番外編【西原 外伝】 その①
もしもこの雨が止まないで
朝方に立ち込める霧となったとして
私は光の中に身を隠し
貴方を永遠に愛しくことができるだろうか
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執事と言う仕事は、神経をすり減らす仕事だ。
以前仕えていた家の当主様は、かなり気が荒く、酒好き女好き。口を開けば屁理屈ばかり。金も持っているために、反論する者がいれば、容赦なく社会復帰出来なくする。
という、人に嫌われる要素をこれでもかと、持ち合わせている人だった。
当時一緒に働いていた、女性方には、傍から見ていて、とにかく哀れだったと思う。
当主様は、「弱き人間を攻撃する」という、特殊、いや、力を持つ者特有の性癖を持ち合わせていた。
そのために、当主様に目をつけられたメイドたちは、夜になれば部屋に引き込まれ、陵辱の限りを尽くされる。
いつも、休憩室で泣いている女性方を、私はみていた。
逆に、私は男。ということもあり、当主様には目をかけられることはなかった。
ある日、当主様の、とある悪行が世間に明るみに出てしまった。
あとのことは想像通り。
当主様は警察に逮捕され、何百年と続いた名家は、一晩で、まるで砂粒のように崩れ去ってしまった。
これに困ったのは、従者たちだった。
働く場所が無くなったのだ。当然の事ながら、次の仕事場の探索は絶望的であった。
私は、一年ほど家々を転々として、とある家にて、正式に執事として採用された。
それが、【城之内家】だったのだ。
城之内家は、貿易や製菓などで、規模を広げていった、知る人ぞ知る名家。
建物は、前に仕えていた家の三倍はあった。
庭には、奥様が育てた野菜や花が咲き乱れ、青々しい、澄んだ空気に満ちていた。
だが、城之内家には、世間一般には知られてはならない、【裏】があった。
別に、当主が女癖が悪い。などの、世間体の悪い話ではない。
【未確認生物】と言えば分かるだろう。
城之内家は、古くから、正確には、江戸時代から未確認生物を退治する。という生業をしていたのだ。
戦闘員は、主に、城之内家に忠誠を誓った執事。および、時期当主。
私は、採用されてから直ぐに、戦術の基礎を叩き込まれた。
生命の命を奪うためには、どこを攻撃すればいいのか。的確に急所をつくための攻撃方法。
王宮剣術を軸とした戦闘スタイルを、これでもかと、教えられた。
私には、才能があった。
その証拠に、訓練を初めて一年で、師匠から一本をとる事ができるようになり、能力【結界】に目覚めた。
敵の攻撃を遮断する【結界】の能力は、当主を護る。という任務を与えられた執事にとって、ピッタリの力だった。
二年で、私は執事としての重役を務めるようになった。
UMAとの実戦で、次々と成果を上げて、UMAハンターとしても、実力を伸ばしていった。
全て、順風満帆だったのだ。
そして、その幸せな一時は、奥様の妊娠によって、崩れ去ることになる。
その②に続く
その②に続く




