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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
267/530

西原外伝 その⑦

曇天に価値など無いのに


雨粒に美しさなど無いのに


私は雨粒に濡れながら


曇天を見上げている

7


携帯のワンセグテレビを見ていると、天気予報士が、「傘が欠かせない一日になるでしょう」と言っていた。


私は、城之内家の豪邸の庭に停めていたリムジンのトランクを開けて、傘を確認する。


無かった。


ちょうどその時、傍を齋藤が通りかかった。


私は好機。と思い、齋藤を呼び止めた。


「齋藤」


齋藤は、肩をビクつかせて振り向く。


「西原さん、どうしたんですか?」


「すまないが、屋敷から、傘を取ってきてくれないか?」


「ああ、分かりました。確か、昼頃から雨が降りますからね・・・」


齋藤は私に一礼すると、屋敷の門の方へと走り出した。


私は、「屋敷の中は走るな」という言葉を飲み込む。頼み事をしたのは私なのだ。それに、上司からの命令なら、急いでこなそうとするのも当然。


齋藤は、この家にやってきてから随分と経つのに、まだ、UMAハントに出撃することを許されていない。


まだ、御館様に「早い」と言われているのだ。


お嬢様達がUMAハントに駆り出し、功績を上げて帰っているのだから、齋藤にだってそのくらいの仕事は与えてもいいとは思う。


私は、お嬢様達に付きっきりなので、齋藤にも構ってやれない。齋藤も、多分お嬢様の顔を知らないのだろう。別に隠しているつもりは無い。だが、それだけ、お嬢様は私以外の誰かと触れ合う機会を与えられなかったのだ。











時間が来たので、私は屋敷の部屋に、お嬢様を呼びにいった。


「花蓮様、紅愛様、出かけますよ」


扉を開けると、既に着替えていた二人が、「やったあ!」と、歓喜の声を上げて飛び出してきた。


ネズミのようにチョロチョロと廊下を走り始めるので、私は素早く、二人の首根っこを掴んだ。


「お二人!! 廊下は走りません!!」


私が一括すると、双子は声を合わせた。








「「はーい!!」」










怒られて、謝る時まで、声が揃う。


本当に見ていて微笑ましい。


「花蓮様、紅愛様、わかっていますね? 今日のお出かけの意味を」


「「わかってるよー!! UMAを倒すんでしょ?」」


「倒しません。行きますよ」


私は花蓮様を右脇に、紅愛様を左脇に抱えた。


そして、車庫のリムジンへと歩き出す。


途中、床をはいていたメイドに挨拶をされた。


「いいですか? 今日は、UMAの捕獲です。新種のUMAは特に研究対象になりますからね。いかに傷をつけないように戦闘不能にする方法を教えますから、覚悟してください」


「「はーい!! 覚悟覚悟!!」」


双子は、声を揃えた。


本当に、やる気の欠片も見当たらない声だったが、これでも、結構、私の期待した通りのことをしてくれる。


天才形なのか、それとも、はしゃいでいる方が身体の力が抜けて、実力を発揮できるのか、まだ私には分からない。










二人を、リムジンの後部座席に座らせ、シートベルトを装着させると、私は運転席に乗り込んだ。


「じゃあ、行きますよ?」


「「はーい!! 出発進行!!」」


まるでピクニックだな。


私は「集中してください」と窘めたが、口は笑っていた。


リムジンのエンジンを掛けて、サイドブレーキを引く。そして、アクセルを踏んだ。


今日行く場所は、郊外の山。


あそこには、昔より多くのUMAが目撃されている。江戸時代から続く、城之内家の未確認生物討伐隊も、実践練習では、あの山を利用することが多かった。


それに、最近はあそこには踏み入れることはなかった。きっと、UMAも大量に湧いているはずだ。


もしも、未知のUMAに遭遇した時は、私が身を呈して護る。まあ、この二人は、私がいなくても十分強いのだが。


















山での実践練習は、まずまずの結果に終わった。


昼頃から雨が降り始めたことで、UMAがあまり出現しなかったこともある。地面がぬかるみ、お嬢様たちの動きが鈍ったこともある。


だが、手こずりながらも、ローペンの捕獲には成功した。


思ったほどではなかったが、十分な収穫と言っても良かった。


私は、リムジンの傍に着替え用のテントを張り、中で、お嬢様の着替えを手伝った。戦闘服は雨でびしょ濡れだったし、風邪を引かれても困る。


代えの服に着替えた花蓮様と、紅愛様は、「シャワー浴びたーい!!」と言いながら、リムジンに戻った。


私も、サッとタキシードに着替え直し、リムジンの座席に座る。


「じゃあ、帰りますよ」


「「はーい!!」」


黒塗りのリムジンは、山を降りて、住宅街に出た。


窓の外は、ひっきりなしに雨が降っていて、ワイパーが絶えず右に左にと、水滴を拭う。


お嬢様達は、疲れてすやすやと眠っていた。


帰ったら、ココアでも入れてあげよう。


そう思いながら、前を向き直った。










その時、私は、路地を歩くとある人影を見ていた。


「あれは・・・」


見覚えがある後ろ姿。左手に握る、刀ケース。ずぶ濡れになった学ラン。


以前、「UMAハンター講習会」で、アクア様と一緒にいた人だ。


名前は確か・・・。









「雨宮黒真様・・・」









その⑧に続く

その⑧に続く

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