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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
262/530

西原外伝 その②

砂塵の岩に根を張って


朝露を舐める


悪鬼の種とはこの事か

2


あれは、私が城之内家に仕え始めて、二年が経った日のことだった。


とても、喉かな昼下がり。庭に植えられた桜の花びらは既に春風とともに空に吸い込まれて、葉桜となり、次の春へ息を潜めていた。


私は、夏に備え、業者に注文して、つい最近届いた向日葵の種を、一つ一つ、庭の畑に植えていた。


「西原さん!!」


背後で、幼い声がしたので、振り返る。


つい最近、執事見習いとしてやってきた齋藤が立っていた。


「どうしました? 齋藤・・・」


「あの、御館様が、呼んでいます・・・」


その時、私は胸の中に嫌な予感を感じ取った。


城之内家の当主、私たちが御館様と呼んでいるその方は、とにかく、威厳のある人だった。


さすが、何百年と続く名家の人間。ということだろう。


花を好み、茶道を好み、将棋を好む。という、和を突き進む性格ながら、執事や、身内にはかなり厳しく当たる。もちろん、八つ当たりなどではなく、態度が悪かったり、失敗などをすると、厳しく叱りつけるのだ。


「それでも、我が城之内家の人間か!!」


と。


私も、最初の頃はよく怒られた。庭の手入れがなっていなかったり、戦闘訓練で怪我などをした時に、厳しく怒鳴りつけられた。


しかし、ここ最近はそういうことも無くなっていた。というか、以前廊下でばったりと会った時に「お前に言うことは何も無い。お前は、立派な執事になったよ」と認められたのだ。


それなのに、御館様、直々に呼び出しがあった?


私は向日葵の種植えを齋藤に任せると、直ぐに屋敷の御館様の部屋に向かった。


きっと、何か御館様の気に食わないことをしてしまった。


少し、焦っていた。










御館様の部屋に着くと、私は、重厚な扉を静かにノックした。


「御館様・・・、西原でございます」


そういうと、直ぐに、中から、「入れ」という声が返ってきた。


私は「失礼します」と一礼してから、扉を開けた。


開けて直ぐに、窓際に置かれた特注の椅子に、御館様は腰を深く掛けて待ち構えていた。


膝の上には、拾ってきた野良猫が乗っていて、大きな欠伸をした。


私は御館様に頭を垂れた。


「私に御用とは、なんでしょうか・・・」


ビクビクしながら聞くと、御館様は、随分と柔らかな口調で言った。


「そう固くなるな。今日はそんな気難しい話ではない・・・」


そう言われた時、私は拍子抜けして、顔をあげた。


「では、どのようなご要件で?」


「実はだな・・・、蓮花のことでな・・・」


「奥様のことですか・・・」










城之内蓮花様。


それが、御館様の奥様に当たる人だった。


私も詳しくは知らないのだが、御館様の代で、親戚一同に「女性」が生まれなかったらしい。


そのため、蓮花様は、城之内家の血筋ではない人間。


つまり、城之内家の跡を途絶えさせないために、数年前に嫁がせた女性らしい。


私は、その話を風の噂で聞くまで、彼女が「他所の人間」ということを考えもしなかった。


それだけ、蓮花様には、「高貴な雰囲気」があったのだ。


何をやらせても、流麗にこなしてしまう。


華道も、その手の道の者に引けを取らない。


もちろん、剣道も、茶道も。


嫁ぐ特に、姑のような方に教えこまれたのかもしれない。いずれにせよ、蓮花様は、城之内家を支える母に相応しい存在だった。









御館様は、言いにくそうに口髭を撫でてから、絞り出した。


「実は、蓮花が、妊娠した・・・」


「蓮花様が・・・」


私は直ぐに頭を下げた。


湧き上がってくる感慨と共に、「おめでとうございます!!」と言う。


御館様は、素っ気なく「ありがとう」と言うと、本題に入った。


「それでな、生まれてきた私の子は、時期跡取りとなるわけだ」


「はい」


「つまり、【UMAハンター】になるわけだな」


「御館様がそのように考えるのであれば・・・」


「ああ、私は、産まれてくる子供を、【UMAハンター】にしたい。貿易や製菓なんて、世間体を保つために小遣い稼ぎに過ぎんからな・・・、私たち城之内家の人間は、未確認生物を倒してこそ、成り立つものがあるな・・・」


「それで・・・、何を・・・」


私が改めて聞くと、御館様は「ああ」と頷いた。


口髭を撫でながら、言った。


「お前に、子供たちの教育を頼みたい・・・」


「教育?」


「ああ、私も四十を過ぎて、身体にガタが来はじめている。だから、UMAハンターとしての戦闘訓練などには、限界・・・、というか、肉体的に疲弊してきてな・・・」


「ああ、左様でございますか・・・」


確かに御館様は、年寄る波には勝てず、戦線から遠のいていたというイメージがあった。


「お願いできるか? 西原・・・?」


「分かりました」


私は、御館様の頼みならばと、深深と頭を垂れた。









「私が、御館様のご子息を、立派なUMAハンターに育て上げて見せます・・・」










その③に続く

その③に続く

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