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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
268/530

西原外伝 その⑧

別れる時が来るから


私は手を繋ぐ


出会う時かあるから


私は目を逸らす


温もりの中に求めるのは


それが永遠でありますようにと

8


降りしきる雨に濡れながら、霧に曇る路地を歩く雨宮黒真様を見つけた時、私は迷わずリムジンを路肩に寄せた。


ブレーキを掛けた時の振動で、花蓮様と紅愛様が目を覚ました。


「西原・・・、どうしたの?」


「すみません。少し、車の中でお待ちください・・・」


私は双子に一言言って、運転席から降りると、小走りで、トランクに回り込んだ。


開けると、齋藤が用意してくれた雨傘が、工具と共に入っている。


私はそれを掴み、灰色の空に向かって広げた。


大粒の雫が、張り詰めたナイロンの上で弾け、ボツボツと一定のリズムを奏でた。


私はその音に、踊る心を抑えながら、路地の先を歩く黒真様の方へと向かった。


話しかけようとした時、私は、黒真様の横にもう一人いることに気がついた。車道からでは、黒真様の肩が影となって気が付かなかった。


高校のブレザー。膝までのスカート。雨にぐっしょりと濡れて、裾から水が滴っている。いつか、文献で呼んだ王獣を思わせる上品な銀髪。


アクア様だった。


私は内心「しまった」と思った。


雨に濡れる二人。対して、傘は一本しかない。


だが、何もしないよりかはマシだった。


「もし・・・、そこのお二人・・・」


思い切って、二人の背中に話しかける。


黒真様と、アクア様は、ピタリと立ち止まり、振り返った。


突然背後に現れたタキシードの男に、怪訝な顔をする。


私はすかさず「この傘をお使いください」と、差していた傘を差し出した。


当然、遠慮される。


「いや、いいですよ。もう濡れてますし・・・」


「いえいえ、風邪を引くのも良くない。どうぞ、お受け取りください・・・」


私が頑なに傘を差し出すと、二人は目を合わせてから、それを受け取った。


「ありがとうございます」


「はい、返却は不要ですので」


私はそれだけ言うと、踵を返して、リムジンに向かって走り出した。


雨は勢いを強め、ザアザアとアスファルトの上で跳ねる。


一瞬傘から外れただけで、私のタキシードには重く冷たい水が染み込んできた。


思わず水たまりを踏んでしまい、靴の中に水が染みる。


慌てて、リムジンの扉を開けた。


「西原おそーい!!」


「おそいよー、西原ー!」


二人の声に出迎えられ、私は運転席に座る。


「申し訳ありません。直ぐに帰りましょうね」


サイドブレーキを下ろして、アクセルを踏む。


リムジンは、ゆっくりと路地を進み始めた。


ザアザアと、雨粒がリムジンの屋根を叩く。ボディの撥水性能が切れかかっているのか、水滴は弾かれることなく流れた。


「花蓮様、紅愛様、今度、ご一緒に洗車はいかがですか?」


私がそう言って提案すると、二人は声を上げてよろこんだ。


「「やった!! 洗車だ!! 水で遊べる!」」


二人にとって、このリムジンの洗車は、水遊びと一緒なのだ。はっきりと言わせてもらえれば、私一人でした方が効率がいい。


しかし、泡を掬い、水を掛け合ってはしゃぐ二人の様子は、どうしても微笑ましいものなのだ。


「では、晴れた日の休日に、一緒に洗いましょう」


「「はーい!!」」


双子は声を揃えた。


私はミラーで、二人の可愛らしい様子を見た。


それと同時に、この双子の母親である蓮花様の言葉を思い出す。









「私の子供を、護ってね」










大丈夫です。


まるで、いなくなってしまったあの人に語りかけるように、ひたすらに「大丈夫です」の言葉を反芻した。


大丈夫です。


貴方様の子供は、私が命にかえてお守りします。


今までそうしてきました。


そして、これからも守っていきます。











たとえ、花蓮様と紅愛様の、どちらか一人が、捨てられることになっても。












その⑨に続く

その⑨に続く

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