クロナは、傍らで口喧嘩をする真子と桐谷を冷ややかな目で見た。
その時、クロナの着物の袖に入れていたトランシーバーが音を立てた。
ほぼ同時に、桐谷のタキシードの内ポケットに入れたトランシーバーが音を立てる。
「んっ!?」
クロナと桐谷は、トランシーバーを取り出して、受信した内容を確認した。
二人の顔から、サッと血の気が引くのは、ほぼ同時に起こった。
「嘘でしょっ!?」
「おいおい!! 嘘だろ!?」
トランシーバーに表示されていたメッセージ。
鈴白響也・・・脱落。
西原・・・脱落。
見間違いかと思った。
しかし、見間違いでは無い。
トランシーバーの液晶には、ドットの無機質な文字で「鈴白響也・・・脱落」と表示されていた。
「響也さんが・・・、負けた!?」
「くそ、なんで西原さんが負けるんだよ!?」
言ったあとで、クロナと桐谷は視線を合わせた。
「ねえ、薔薇班も、誰かやられたの?」
「ああ、四席がやられた。お前は?」
「班長がやられたわ・・・」
すると、真子も「はーい!」と手を上げた。
「椿班の、八坂さんもやられましたっス!!」
ハンターフェスが始まってから、三十分以上が経過した。
この、主催者の所有する広大なフィールドにばらまかれた八十人のUMAハンター達は、少しずつその数を減らしていく。
「残り・・・、何人なのかしら・・・?」
桜班は、既に、鈴白響也と城之内カレンの主力メンバーを失った。残りは、クロナと、どこにいるのか分からない架陰。
薔薇班も、齋藤と、西原を失った。
椿班は、八坂を失った。残りの、鉄平と、山田がどこで何をしているのか分からない。
(全滅する前に、早くみんなと合流しないと・・・!!)
三人は、それぞれの思惑の中、石が転がり、安定しない足場を駆けた。
その時だ。
「っ!?」
殺気を感じ取ったクロナが顔を上げると、一本のナイフが飛んできた。
ギンッ!!!
何とか、名刀黒鴉の刃で弾く。
「あんた達!! 止まりなさい!!!」
突然の攻撃に、クロナ、桐谷、真子は身構えた。
頭上を見ると、立ちはだかる巨大な岩の上に、二人の人影が見えた。
「あれはっ!?」
「UMAハンターだ!!」
その②に続く
その②に続く




